「33ポイントのリードを築けたことは十分にわかっているけど、僕はそこに気持ちを集中しているわけじゃない。1戦1戦、目の前のレースを戦っていくだけだ。この週末もこのレースに勝つことだけを考えて上手くいったんだから、アプローチを変えるつもりはない」
まったく綻びのない完璧な週末、危なげのないレースで完勝を飾ったニコ・ロズベルグは、チームのコンストラクターズタイトルを祝福しながら、自分にはまだ長い戦いが残っていると言った。残り4戦と計算せず「先は長い」と捉えているところに、彼が自分で見出した、自分に合ったタイトルへのアプローチが表れている気がした。
「金曜日にグリーンランプが灯った瞬間から」と表現するほど、最初からすべてが順調な週末。ひとつひとつプログラムを消化しながら、コーナーが連続するコースのリズムを体内に取り入れていった。セットアップも微調整程度。すべてのセッションでルイス・ハミルトンに先行し、ポールポジションからスタートを決め、チェッカーフラッグまでレースの主導権を握り続けた。
夏休み以降は5戦中4勝。伝統のスパ、モンツァ、低速市街地のシンガポール、そして伝説のドライバーズサーキット鈴鹿へと、難コースを“初制覇”して自信を深めていく。トラブルが起こらないかぎり、ロズベルグの敗北を想像するのは難しい――鈴鹿は、そんな週末だった。ロズベルグは、そんなドライバーに成長した。
スタートで大きく順位を落としたルイス・ハミルトン
LAT
3年連続でポールポジションはロズベルグ。ルイス・ハミルトンのスタートの失敗は、おそらく、そんな態勢を逆転しようと急いだ気持ちと無関係ではない。
メルセデスのスタートにトリッキーな一面があることはトト・ウォルフも認めている。今回もクラッチに問題があったのかもしれない。ただ、スタートの不安定さがロズベルグにとって予選のプレッシャーを軽減する(=予選の勝敗だけでレースは決まらない)方向で働いているのに対して、ハミルトンにとっては疑心暗鬼の素、あるいは一発逆転のチャンスを“狙いすぎる”傾向を生んでいる。それが、マシンのスタート以上にハミルトンのスタートを不安定にしているのだ。
8番手までポジションを落としたハミルトンは、そこから挽回するレースを戦うことになった。ソフトを履いた第1スティントこそバルテリ・ボッタスやニコ・ヒュルケンベルグに阻まれてペースが上がらなかったが、ハードに履き替えた第2スティント以降マシンは「ずっと快適」になり、バックストレッチでダニエル・リカルドをかわし、3番手を行くセバスチャン・ベッテルとの間隔も詰めていった。