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【大変革のF1新シーズンにまつわるQ&A】「新規則は成功するの?」「マクラーレン・ホンダは飛躍する?」

2017年2月20日

 2017年シーズンの開幕が近づくにつれ、F1の新時代はどんなものになるのか、様々な予想が立てられている。次世代のF1マシンが史上最速になるのは間違いないが、この大改革は本当に狙いどおりに機能するのだろうか? また、3年目を迎えるマクラーレン・ホンダにどれぐらい期待してもいいのか? 


 かつてジョーダンやスチュワートでデザイナーを務め、現在英AUTOSPORTのテクニカルエキスパートを務めるゲイリー・アンダーソンがファンからの以下の7つの質問に答えた。


1.新規則に問題があると思うのは気のせいでしょうか?
2.実際にはレースが面白くならないと分かったら、どうするのでしょう?
3.若手ドライバーは今年苦戦すると思いますか?
4.マッサは復帰すべきだったのでしょうか?
5.F1ドライバーを輩出できなかったGP2の問題点は?
6.マクラーレンはトップ5に入れますか?
7.規則変更でチーム間の格差は広がるのでしょうか?


Q1:F1の首脳陣は、なぜメカニカルグリップを上げるだけにとどめず、ダウンフォースも強化したのでしょうか? 前のマシンに接近して走るとタイヤがダメになってしまうという、昨年までの問題が繰り返されることになりませんか?


A1:なぜそうなったのか、私もぜひ知りたいと思う。質問者が言うように、タイヤの変更でメカニカルグリップだけを上げれば良かったのだ。もし私がルール変更に関与できたなら、空力によるグリップはむしろ減らしていただろう。


 だが、2016年までのタイヤの問題は、前車に接近して走ることだけで生じていたのではない。もともとタイヤにオーバーヒートしやすい性質があり、接近して走る状況では、それが特に顕著になっていたのだ。

ウイリアムズ『FW40』
ウイリアムズ『FW40』


 私に言わせれば、2017年のレギュレーションには多くの問題点がある。
 1)車幅が11%広がることでコーナーでの安定性が高まり、ドラッグもわずかに増える。しかし、それ以上に重要なのは、クルマの全幅が広くなれば事実上コースの幅が狭くなったのと同じだということで、特にモナコのようなレースではオーバーテイクが一段と難しくなる。


 2)フロントウイングは従来の複雑な構造のままなので、ダウンフォースレベルが増せば、タービュランスの望ましくない影響も大きくなるだろう。アンダーフロアが発生するダウンフォースは、これまでよりも多少はタービュランスの影響を受けにくくなりそうだが、パッケージ全体で見ると、これがもたらすメリットはそれほど大きくないと思う。


 3)今回のレギュレーション変更で、チームは研究開発予算の増額を強いられ、多くのチームでほぼ倍増した。どのチームにとっても新たに学ぶべきことが多く、シーズン中の開発は例年以上に大規模かつ急ピッチで進められるだろう。


 4)ただひとつ評価できるのは、サイズの変更によりタイヤのグリップが向上すると思われることだ(ただし、ピレリがそれを実現できたかどうか、いまのところ私には知る術がない)。トラックの荷台から降ろされた段階では、ザウバーのタイヤもメルセデスのタイヤも完全に同じものであり、タイヤのグリップが上がれば、追加のコストを要さずにラップタイムは確実に速くなる。


Q2:どうやら、新ルールによってレースが確実に面白くなるわけではない、というのが衆目の一致するところのようです。あなたはこの意見に同意しますか? もしそうなら、2017年の最初の数戦が終わったところで、次に何が起きると予想しますか?


