ホンダはスパ-フランコルシャンに、最新のスペック3のスペアをもう1基持ってくるとともに、スペック2も念のために持ち込んでいた。ただし、それはドイツGPまで使用してきたユーズドのパワーユニットではなく、レースでまったく走らせたことがない新品のスペック2である。
ここでマクラーレン・ホンダは2つの意見に分かれた。ひとつは「心配だからスペック2に戻そう」という意見だった。しかし、問題が発生した箇所は、今回改良した部分ではなく、スペック2もスペック3も同じ仕様である。したがって、スペック2に戻したとしても、同じ問題が出る可能性がある。もとより、アロンソと同じスペック3を搭載しているチームメートのバトンのMGU-Hには、水漏れの問題が起きていない。
エンジニアリング的には、スペック2に戻すという案に科学的な説得力はない。そこで、ホンダはもう1基持ってきていた最新のスペック3をアロンソの車体に搭載する。
ただし、ひとつだけ心配なことがあった。それはウインターテストのときも、今回も、いずれも水漏れは交換したばかりの新しいパワーユニットで発生していたことである。もちろん、その心配はスペック2に戻したとしても、それも新しいパワーユニットであるため、解消されるわけではなく、スペアのスペック3を搭載するという決断を揺るがすものではなかったが、トラブルの真因が特定されていない以上、不安が解消されることはない。
フリー走行2回目はそんな中で、開始された。しかし、その心配は杞憂に終わる。新しく載せ替えたアロンソのスペック3は、トラブルを発生させることなく、30周を走ったのである。
ただし、スペアのスペック3は6基目のパワーユニットだったため、アロンソはこのベルギーGPで35番手降格のペナルティを科せられることが決定した(最初の6基目の10番手+5番手×5コンポーネント)。
それでも、初日のバトンは9番手、アロンソも12番手とペースは悪くない。トークンを使用したスペック3の投入は、正しい決断だったといえる。
(Text : Masahiro Owari)