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レッドブル・ホンダ分析:修復作業はわずか12分。一度はスタートを諦めたフェルスタッペンが見せた逆襲劇

2020年7月20日

 マックス・フェルスタッペンが、ダミーグリッドに着くためのレコノサンスラップ中にクラッシュし、フロントウイングを失っただけでなく、左フロントサスペンションにもダメージを負った姿を見たとき、ほとんどの人がフェルスタッペンのレースは終わったと思っただろう。


 なぜなら、クラッシュしたフェルスタッペン本人が、レースをスタートすることを諦めていたからだ。


「トラックロッドは完全に折れていた。あと、プッシュロッドにもダメージがあったと思う。それらは簡単には修復できるものじゃないから、もうダメだと諦めていた」

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
2020年F1第3戦ハンガリーGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)


 クリスチャン・ホーナー代表も「通常1時間はかかる作業を彼らは20分で完了した」とメカニックたちの仕事を讃えた。しかし、実際には20分も要していなかった。


 フェルスタッペンがクラッシュしたのが午後2時48分。


 フロントウイングを失ったフェルスタッペンが、左フロントサスペンションにダメージを負いながら、グリッド後方にたどり着いたのが1分後の午後2時49分。


 メカニックたちによってグリッド後方から押されて、7番グリッドに到着したのが午後2時53分。


 壊れた左フロントサスペンションを修理するためには、タイヤを外さなければならないが、そのタイヤを装着しなければならない時間も決まっている。しかも、それは昨年まではフォーメーションラップのスタート3分前までだったが、新型コロナウイルス感染による影響で、6月19日に様々な競技規則が改定されて今年から2分間早まり、フォーメーションラップのスタート5分前に変更されていた。


 フォーメーションラップスタート時刻は午後3時10分だから、レッドブルのメカニックが修理作業を終え、左フロントタイヤをマシンに装着し終えていなければならない時刻は、午後3時5分。午後2時53分にダミーグリッドに着いたフェルスタッペンの左フロントサスペンションをレッドブルのメカニックが修理するのに許された時間は、実際には12分間しかなかった。

2020年F1第3戦ハンガリーGP
2020年F1第3戦ハンガリーGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)の壊れたノーズ


 じつは、レッドブルのメカニックはこの日以外にも不可能とも思える修復作業をダミーグリッド上で成し遂げた経験がある。それは、2019年のイギリスGP。このときは、フェルスタッペンのリヤウイングの翼端板にクラックが入っていることが発見され、急きょ交換しなければならなくなった。


 そのとき、メカニックがガレージからスペアの翼端板を持って、フェルスタッペンのグリッドに到着したのは午後1時58分(フォーメーションラップスタートは午後2時10分)。今回のハンガリーGPよりも状況は厳しかったが、彼らは遂行した。


 7番手からスタートしたフェルスタッペンは、コース上で不可能を可能にした。予選で完敗していたメルセデスとレーシングポイントの1台ずつを1コーナーまでにかわし、1周目を3番手で通過。インターミディエイトタイヤからスリックタイヤに交換した1回目のピットストップと、ミディアムからハードへタイヤを交換した2回目のピットストップも絶妙の判断だった。


 これでレーシング・ポイントのもう1台もかわして2番手に浮上。レース終盤に地力で勝るバルテリ・ボッタス(メルセデス)からの激しい追い上げられるが、レコノサンスラップで犯したミスを繰り返すことなく、ボッタスを0.75秒抑えて、2位でフィニッシュ。


 厳しかった週末だったが、1週間前の第2戦シュタイアーマルクGPよりも1段高い表彰台を獲得して、開幕3連戦を締めくくった。


 メルセデスとの差はまだ大きいが、この日のスタート直前に見せたメカニックの頑張りが、ファクトリーでマシンを開発するエンジニアたちに刺激となったら、ハンガリーGPの2位は、勝利にも値する価値ある2位となるかもしれない。

2020年F1第3戦ハンガリーGP
2020年F1第3戦ハンガリーGP スタートでアウト側からポジションを上げたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
2020年F1第3戦ハンガリーGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

ルイス・ハミルトン(メルセデス)&マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
2020年F1第3戦ハンガリーGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)&マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)



(Masahiro Owari)




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