A2:新レギュレーションについての私の考えは、上の質問への回答で示すことができたと思う。


 では、最初の数戦を終えて、このレギュレーション変更が失敗だったことが明らかになった場合には、どうなるかという質問に答えよう。


 私の予想では、まずテレビの視聴者がレースを見なくなって、視聴者数が減少する。すると、F1の新しいオーナーはパニックに陥り、何らかの形で対策を講じようとするだろう。しかし、レギュレーションを元に戻すのは不可能だから、おそらく競技規則の変更によって、レースを面白くするための手を打つことになる。


Q3:2017年のF1マシンは、ドライバーにより強靭な体力を要求するものになると言われています。ドライバーの体力、集中力、回復力は、パフォーマンスにどんな影響を及ぼすのでしょうか? また、今年は若手ドライバーの一部が、主に体力的な問題で苦戦をすることになると思いますか?


A3:まず、私は若手が苦戦するとは思っていない。むしろ、その反対だろう。なぜなら、一般的には若い人ほど変化に適応するのが速いからだ。

トレーニングを増やして開幕に備えるサインツJr.
トレーニングを増やして開幕に備えるサインツJr.

 F1まで来るようなドライバーなら、誰でも体力はかなり高い水準にある。それよりも重要なのは、いわゆるメンタルフィットネスだ。メンタルを鍛えれば、ミスを犯すリスクを減らせるし、何周でもずっと集中を保ってドライブを続けることができる。


 これを現代のF1に持ち込んだのが、ミハエル・シューマッハーだった。彼がそのキャリアを通じて何度も証明してみせたように、ミハエルは何周でも連続して好タイムを記録できたのに対し、他のドライバーは1周限りのタイムでも彼に迫ることができなかった。


 ジャッキー・スチュワートなら、おそらくこう言うだろう。「私が偉大なドライバーと呼ばれるようになったのは、どんな状況でもリラックスして、ステアリングを力いっぱい握りしめたりしないようにすることを学んでからだ」と。


 それは身体的なトレーニングだけで得られるものではないのだが、ドライバーの多くは、そのために何をすればよいかを理解していない。


Q4:フェリペ・マッサが引退を撤回して、ウイリアムズに復帰するのは良いアイデアだと思いますか?


A4:私としては、いったん引退したドライバーが、現役に復帰するのはいかがなものかと思っている。しかも、舌の根も乾かぬうちにとなれば、なおさらだ。それは、引退がよくよく考えた末の結論ではなく、もはや旧所属チームと同等以上のチームには移籍できないと考えて、引退を選んだにすぎないことを証明しているように思えるからだ。


 実際のところ、マッサは引退を表明するのではなく、バトンと同様に「1年間の休養」を取ることにしてもよかったのではなかろうか。今回は結果としてウイリアムズに復帰することになったが、他のチームが突然彼のようなベテランを必要とすることも、十分にありうるのだから。たとえば、オーストラリアの開幕戦の直前に、ルイス・ハミルトンがバナナの皮を踏んづける可能性もないとは言えない。


 もうひとつの問題は、復帰によって彼自身が傷つくリスクがあることだ。一度は引退を決めながら、また現役に戻る場合、やはり精神的な面では現役を続けていた時とまったく同じではないだろう。それは判断の微妙な「ずれ」につながり、特に2016年よりも速くなっている今年のクルマでは、痛い目に遭うことになるかもしれない。

2016年ブラジルGP フェリペ・マッサ、クラッシュの後、ファンの声援に応える
2016年ブラジルGP フェリペ・マッサ、クラッシュの後、ファンの声援に応える


Q5:2016年のGP2の卒業生が、今年のF1のグリッドに並ぶことはなさそうです。F1ドライバーの育成を目的としたこのシリーズに関して、抜本的な見直しが必要だと思いますか?
 もしそう思われるとしたら、F1に最も近いというGP2の存在意義を維持しつつ、コストを抑制するには、どんな対策を講じればよいでしょうか?


