チームはオーバーテイクが叶わなかった場合にはポジションを戻すという条件で、ハミルトンの要求を受け入れた。
しかし、その結果あらためて確認されたのは“メルセデスは前のマシンの乱気流に弱い”という事実だった。オーバーテイクが難しいコースではあるけれど、問題は、抜けないという以上に“近づけない”現実だ。
「接近するのはすごく難しくなってきた」とハミルトンが訴える。チームは「あと5ラップ、オーバーテイクモードを使っても大丈夫」と励ます。それでも、鉄壁ライコネンに阻まれると、DRSすらほとんど使えなかった。
ハミルトンがフェラーリを攻撃している間、周回遅れの処理に手間取ったボッタスは大きく遅れてしまった。チームは「ライコネンを抜けなかったらポジションを戻すから、ルイスとの距離を詰めて」と励ますものの、低速からの加速が長く続く区間がないコース、前に近づけないマシンの弱点も災いしてハミルトンとボッタスの間隔は8秒近くまで広がった。
それでも、最終ラップでは9秒ペースを落としてハミルトンは約束を守った。見事だったのはその精神と、周回遅れのマシンと混走するなか、ボッタスの背後にフェルスタッペンが迫る状況で、巧みにポジション交替を実現した技だ。
■計算され尽くしたアロンソの“カミカゼ”オーバーテイク
さまざまなかたちで、チームの結束力が試されたハンガロリンク。パワーハングリーではないこのコースに焦点を絞ったマクラーレン・ホンダでは、フリー走行を通してフェルナンド・アロンソとストフェル・バンドーンがトップ10内のスピードを維持。予選ではアロンソが8位、バンドーンが9位と、2台そろってQ3進出を果たした。
大切なのは、バンドーンがFP2でMGU-Hのトラブルに見舞われたケースを除いて、他のチームと同様に、フリー走行で順当な周回数を重ねることができた点だ。
「7〜8位が目標だったから、このグリッドには満足。タイヤの性能低下も小さいし、作戦の幅が狭いことを考えると、スタートでいいポジションを確保し、そのポジションを最後まで維持したい」