では、なぜホンダは高速サーキットのスパに、低速域のトルクを上げた仕様のパワーユニットを投入したのか。それは、前戦ハンガリーGPのスタートで苦い経験をしたからだ。
ハンガリーGPで7番手からスタートしたアロンソ。スタートの反応そのものは悪くなかったが、そのあとの加速が伸びず、1コーナーで9番手からスタートしたカルロス・サインツJr.にかわされてしまう。1回目のピットストップ後にオーバーテイクしたため、事なきを得たが、スタートでの弱点を露呈した結果となった。
「低速域のトルクが上がれば、シフトアップのタイミングも変わって来るので、よりスムーズな加速につながります。金曜日のフリー走行ではその辺の改良具合を確認したかった」と長谷川総責任者。
果たして、金曜日のフリー走行は「珍しくまったく問題のない一日」(長谷川総責任者)となった。「金曜日の走行でパフォーマンスを評価するのは早いので、まだなんとも言えませんが、少なくとも問題なく走り終えたことは良かった。トラブルがなかったというだけでなく、ドライバリティに関する問題、例えばオシレーション(共振)などにも悩まされることがなかったことはポジティブにとらえています」
フリー走行2回目の後半は雨が降ったベルギーGP初日。だれもがピットガレージで待機する中、コースインしたのはレッドブルのダニエル・リカルドとアロンソだった。リカルドがスピンしたのに対して、アロンソは何事もなく帰還。低速域でのトルクアップが雨の中でアロンソによりスムーズなドライビングをサポートしていたように思う。
いつ雨が降ってもおかしくないスパ・ウェザーの中行われるベルギーGP。2人のドライバーにとって、ホンダのアップデートはスタート以外にも大きなサポートになるかもしれない。
(Masahiro Owari)