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F1王者としてインディ500に挑む新人アロンソの勇気【今宮純のザ・ショウダウン】

2017年4月20日

 F1ジャーナリストの今宮純氏が様々な要素を【対決】させていく新企画。第1回はインディ500に挑むフェルナンド・アロンソだ。 突如インディ500への参戦が決定したアロンソ、この挑戦は果たして無謀な試みなのだろうか?チーム体制・濃密な走行スケジュールを元に“ルーキー”アロンソの可能性を探る。


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 挑戦というよりも『冒険』だ――フェルナンド・アロンソの決意をそう受けとめたい。
「インディ500を見ずしてアメリカン・レーシングを語るなかれ」。その格言を昨年、第100回記念レースで再びかみしめた。86年に初めて訪れた後、ずっとモナコGPに出向いていたが30年ぶりにインディ500に行き、新たな刺激をうけた。


 2007年までインディアナポリスで開催されたF1アメリカGPの数倍いやそれ以上の賑わい、半年前にチケットは完全ソールドアウト。早朝から推定40万人が押し寄せる人の海のなかで、メガスケールなインディ500に溺れそうになった。


 第2期ホンダF1時代にゲルハルト・ベルガー担当として重責を担ったTエンジニアが、アメリカHPD(ホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント)で現場リーダーを務めている。週末に夕飯を囲み旧交をあたためた。


 アンドレッティ・チームが全精力を今週に注いでいること。マノーから転向の新人アレクサンダー・ロッシがフェニックス・ショートオーバルですぐ順応性を示したこと。他にも貴重な話を聞いた。しかし、F1については口数が少なかった。彼と長谷川祐介ホンダF1総責任者は懇意の間柄、世界と戦う二人にはそれぞれプレッシャーがある――。


 昨年、第100回記念のインディ500にシボレー本社は必勝態勢できていた。ホンダの看板を背負う立場のTエンジニアには、第2期F1時代と同じ重圧がかかっていたのだ。店を出るとトニー・カナーンやボビー・レイホールと遭遇、ヤアヤアと話しかけてきてインディ界の仲間たちはとてもフレンドリーだった。


 超高速戦に身をさらすリスクを共有しているからこそ、互いの心にリスペクトが芽生えるのだろう。いまは希薄になったがひと昔前のGPドライバー達もそうだった。

元F1ドライバーのアレクサンダー・ロッシは、2016年のインディ500でルーキーとして勝利をあげた
2016年のインディ500でルーキーとして勝利をあげた元F1ドライバーのアレクサンダー・ロッシ

 観衆すべて総立ち、200周目のチェッカーがガス欠状態のロッシに振られた。3時間00分02秒0872の結末はホンダの1-2、周りの席では「ロッシって誰? F1から来たルーキーか」と大騒ぎ。Tエンジニアから聞いていたことが目の前で現実になった。


 新人ロッシを引っ張り、背後で援護するなど皆でカバーしたアンドレッティ陣営のチームワーク。最後の燃費勝負で緻密な管理を遂行したHPDスタッフ、それらがルーキー優勝を叶えたのだ。レース後、Tエンジニアは「実はターン3ではもう一滴も残っていなかったんです」と、疲れきった表情に半分の笑顔で言った。


 今季第3戦バーバー前に書いているが、ホンダは戦前予想を覆し開幕2連勝スタート、最悪状況のF1とは真逆だ。これから29日に第4戦フェニックス(30日 F1ロシアGP)、5月13日 第5戦インディ・ロードコース(5月14日 F1スペインGP)、そして28日が第6戦インディ500だ(28日 F1モナコGP)。

■F1合同テストよりも濃密な走行スケジュール

 この特別なイベントには、ほかのレースにはない特別なスケジュールがある。15日 午後12時から6時間の“フリー走行”が始まり、16日、17日、18日、19日まで五日間およそ30時間、レース前これだけ走れるのはインディ500だけだ。


 20日と21日に予選、翌22日にも6時間のフリー走行が設けられ、本番二日前の26日に最後の90分間セッションがある。そこでは通常、各チームがチームメイト同士集団のままトラフィックを想定し、超高速戦での“エアロ・チェック”を行う。ダウンフォースやタービュランスの影響を確認、多数エントリ―するチームはより実戦に近いシミュレーションが可能だ。


 今回アロンソともう一人を加えるアンドレッティは6台体制、相互補完することによってデータ収集の効率を高めるに違いない。ちなみにこれまで佐藤琢磨は少数エントリー・チームにいてそうしたデータの不足に悩み、いわば孤軍奮闘しなければならなかった。

 
フェルナンド・アロンソ 

 アロンソがいきなりインディ500に挑戦するのは無謀なことだと、「F1発想的」な見方がヨーロッパ側にある。そう言いきれない理由が事前の濃密スケジュールを知れば分かるだろう。


 一人が四日間ずつの合同テストだけで開幕戦に向かうF1より、はるかに走りこんで本番に臨める。今年序盤のマクラーレン・ホンダの状況にくらべたら事前準備期間はたっぷり、現場エンジニアと日々対話もできる。チームメイトの佐藤たちとフレンドリーに情報交換、アンドレッティ代表はロッシをコーチングした以上にF1王者の“ルーキー”に接するだろう。


 モナコGPではドライビングの精密力、ル・マン24時間ではフィジカルな持久力、インディ500ではその両方と冷静な判断力が求められる。これまで3大レースを現場取材してきた一人としてそう思う。

F1では王者の貫録を見せるもインディ500では“ルーキー”のアロンソ 
F1では王者の貫録を見せるもインディ500では“ルーキー”のアロンソ 

 アロンソにはこの三つの力がルイス・ハミルトンやセバスチャン・ベッテル、マックス・フェルスタッペンよりバランスよく備わっている。なにより言えるのは我慢強い性格であること、800kmを一人で走りぬく間には必ず何かが起こる。それを受け入れ、くじけず3時間以上ピークを保つのだ。F1の3倍近いインディ500は人生行路みたいに長い。F1王者として冒険に向かうレーサーの勇気、60年代に成し得たジム・クラークがだぶる――。



(Jun Imamiya)




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