周回距離を最優先するためにミディアムでの走行に徹したメルセデス。その状態でベストタイム1分24秒126は、確かに抜きん出ている。カーバランスはベスト、あらゆる燃料重量で最適セッティングを構築しながら空力アップデート確認作業も進めた。それならば開幕序盤の指定スペックを、ソフトだけでなくスーパーソフトもチェックする余裕があったはずだ。タイヤの年間テスト使用セット数に制限があろうと、1セットも試さなかったのは「手の内を隠すため」? あるいは「履いたらボロボロになるほど強大なパワー&トルクがあるから」なのか……?
最後の2日間、メルセデスは再びミディアム中心でフルレース・シミュレーションに取り組んだ。並行して、届いたばかりのフロア・パーツを実走確認、総仕上げプログラムを粛々と実行中に事件は起きた。3月4日、午後12時48分、赤旗。ストレートを通過したハミルトンが異音とともにピット出口脇にストップ。数周ランする予定がミッション・トラブルによって断たれ、王者は赤旗でテストを終えた。およそ2時間後、ロズベルグは修理したW07でコースへ(この短い修復作業には驚いた)。シミュレーションを開始したロズベルグは同じ目的のベッテルを、やや上回るペースで、夕方6時に当日の自己ベスト1分26秒140をマークした。マノーのリオ・ハリアント以下となる最下位タイムだが「マシンの感触は8日間で最高!」と絶賛、午前中に止まった王者とは対照的に満足気に終わることができた。メンタル面で昨シーズン終盤の「ダウン&アップ関係」を思い出す。
攻めるフェラーリは3日、ライコネンがウルトラソフトで最速1分22秒765を叩き出し、テスト2日目にベッテルが出していた1分22秒810を更新。総合ベストタイム「1-2」で締めた。これまでピレリの軟らかいスペックがしっくりこなかったライコネンがソフトで最速、ウルトラソフトでも最速。ベッテルは「今年キミはすぐ近くにいる」と発言した。これは共同戦線でメルセデスに挑むという意味にとれる。
8日間にわたる「バルセロナ・テストGP」でフェラーリは王者へと急接近、追いつく寸前でチェッカーは振られた。メルセデスに対して昨年までとは違うホンモノのプレシャーをかけ、守りに徹する心理へとメルセデスを揺さぶった。見てみよう2強対決、今年は開幕レースが、いきなりの決戦──。