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強力なチームメイト相手に戦う、ふたりの“フライング・フィン”【今宮純のザ・ショウダウン】

2017年5月19日

 F1ジャーナリストの今宮純氏が様々な要素を【対決】させていく新企画。第3回はふたりのフィンランド人ドライバーを分析する。メルセデスとフェラーリという二強に在籍する彼らがそれぞれのチームメイトに打ち勝ち、史上初のフィンランド人ワン・ツーフィニッシュを達成する日は来るのだろうか。


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「フライング・フィン」――天駆けるフィンランド人を象徴する意味だ。バルテリ・ボッタスがロシアGPで4年ぶりにフィンランド人通算47勝目(13年オーストラリアGP・キミ・ライコネン以来)。イタリアの43勝を超える国別・勝利数は第5位。GPが一度も開催されず、チームもエンジンメーカーもメジャースポンサーも無い、北の国から彼らは勝ち上がってきた。

ボッタスが初優勝を飾った2017年ロシアGP
ボッタスが初優勝を飾った2017年ロシアGP

 ライコネンの出身地は首都ヘルシンキに近いエスポー。フィンランド第2の都市で人口約23万人、以前取材で現地を訪れたときは真冬なのに賑やかな街並みに驚いた。雪と氷とトナカイのイメージはなかった。ボッタスは100km以上も離れた小さな町、人口1万5000人足らずのナストラ生まれ。行ったことはないが北欧の大自然に囲まれたところらしい。「都会派キミ」と「自然派バルテリ」……


 この国の少年たちはブラジルの子がサッカーをするようにまずアイスホッケーをやり、スキーやジャンプなどを始めると聞いた。レーシングカートに夢中になる子は珍しい。サーキットも少なく、長い冬の間は走れない。


 だから彼らはイタリアやベルギー、フランスまで遠征に行かねばならない。自主自立精神が自然に芽生えるだろう。速さが目立つとヨーロッパ・カート界で注目され、目利きの関係者の推薦によって、ジュニア・フォーミュラにステップアップするチャンスを手にしていく。先輩ケケ・ロズベルグはJ.J.レートやミカ・ハッキネンを、ハッキネンはボッタスの面倒をみてきた。


スペインGP決勝の1周目で接触したライコネンとボッタス
スペインGP決勝の1周目で接触したライコネンとボッタス

 第5戦スペインGPでふたりが1コーナーで接触、ライコネンはその場でリタイア。ボッタスは続行できたが39周目にメルセデスPUがブロー。今季初めて両者“ゼロ・レース”、チームメイトとの得点差が広がった。


果たしてキミは遅くなったのか?
 ライコネンはベッテル-55点、ボッタスはハミルトン-35点。まだ5戦終了だが小さくないギャップだ。ライコネンは昨年5戦時点でベッテルを13点リード、予選タイム2勝3敗とほぼ対等に近かった。ところがここまで0勝5敗、この落ち込みが得点力低下につながっているのを本人も認める。


 では37歳(アラフォー)のキミは遅くなったのか。そうとは思えない。初戦からここまで予選Q1とQ2ではベッテルを6回上回っている。だが-0.577秒、-0.187秒、-0.320秒、-0.239秒、最後のアタックで及ばず逆転された。「PPを狙えるスピードはあるのに自分がミスを」と率直に語るライコネン。
 
 彼のレース・キャラクターを表すのは歴代2位の最速ラップ45回記録。今季はすでに2回樹立、昨年は1回きりでSF70Hに好感触を持っていることがよく分かる。


同僚ベッテルに対して今季負け越しているライコネン
同僚ベッテルに対して今季負け越しているライコネン

ライコネンの【アップポイント】

■Q3ラストアタックの精度を上げたい。とくに低中速エリア(ターンイン)と、最終セクター。


■スタートダッシュでベッテルとわずかな違いがある。ピアニストのように繊細なクラッチパドル操作を。


■接近戦タービュランスのなか、乱れがちなフロント挙動を制御したい。クリーンエアなら最速ラップを引き出せるのだから。


F1王者を相手に善戦、もうひとりの“フライング・フィン”


 ボッタスとハミルトンの予選成績は“2勝3敗”。そのタイム差は-0.293秒、-0.496秒、+0.023秒、+0.478秒、-0.224秒。PPを64獲得しているF1王者を相手にこの+-のギャップは健闘そのもの、明らかに3戦目からチームとマシンに慣れてきているのが読みとれる。


 同時に想像以上にメルセデス・ドライバーとしてのプレッシャーをひしひしと感じたのではないか。ロシアGPで初勝利が叶ったとき、こみ上げる喜びを爆発するのではなく、やや遠慮がちにふるまった。ハミルトンは4位、チーム全体に漂う重たい空気を察しているかのように映った。ウイリアムズで表彰台に立ったときはもっと感情をあらわにしたのに……。


 チームプレイヤーとしてバーレーンGPで「チームオーダー」を初めて受け入れた。そのショックを自分の中で消化、メルセデスで戦うプレッシャーを再認識したと思う。スペインGPではベッテルの壁になった後、ハミルトンに譲り、結局PUトラブル。このストレスの連鎖もさらなるプレッシャーになりかねない。

ロシアGPで初勝利を飾ったボッタス
ロシアGPで初勝利を飾ったボッタス

ボッタスの【アップポイント】

■初日FP1で先行を。ロズベルグ時代からハミルトンはいきなり出し抜かれると、週末のペースが普段より乱れる傾向がある。


■そのためのイニシャル・セッティング。大組織チーム内で自分の意見、アイデアを取り入れてくれるよき理解者を。


■不言実行だ。中盤ますますプレッシャーが強まる。それはハミルトンも同じ、ハッキネンの存在が助力となるだろう。


 フライング・フィン表彰台そろい踏みは過去に4つ成立している。
・07年日本GP富士 2位コバライネンと3位ライコネン
・08年マレーシアGP 1位ライコネンと3位コバライネン
・08年ハンガリーGP 1位コバライネンと3位ライコネン


 そして、今年ロシアGPで1-3フィニッシュ、いつどこでそれ以上があるか。そのとき、ふたりは……?



(Jun Imamiya)




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