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【レースの焦点】「最高のバトルだった」灼熱のマレーシアで巻き起こった熱く、フェアな首位争い

2016年10月4日

 今宮雅子氏によるマレーシアGPのレースの焦点。激しく、かつフェアに争ったリカルドとフェルスタッペン。ふたりに訪れた勝利のチャンスと、タイヤ交換後のバトル。そして、スタート直後の混乱の、いちばんの“勝者”とは──
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「“勝つ”って言ったでしょ?」と、表彰台の控え室でカメラに向かってダニエル・リカルドが言った。

「今年中に勝つ」とチームに伝えたのは、シンガポールGPを僅差の2位でゴールした直後の無線。レッドブルにとっては熱帯の市街地コースがシーズン後半最大のチャンスだったが、勝利への決意は揺らぐことがなかった。終盤戦のどこかで雨が降れば、チャンスをつかめると信じていた。

「でも正直、ドライのセパンで勝てるなんて思ってなかった。金曜日はロングランもあまりよくなかったし、絶対に不可能なことなんてないとしても、ほとんど不可能に近いと思えた」

 シンガポールと同じほど、体力のすべてを消耗した1時間40分のレース。14年のベルギーで勝利して以来2年の間に経験した様々な思いや苦悩。裏切るように指の隙間からこぼれていったモナコの勝利は、もっとも厳しい経験だった。でも、チームと一緒により強くなって乗り越えることができたと、今は思う。

 オーストラリア国歌を聴きながらまっすぐに左手を掲げたリカルドは、その後、涙を堪えるように笑顔の口元を固く結んだ。

 最初の出来事はスタート直後のターン1で起こった。4番グリッドから発進したリカルドは、メルセデスの2台に続くマックス・フェルスタッペン、好スタートで自分の前に出たセバスチャン・ベッテルを視界にとらえて冷静だった。

 ターン1ではみんながイン側に進み、そこに十分なスペースはないように思われた。ブレーキを遅らせたベッテルがアウト側のニコ・ロズベルグを巻き込んだのはその直後。リカルドはルイス・ハミルトンの後方に開けたスペースにポジションを取り、2番手を確保した。

スタートの混乱に一切巻き込まれず、2位を確保
LAT



「アベレージ程度のスタートと、ターン1への慎重なアプローチがうまく働いたと思う」
 スタート直後のポジション取りは、HRTやトロロッソ時代の混戦のなかで常に研究してきた課題。

 抜かれると運のせいにせず「あそこに身を置いた自分が悪い」と反省の材料にしてきた。誰よりも接触事故が少ないのには、理由があるのだ。
 
 混乱を避けたフェルスタッペンがいったん後退したことによって、チーム内の作戦の主導権はリカルドが握ることになった。9周目のバーチャルセーフティカーを利用してフェルスタッペンがピットインしたときにも、迷いはなかった。

「自分はいいポジションを走っていたし、タイヤもまだフレッシュだったから、あの時点ではピットに入る理由は見当たらなかった。後ろにいたマックスのほうが何か違うことにトライする自由度は大きく、チームはマックスと一緒に試したかったんだと思う」

 新舗装のセパンは去年までとグリップがまったく違う。ラップタイムは6秒も速い。ソフトコンパウンドが投入されたのも初めてのこと。レースコンディションでの路面変化を捉えながら、各チーム柔軟に対応することが求められたグランプリだった。

「レースが進むにつれて、マックスの作戦はすごく上手く働いていることがわかった。彼は僕より少しフレッシュなタイヤを履いていたから、ある時点で追いついてくるだろう。その時には全力で抑えようと備えていた」

 21周目に最初のタイヤ交換を行ってハードを履いたリカルドと、27周目に2度目のピットインでハードに履き替えたフェルスタッペン。ふたりの間隔が1秒以内に入ったのは37周目。39周目にはターン4に向かってフェルスタッペンがリカルドに並んだ。

