34周目に6番手に浮上したフェルナンド・アロンソ。しかし、前を走るフェリペ・マッサとの差は30秒以上ある。無理をする状況ではない。しかし、後ろを走るマグヌッセンとの差は約8秒ある。タイヤと燃費をコントロールしつつ、後ろとの差を見ながらペースを保たなくてはならない。しかも今年から無線の規制が厳しくなり、ピットに頼ることなく、アロンソは自らコントロールしていた。
そのアロンソのペースに異変が起きたのは、46周目。前の周から突然ラップタイムが落ちた。2周続けて1分43秒台で走ったアロンソだったが、それはトラブルではなかった。48周目に向けて、燃料をセーブしていたのである。そして、迎えた48周目。一気にペースを上げたアロンソが叩き出したタイムは1分40秒476。それまでの自己ベストだった。
ライバル勢と戦うためだけでなく、MP4-31のポテンシャルを見極めるために、タイヤと燃費を自分でコントロールしていたのだ。さらに自己ベストを出したあと、無線で「ちゃんと(ペースを)元に戻すから」と伝え、チームを安心させる配慮も忘れない。
欠場を余儀なくされた第2戦バーレーンGPでは、代役で出場したストフェル・バンドールンに今シーズンのチーム初入賞を奪われたアロンソ。モチベーションが下がったと言われたこともあったが、メルセデス、フェラーリ、ウイリアムズに続いて、6位でフィニッシュした今回の入賞は、アロンソというドライバーの存在の大きさをあらためて知らしめる結果となったことだろう。
アロンソは自身のファイナルラップに、もう一度プッシュして自己ベストを更新。1分40秒347は全体で5番目となるファステストラップだった。アロンソが最後まで攻めることができたのは、ホンダのパワーユニットが良くなっている証だ。
「パワーユニットとしては、今日いま持っている力を出し尽くしました。レース前にも言っていたように、できるだけ予選モードで走らせたいと考えていましたが、今回は終始それができました。燃費セーブは別として、パワーとしては常にフルパワーで走っていました」
今回のダブル入賞は、結果よりも、その内容に大きな意味があった。
(Text : Masahiro Owari)