これは2018年からパートナーを組んでいるトロロッソだけでなく、2019年からはレッドブルも加えた2チーム供給となったことが大きな要因だが、同じ2チーム供給のルノーの878周、3チームに供給しているメルセデスの946周(ウイリアムズのテストは1日半)を上回る957周は、堂々たる数字だった。
2回目のバルセロナテストでは、レッドブルがパワーユニット以外の問題で十分な走り込みを行えず、8日間全体の総周回数は1768周にとどまり、最下位に終わったが、同じ2チーム供給のルノーとの差はわずか67周。1チームあたりで比較すれば、メルセデスの794周を上回る884周を走行。復帰5年目にして、ホンダの信頼性は、ライバル勢に追いついたと言っていいだろう。
しかも、ホンダは2019年から2チームに供給を増やしながらも信頼性を向上させていた。供給先が増えるということは製造するパワーユニットの数が増えるだけでなく、そのパワーユニットを走らせる現場のスタッフも約2倍となる。
今回のテストが2チーム体制で臨むホンダにとって初の実戦となったが、トロロッソのテクニカルディレクターを務めるジョディ・エジントンは、「テストでホンダは完璧な仕事をした」と称賛。
レッドブルのチーフレースエンジニアを務めるギヨーム・ロクランも「パワーユニットは十分な信頼性を見せてくれたし、ホンダの仕事ぶりは素晴らしかった」と満足していた。
今回のテストではホンダが2チームにパワーユニットを供給していたことで、大きな収穫もあった。2回目のテストではレッドブルが十分な走り込みをできなかったが、トロロッソがそれを補うようにしっかりとマイレージを稼いでくれたおかげで、ホンダは開幕前に1基で4000kmを走破することができた。
1グランプリの走行距離が約700kmなので、年間21戦を3基のICEで乗り切るためには1基あたり4000km以上の信頼・耐久性が求められる。その課題を今年のプレシーズンテストで復帰後5年目にして、初めてクリアできたことは開幕へ向けて、大きな収穫だった。
ニューマシンを走らせるプレシーズンテストで最も大切なことは、できたばかりの新車と新しいタイヤを理解するために、少しでも多くの周回を走ること。その点において、今年のプレシーズンテストでのホンダは賞賛に値する仕事をしていたと言っていいだろう。
(Masahiro Owari)