【レースの焦点】ハミルトンの“奇跡”の勝利の裏に隠された、エンジニアたちの無数の思考と緻密な計算
2018年7月25日
幸いだったのは、誰ひとりとしてハミルトンの道を阻もうとするドライバーがいなかったことだ。中団グループの争いは熾烈で、自分たちのレースに集中する彼らにとって、メルセデスは戦うべき相手ではなかったのだ。
本物のチャレンジは、14周目から始まった。その気勢をそぐように、フェラーリは14周終了時点という誰よりも早い段階でライコネンをピットに呼んだ。ベッテルから6秒遅れ、3番手を走行していたライコネンはフェルスタッペンにポジションを譲ったものの、ハミルトンの前でコースに戻ることに成功した。
フェラーリの意図は、ハミルトンの行く手を阻むと同時に、2番手ボッタスのピットインを誘うこと。しかし、ライコネンよりもベッテルとの首位争いを見据えたボッタスは反応せず、ハミルトンもまた、フレッシュなソフトタイヤを履いたライコネンに挑もうとせず、第1スティントをできるだけ長く走ることに集中した──。フェラーリの陽動作戦はメルセデスには通用せず、むしろ自分たちに罠を仕掛ける結果になってしまった。
フェラーリの作戦上のミスは──たとえそれがどんな作戦であっても──明確な意志をドライバーと共有できていなかったことだ。14周目のピットインがライコネンにとって2ストップ作戦を意味するなら、キミが第2スティント序盤をハイペースで走行したのは当然で、11周後にピットインしたベッテルが一時的に後ろにまわっても問題はなかった。しかし25周目、ベッテルのインラップにライコネンが記録したファステストラップはそれまでより1秒近く速く、チームメイトとポジションを争う意志が表れていた。
11周分“若い”ソフトでライコネンに追いついたベッテルは前を塞がれた状態に苛立ち、チームに不満を訴える。11周分“古い”タイヤで首位を走るライコネンには、そのタイヤであと何周走ることになるのか、ペースを決める手がかりがない。サーキットの北方から近づく雨雲によってチームには迷いが生じ、ふたりのドライバーを戸惑わせた。あるいは、3番手まで挽回してきたハミルトンがまだタイヤ交換を済ませていないこと、4番手ボッタスが10秒後方にいる状況に、危機感を抱いていなかったのかもしれない。
最後はそれぞれの担当エンジニアではなく、ジョック・クレアが長々と遠回しに、道を譲るようライコネンに伝えた。
ベッテルがライコネンの1秒後方を走った10周の間、タイム的に失ったものより大きかったのは、ペースアップできなかったことによって、スタートタイヤで走り続けるハミルトンのステイアウトを容易にしてしまったことだ。後半にウルトラソフトでのアタックを決めていたハミルトンにとって、42周目のタイヤ交換までトップから6秒しか離されなかったのは理想的な状況だった。
メルセデスは、ウエットタイヤへの交換を待ってハミルトンをステイアウトさせていたのではない。終盤の攻撃のため、ウルトラソフトを履ける残り周回を目指していたのだ。さらに──レース現場の技術責任を負うアンドリュー・ショブリンが説明する。
「雨が近づいてきた段階で新しいタイヤに交換できたのは、ルイスのプランにとって理想的だった。最初の雨はドライタイヤで乗り切れる程度だと予想していたから」
関連ニュース
※モナコGP終了時点
1位 | マックス・フェルスタッペン | 169 |
2位 | シャルル・ルクレール | 138 |
3位 | ランド・ノリス | 113 |
4位 | カルロス・サインツ | 108 |
5位 | セルジオ・ペレス | 107 |
6位 | オスカー・ピアストリ | 71 |
7位 | ジョージ・ラッセル | 54 |
8位 | ルイス・ハミルトン | 42 |
9位 | フェルナンド・アロンソ | 33 |
10位 | 角田裕毅 | 19 |
※モナコGP終了時点
1位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 276 |
2位 | スクーデリア・フェラーリ | 252 |
3位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 184 |
4位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 96 |
5位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 44 |
6位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 24 |
7位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 7 |
8位 | ウイリアムズ・レーシング | 2 |
9位 | BWTアルピーヌF1チーム | 2 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 0 |