【特集:F1マシンの誕生】開発スケジューリング(2)シェイクダウン後すぐに始まる翌年のマシン開発
2018年2月2日
F1マシンの完成には、コンセプトの提案から冬のバルセロナテストで実車を走らせることにこぎ着けるまで、実に1年以上の歳月を必要とする。ルノーF1チームのテクニカル・ディレクター、ニック・チェスターへの独占インタビューを基に、F1マシン製作の全過程を「コンセプトを決める」「開発のスケジューリング」「F1マシンのデザインとは」「マシン製作」の4テーマにわたって紹介しよう。
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F1マシンの誕生
第2章「開発のスケジューリング」その2
シーズン開幕直前のウィンターテストで初めて新車を走らせる2月末には、エンジニアたちは早くも翌年のマシンに思いを巡らせる。
「新車開発の1回目のミーティングは、このテストの際に開かれることが多いね」と、ニック・チェスターは語る。
「つまり今年2018年のマシンで言えば、去年の2月に開発が始動していたわけだ。いくつかのエレメントは、もっと以前から検討する。パワーユニット周りが、まさにそれに当たる」
「パワーユニット周辺の形状は、マシン後部にすごく大きな影響を与える。なのでパワーユニットのパッケージングデザイナーに十分な時間を与えようと思ったら、2018年マシンだったらその2年前、2016年の10月辺りには議論を始める必要がある」
「そして現行マシンから翌年型の開発へと大きく舵を切るのは、だいたいその年の7月だ。2017年型マシン改良は一段落させ、2018年型マシンの開発に主な予算と人員、設備を振り分けていくんだ」
■F1新車開発スケジュール
2016年10月:2018年マシンの最初のアイデア出し、パワーユニットとの統合が行われる。
2017年2月:2018年マシンの第1回開発ミーティング
同年6月:開発予算、人員、設備の主力を、2018年開発プロジェクトに移行する
同年8月:ギヤボックス製作開始
同年9月:モノコック製作開始
同年10月:サスペンション、ウィング製作開始
同年12月:ボディワーク製作開始
2018年1月:クラッシュテスト
同年2月:シェイクダウン、最初の実走テスト
■マシン開発は、反復プロセスだ
F1の新車開発は、絶えざる反復プロセスといえる。開発期間中、エンジニアたちは何十回何百回と、コンセプトの微調整を繰り返すからである。
空力性能を数値解析するには、まずCFD(コンピューター流体解析システム)が用いられる。それに基づいてスケールモデルが製作され、風洞テストが行われる。CFDによる形状や容積の見直しは絶え間なく行われるため、このプロセスは何度も繰り返されることになる。
足回り関連のパーツに関しても、同様である。十分な剛性と耐久性が確保されるまで、CFDによる設計→モデル製作→風洞実験のプロセスが何度も反復される。
こうして車体の最終設計は通常、前年の夏の終わりには終了する。その際には主要コンポーネントの仕様も、ほぼ決定している。
こうしてデザインオフィスによる設計が終われば、そこでようやく各パーツの製作へと移行する。その前に第3章『F1マシンのデザイン』で、F1マシンがいかに設計されていくのか、その過程を詳しく見てみよう。
この記事は f1i.com 提供の情報をもとに作成しています
(Translation:Kunio Shibata)
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