A5:F1にとって最良のドライバー育成カテゴリーは、昔からずっとF3だったし、いまもそれに変わりはない。数多くの優れたドライバーたちが、この事実を証明している。


 GP2とGP3は、どちらも金儲けのために立ち上げられたものだ。これらのカテゴリーを作った人々には、かなりの政治力があり、それを駆使してF1のサポートレースとすることに成功したが、結果としてシリーズの参戦コストは高騰した。


 F1チームにとって、GP2やGP3はドライバーの実力を見定める「ショーウインドウ」にはなるし、実際に何人かの優秀なドライバーたちが、そこからF1に上がってきた。その意味において、これらのカテゴリーに存在意義がないとは言わない。ただ、近年ではチームが独自のドライバー育成プログラムを通じて、もっと早い段階から才能ある若者を発掘しようとしており、GP2やGP3がなくなってもチームはそれほど困らないだろう。


 かつてグランプリの週末には、ケン・ティレルのようなチームオーナーが、見込みのありそうな若手を見つけようと、ピットウォールから身を乗り出すようにしてサポートレースのドライバーたちを観察していた。だが、そんな時代は、もうとうの昔に終わっているのだ。


Q6:今年、マクラーレンは選手権でトップ5に入れるでしょうか?


A6:マクラーレンほどのリソースがあれば、トップ5どころか、もっと上にいてもおかしくない。ただ、私に言わせれば、問題はマクラーレンが、自分たちのシャシーの能力を少々買いかぶっていることにある。エリック・ブーリエは、もしマクラーレンが2016年にトップレベルのエンジンを手にしていれば、何勝かはできたはずだと発言したが、私にはそうは思えないのだ。


 マクラーレン・ホンダが、常に中団の先頭を走るようになるまでには、まだシャシーとエンジンの両面でやるべきことが多い。そして、そこまで到達したとしても、トップグループ(今年その集団を構成するのが誰と誰であるにせよ)に追いつくには、さらに膨大な量の宿題をこなす必要がある。


 クルマに関する問題は、まだ比較的単純な話で、マクラーレンの場合は、マネジメント組織の再構築の途上にあるという点も考慮しなければならない。ロン・デニスがチームを去った後、誰もが自分の収まるべきポジションを探しているはずで、全員が然るべき位置に落ち着くまで、しばらくの間は意思決定がスムーズに進まない可能性があるからだ。

2016年アブダビGP フェルナンド・アロンソ(マクラーレン・ホンダ)
2016年アブダビGP フェルナンド・アロンソ(マクラーレン・ホンダ)


Q7:テクニカルレギュレーションの大幅な変更があると、いつも上位と下位のパフォーマンスの差が広がります。今回も同じことが起きるでしょうか? また、そうなるとすれば、理由はどこにあると思いますか?


A7:私は、いままでもずっとそうだったように、今回も同じことが起きると思っている。
 そうした現象が起きるのは、基本的には、どこかのチームが他のチームより優れたクルマを作ってくるからだ。2009年の場合、それはホンダの置き土産から立ち上げられたブラウンGPだった。他のチームが多額の開発費を費やして自分たちのダブルディフューザーを作ってくるまでの間、彼らは快進撃を続けて、フロントランナーの地位を確かなものにした。


 先日、私はまる一晩を費やして、2017年のレギュレーションを読み通してみた。ルールの抜け穴を見つけるのが、それほど簡単ではないのは知っているが、それでも新しい規則がグレーエリアだらけの地雷原であるようには思えなかった。


 正直なところ、私としては、どこかのチームが早々とこのレギュレーションでの最適解を見つけて、余裕しゃくしゃくでメルボルンに乗り込んでくる可能性は低いと考えている。


 私には問題だらけに思えるこのレギュレーション変更において、最終的な到達点が見えてくるのは、ある程度の時間が経過し、何百万ドルという資金が開発に費やされた後のことだろう。



(Translation:Kenji Mizugaki)

この記事は国内独占契約により英 AUTOSPORT.com 提供の情報をもとに作成しています




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