 そしてアウトからラインをクロスさせてクリッピングポイントをつかんだ。出口ではリカルドが左、フェルスタッペンが右。2台はサイドバイサイドのまま高速のターン5、ターン6を抜けてターン7のブレーキングに向かって行った。

 マレーシアGPのベストシーンだった。F1ドライバーの腕に心底感激するのはこんなとき。接触のない接近戦だからこそ、彼らの技がいっそう輝く。

ふたりは最高のバトルを披露した
LAT



「マックスがDRS圏内に入ってきたときには、全力で戦おうと思った。残り20周近く彼をホールドするのはすごく難しいこともわかっていた。でも最初のアタックに応戦できたことが“2番手を守れる”という最初のサインだった。1回守れたんだから、この後も繰り返し防御していくことはきっと可能だろう、と」

 ターン7のブレーキング勝負では、イン側にいたフェルスタッペンが賢明に退くしかなかった。「縁石をひっかけてマシンが跳ねると、2台とも駄目にしてしまうから」と、19歳のチームメイトが説明した。

 ふたりの戦いが2位ではなく優勝争いになったのは、その直後――41周目のホームストレートでハミルトンのエンジンがブローアップしたとき。後方のロズベルグに対しては大きなリードがあったため、チームは2台同時のピットインを決断。

 最後のソフトはリカルドがニューセットなのに対して、フェルスタッペンが3周オールド。乱気流を受けてスライドするタイヤはオーバーヒート気味で、フェルスタッペンはゴールから4〜5周の時点で攻撃を諦めるしかなかった。

 それでも、勝ったリカルドも負けたフェルスタッペンも「最高のバトルだった」と口を揃える。見事な攻撃性と互いへのリスペクトを両立させて、ふたりはきっと、今後も自由に戦う権利を得た。
 

勝利を争ったふたりは互いをリスペクト
LAT



 スタート直後の混乱の、いちばんの“勝者”はPU交換のペナルティを背負って最後尾からスタートしたフェルナンド・アロンソ。アウト側からターン1にアプローチし、コース外の舗装も使って混乱を避け、12番手までポジションアップした。

 その後もエステバン・オコンやカルロス・サインツをかわしたアロンソが、ロマン・グロジャン、フェリペ・ナッセをとらえたのはDRSゾーンではなくターン4――ドライバーの腕で活かされたホンダPUのトルクが、鈴鹿に向かって期待の材料となる。

 ハードを履いた第2スティント中盤には“プランA”を主張するチームに対してきっぱりと「無理。デグラデーションが大きすぎる」と返した。その時点ではペースを維持していたものの、ハードのスティントを長引かせると失うもののほうが大きいことをアロンソは予測していたのだ。

「僕らはアグレッシブな作戦を採り、予選で残した新しいソフトタイヤ3セットをすべて使おうと決断した」

 タイヤ性能の優位性を活かせば、どんなマシンが相手でも、今年のセパンには必ずオーバーテイクのポイントがある。新舗装のグリップも、レコードライン以外を通るオーバーテイクを可能にした。

アロンソの“レース巧者”ぶりが光ったレース
LAT



 1周目のポジションアップも最後のVSCも「ラッキー」で済ませてしまうのはアロンソらしさ。運だけでないことは、もうみんなが知っているというのに。

 苛酷なコンディションの下、コーナーのバリエーションに富んだセパンは、アロンソにとって世界のベスト3に入るサーキット。鈴鹿ももちろん、お気に入り――。

「S字は最高だけど、他にも簡単なコーナーがひとつもない。1周すべてが、ミスを許容しない挑戦」

 難コースだからこそ、強者は鈴鹿が大好きだ。

(今宮雅子/Text:Masako Imamiya)




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8位フェルナンド・アロンソ31
9位ルイス・ハミルトン19
10位ランス・ストロール9

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2位スクーデリア・フェラーリ151
3位マクラーレン・フォーミュラ1チーム96
4位メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム52
5位アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム40
6位ビザ・キャッシュアップRB F1チーム7
7位マネーグラム・ハースF1チーム5
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