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F1技術解説バーレーンGP編(2):クラッシュのグロージャン車はなぜ爆発的に炎上したのか

2020年12月4日

 2020年F1第15戦バーレーンGPでのクラッシュで、ロマン・グロージャンが大クラッシュを喫しながら奇跡的に生還したことは、素直に喜びたい。しかし大きな疑問も残る。なぜ最新の安全デバイスで守られていたはずのF1マシンがいとも簡単に真っ二つになり、爆発的に炎上してしまったのか。過去の炎上事故は、1970年代のニキ・ラウダ、90年代のゲルハルト・ベルガー、ヨス・フェルスタッペンと、遠い昔まで遡らないといけない。


 下の写真でははっきりわからないものの、「燃料タンク自体が損傷し、漏れた燃料が引火した」というのがギュンター・シュタイナー代表の見解だ。

2020年F1第15戦バーレーンGP決勝 大クラッシュ後のロマン・グロージャンのハースVF-20(燃料タンク)
2020年F1第15戦バーレーンGP決勝 大クラッシュ後のロマン・グロージャンのハースVF-20(燃料タンク)

 一方で別の関係者は、クラッシュの衝撃で給油口の蓋がちぎれ飛び、そこから溢れた燃料が引火したのではと推測する。実際に事故写真では、給油口は完全に口を開けたままの状態になっている。ちなみにバーレーンは燃費に厳しいコースで、スタート直後のハースはほぼ満タンの燃料を搭載していたはずだ。


 燃料タンク自体はケブラー繊維とゴムを編み込んだ818-Dと呼ばれる構造体で、鋼鉄の5倍の強度を持つといわれる。F1以外にもF2、スーパーフォーミュラ、ラリーでの使用が義務付けられている。シュタイナー代表が言うようなタンク自体の損傷の有無は、今後の調査を待つしかないだろう。

ケブラー繊維とゴムを編み込んだ818-Dが使用されているF1の燃料タンク
ケブラー繊維とゴムを編み込んだ818-Dが使用されているF1の燃料タンク

 F1のテクニカルディレクター、ロス・ブラウンは、燃料パイプ周辺の破損だと仮定している。「燃料タンク自体は非常に堅固な構造であり、むしろパイプ自体、あるいは接続部分の破損を疑った方がいいかもしれない」と彼は言う。


「もし100kgの燃料を積んでいたとして、それが全部燃えていたら、あの程度の火災では済まなかったはず」であり、燃料パイプの損傷による火災の方が可能性が高いのではと言うのだ。


 しかし盛大に上がっていた黒煙は、はたしてガソリンが燃えただけのものだったのか。モノコック下部に設置されたリチウムバッテリーの火災も、考慮すべきであろう。


 マシンが真っ二つにちぎれた原因については、『F1技術解説バーレーンGP編(1):グロージャンを救ったヘイロー。53Gの衝撃もコクピット内を守る』で述べたようにガードレールに激突した角度、そこにあった支柱によってマシンへの入力が急激に変わったことが推測される。一方でセバスチャン・ベッテルらは、ガードレールをマシンが貫通した現象自体に衝撃を受けていた。


 通常ガードレールは、マシンがコースアウトしないはずの位置に設置される。ぶつかる可能性の高い場所には、タイヤバリアやTecProなど、より衝撃吸収力の高いものを置くのが普通だ(それでも2008年バルセロナのヘイキ・コバライネンや、2015年ロシアのカルロス・サインツのような問題が出ることもあるのだが)。今回はコースアウトしないはずの場所で飛び出した、特殊なケースだった。


 ではもしグロージャンが事故直後に意識を失い、自力で脱出できずにいたらどうなっていただろう。炎の勢いは尋常なレベルではなく、駆けつけたマーシャルたちの消火器だけでは、すぐに消し止めることはできなかった。


 幸いにも意識を失わなかったグロージャンは炎に包まれたコクピット内で、まずハーネスを外し(ステアリングはすでに無くなっていたと、フランスのTV局LCIにコメントしている)、ヘッドレストを取り外し、コクピットからの脱出を試みた(二度失敗し、三度目にようやく脱出できたという)。そしてガードレールに足をかけたところを、医師たちが受け止めた。


 53Gに達したクラッシュの衝撃、燃え盛る炎の激しさ。それらを思えば、まさに奇跡の生還であった。

2020年F1第16戦サクヒール木曜 退院したロマン・グロージャン(ハース)が、アクシデントから救出してくれたFIAのメディカルドクターのイアン・ロバーツおよびメディカルカードライバーのアラン・ファン・デル・メルヴァと再会
2020年F1第16戦サクヒール木曜 退院したロマン・グロージャン(ハース)が、アクシデントから救出してくれたFIAのメディカルドクターのイアン・ロバーツおよびメディカルカードライバーのアラン・ファン・デル・メルヴァと再会



この記事は f1i.com 提供の情報をもとに作成しています



(翻訳・まとめ 柴田久仁夫)


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