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【F1チーム別技術レビュー:レッドブルRB19】22戦中21勝の優位性をもたらしたふたつの要因

2024年2月2日

 2023年F1各マシンのシーズン通しての変化を、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルがまとめた。今回は、レッドブルRB19の強さの理由について解説する。


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 前年型RB18とほぼ同じコンセプトに基づいて開発されたレッドブルRB19のおかげで、マックス・フェルスタッペンは簡単に3度目の世界王座を獲得。チーム全体でも22戦中21勝、ポールポジション14回、表彰台30回という驚異的な成績を挙げた。この圧倒的な優位性は、はたしてどこから得られたのだろう?


 本質的には、ふたつの要因による。まず第一に、RB19は前モデルよりもはるかに軽量だった。

レッドブルRB19


「RB19の多くの部品はRB18から来ている」と、クリスチャン・ホーナー代表は言う。「ギヤボックス、サスペンションの大部分、そして車体のほぼ半分。その意味でRB18とのハイブリッドカーと言っていい」


「そして我々が最大の課題と考えたのが、重量だった。2021年は最終戦までタイトル争いに集中していたため、グランドエフェクトの新しい技術規定への対応が非常に遅れてしまった。その皺寄せを最も受けたのが重量だった。RB18は結局、最低重量制限まで達したことは一度もなかったのだ。それがRB19では、20kgの軽量化と特定の欠陥の修正に成功した。2022年と2023年のクルマの根本的な違いはそこだった」

レッドブルRB19


 ふたつ目の要因は、優れたマシンコンセプトだ。2023年の初めにようやくコンセプトの誤りに気づいたメルセデスやフェラーリとは異なり、レッドブルはグランドエフェクト初年度の2022年からすでにその哲学を完成させ、進化を重ねてきた。


「新規約導入の際、変更点を注意深く読み解き、基本を間違えないようにした。そして翌2023年は、その方向性をさらに進めて行ったんだ」と、エイドリアン・ニューウェイは語る。


 こうしてRB19は、加減速、低速、高速でのコーナリングなどあらゆる姿勢で、安定して多くのダウンフォースを生成できる唯一のマシンとなった。挙動変化もピーキーではなく、作動ウインドウが広かった。さらにフェラーリとは対照的に、予選よりもレースでのパフォーマンスを重視し、重量軽減による挙動変化やタイヤ摩耗を考慮してF1を設計した。


 RB19の優れた領域を、具体的に見ていこう。


 ひとつ目は、フロア下部の非常に洗練されたデザインだ。RB18と同様、空力エンジニアたちは2本のベンチュリトンネル内で異なる高さと幅を試し、中央のキールに膨らみとエッジを備えたごつごつした形状を与えた。ライバルたちの単純なカヌー形とは、大きくかけ離れたものだった。

レッドブルRB19


 これらの複雑な形状は、異なる車高でも気流の流れが可能な限り一定になるように、トンネルの全長に沿ってトンネルの容積を慎重に制御することを目的としている。


 レッドブルの場合、トンネルの入り口の高さがかなり高い。なので理論的には、他のF1マシンに比べてトンネルで発生するダウンフォースは少なくなる。ただしトンネルの入口が高いことで、フロアが地面に接近したことで起きる気流の乱れに、はるかによく耐えることができる。


 さらにこの設計は、かなり柔軟なサスペンションセッティングを可能にした。そのおかげでライバルたちのガチガチに固めた足周りよりも、低速旋回と高速旋回の間でより良い妥協点が得られ、フロアからの気流の剥離を防ぐことができた。

レッドブルRB19


 こうしてレッドブルの方がトンネルが高いにもかかわらず、ソフトなサスペンションのおかげでより地面に向かって圧縮されるため、高速走行時にライバルたちと同じくらい地面まで車高が下がり、高速域での強大なダウンフォースを稼げたのだ。


 さらに言えばレッドブルが他の車両よりも低い車高で走行できるのは、フロントにアンチダイブシステム、リヤにアンチスクワットを備えたサスペンションのおかげだった。

レッドブルRB19 サスペンション


 ブレーキング時に車が自然にノーズダイブする傾向に抵抗するフロントサスを設計するため、ニューウェイはリヤアームよりも高い位置にフロントのアッパーウィッシュボーンを取り付けた。RB19での2つの取り付け点の間の角度は約45度で、これはかなり極端な数値である。対照的にメルセデスW14の角度は15度に過ぎない。


 一方リヤサスペンションは、加速時に車が起き上がりすぎないように設計されている。こちらはアッパーウィッシュボーンのリヤアームをフロントアームよりも高く(つまり、フロントサスペンションの逆に)取り付けたのだ。


 このようなシステムは、空力プラットフォームに安定性をもたらし、さまざまなダイブ角度、ロール角度、ピッチアップ角度での操作性を向上させた。

レッドブルRB19とRB18の比較


 レッドブルはRB19の開発を非常に早い段階で中止したにもかかわらず、最終的にコンストラクターズ選手権2位のメルセデスのほぼ2倍のポイントを獲得した。他チームの2024年マシンのほとんど全ては、RB19の設計思想から完全に離れることはできないはずだ。


「2024年はRB19に似たクルマがたくさん出てくると思う」と、ホーナー代表は予想する。


「今季の我々は、あれほどの並外れた成功を繰り返すことはできないことも覚悟しているよ。去年の成功は、我々が他チームよりも早く成長曲線を描けたからだった。しかし新車RB20の開発では、(チャンピオンチームであるゆえに)風洞時間を非常に経済的かつ選択的に使用する必要に迫られた。必然的にRB19の長所をさらに強化することに、集中することになった」


 とはいえレッドブルがこの優れたマシンコンセプトを2年かけて熟成させてきたのに対し、メルセデスとフェラーリは今季初めて実践する。その事実は、彼らにとってかなり重いのではないだろうか。



この記事は f1i.com 提供の情報をもとに作成しています



(翻訳・まとめ 柴田久仁夫)




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