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小松礼雄コラム:チーム力不足で予選Q1落ち、開幕で見えたハースの課題

2016年3月31日

 新生ハースF1チームに移籍し、チーフエンジニアとしてチームのレース部門を統括する小松礼雄氏。開幕戦オーストラリアでは新チームながら6位入賞を達成。新チームとして快挙と言っていい結果を出しましたが、経験が少ないスタッフも多く週末は苦労の連続だったようで……。F1速報サイトでしか読めない、小松氏の完全オリジナルコラム第3回をお届けします。

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快挙に近い初参戦6位入賞
ハース開幕戦ドタバタの裏事情


 開幕戦、ロマン(グロージャン)が6位に入り、予想以上の結果を出すことができたのでとても嬉しかったです。開幕前はとにかく完走、ポイント獲得がターゲット、最高で8位だと思っていました。新チームでの6位は、表彰台を獲得したようなものです。もちろん、レース中断のタイミングが僕たちにとって良かったこともありますが、本当にウチのスタッフは良くやったと思います。

 オーストラリアへ出発前は連日ファクトリーで夜遅くまで準備。とにかく何もかもが初めてで、2台のクルマを作ったことがないので2台分のクルマのパーツを確保するのと、オーストラリアに向けて時間内にそれらを無事に送り出せるようにすることなど、まずはそのロジスティックが一番大変でした。

 メルボルンに来てからはさらに大変でした。火曜日の朝に僕らエンジニアはメルボルンついて、そのまま夜中過ぎまで仕事、水曜日は徹夜、木曜日と金曜日はカーフュー(労働制限時間)の午前1時半と午前3時。土曜日はレース戦略の準備で朝の6時まで働いていたのでメチャクチャ大変でした。イギリスからオーストラリアまで24時間くらいかけて行って、ホテルとサーキット以外は何も見ずに終わりました(笑)。そういう中でみんなやって来たので、結果に繋げることができて本当に良かったです。

 そんなドタバタの中、金曜日から走行が始まったわけですが、金曜日は雨になり、ウチにとってはあまり望ましくない状況でした。冬に完璧に走り込めていたわけではないので、なるべくドライで走って距離を延ばしたかったんです。しかし、雨でコンディションが安定せず、あまり意味のある走行をすることができませんでした。ただむやみに走るのはスペアパーツがあまりない状況で、リスクばかり大きくなるのでよくありません。同じ雨でも良い雨のコンディション、意味があるウエットコンディションというのはあるけど、今回はそういうのでもなかった。だから、とぎれとぎれの走行でクルマの信頼性の確認をすることはほぼ全くできませんでした。

 金曜の走行は少なかったですが、チームの勢力図というか、自分たちがどの位置にいるかはウィンターテストの時からだいたいわかっていたから、それは心配していませんでした。それよりも、僕はクルマの信頼性を一番心配していたので、金曜日はある程度の距離を走りたかったです。それにウチのチームは過去のデータがなくてタイヤのデータがゼロなので、特に走れないことによるロスが大きいんです。

 P3は幸いドライになり、予選前に最低限の確認をすることができました。予選は新しいシステムになりましたが、残念ながらクルマの性能に見合った結果を残すことができませんでした。このシステムではとにかく相手よりも早くラップタイムを記録することが大事です。

 そのためにはセッション開始と同時に走り出し、1周でタイムを出してガレージに戻り、またすぐに新タイヤでコースに出て行かなければいけません。エステバン(グティエレス)は1周目のタイムがちょっとした問題があり全く遅かった(20番手)、そしてロマンは1周目にブレーキロックしてしまったので、タイムを記録するためにもう1周しなければいけませんでした。これは走行時間不足を考えるとしょうがないといえばしょうがないです。

 それでも、もし1分以内でクルマを再びコースに送り出せれば、2セット目のタイヤでラップタイムを記録できるタイミングでた。しかしウチのチームはピットでの作業がまだ早くはないので、時間切れになる前にタイムを出すことができなかった。でも、これは今のチーム力の限界でしょうがないです。結果として19位、20位という予選順位はクルマやドライバーの実力を反映していませんが、チーム力の限界でした。速いクルマを持っていても、その速さを出しきるのは簡単ではないという一例です。

 もちろん、こういう状況は想定していたので、冬のテストからクルマがピットに入ってきてからタイヤ交換と給油の作業を終えて、1分間以内でクルマを出さなきゃダメなことは判っていたし、練習もプランしていました。しかし、実際問題として、全く練習ができるところまで行きませんでした。

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