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アルファタウリF1技術責任者エギントンが語る開発の裏側(1)ジェームズ・キーから引き継いだ特殊な任務

2021年2月17日

 話題の多かった2020年F1シーズンだが、ピエール・ガスリーとアルファタウリ・ホンダの初優勝は、中でも大きなハイライトだった。そのウイニングマシンAT01の開発責任者であるジョディ・エギントンに、レッドブルの姉妹チームのテクニカルディレクターとしての仕事、2021年型『AT02』の開発について聞いた(全2回)。


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 産業デザインを大学で専攻したエギントンは、1996年にティレルに入社する。しかしチームがBARに買収されるとF1を離れ、レース用ギヤボックスメーカーのXトラックに移籍。その後プロドライブに転職と、しばらくはF1と関係のない仕事を続けた。


 しかし2006年に、ティレル時代の上司だったマイク・ガスコインに呼ばれてジョーダンに加入した。チームはその後ミッドランド、スパイカー、フォース・インディアと目まぐるしくオーナーが変わるが、そんな中で運命的に出会ったのが、F1最年少のテクニカルディレクターとして注目を浴びていたジェームズ・キーだった。


 2014年、トロロッソで活躍していたキーに誘われ、イタリアへの移住を決意する。それまで車体デザインとレース現場でのエンジニアリング両方の経験を積んでいたエギントンは、キーが創設したばかりのパフォーマンス部門の責任者に抜擢された。


 当時のトロロッソはレッドブルのジュニアチーム的性格が強く、財政面だけでなく技術面でも本家に大きく依存していた。そんな中、キーは完全に独立したマシン開発を目論んでいた。

2017年F1プレシーズンテストでのダニール・クビアト、ジェームズ・キー、ジョディ・エギントン(トロロッソ)
2017年F1プレシーズンテストでのダニール・クビアト、ジェームズ・キー、ジョディ・エギントン(トロロッソ)

 しかし2016年にハースが新規参入したことで、事態は大きく変わる。彼らがフェラーリに大きく依存するやり方を見て、レッドブルのオーナー、ディートリッヒ・マテシッツが方針転換を決めたのだ。経費削減と効率化のために両チームが設計思想を共有し、レッドブルの車体パーツをトロロッソが極力使い回すことになった。


 となるとテクニカルディレクターであるキーの役割は、マシン開発者というより両チーム間の調停者に近い。挫折感を抱いたキーはトロロッソを去り、マクラーレンに可能性を求めた。右腕だったエギントンが後任に就いたのは、当然の流れだった。


 エギントンの現在の仕事は、他チームのテクニカルディレクターたちとはかなり違うものだ。まったくの白紙からのマシン設計は、許されていないからだ。もちろんアルファタウリも技術レギュレーション附則第6項で規定されているように、モノコックや前後ウイング、フロア、ディフューザー、ボディワークは自前で製作している(ボディワークは今季から、英国ベッドフォードにあるレッドブル所有の風洞で開発されるが)。


 それ以外のギヤボックスや足回りなどのパーツは、レッドブルから購入する。しかしそのパーツを組み合わせて一丁上がりというほど、F1マシンは簡単ではない。その複雑さは、むしろジグソーパズルをはめ合わせていく作業に近い。

ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
2020年F1第12戦ポルトガルGP ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)

「最初に行うのは、レッドブルから送られてくるパーツの確認だ」と、エギントンは語る。


「マシン開発は必然的に、それらに合わせたものになる。以前なら例えばリヤの足回りは、自分たちで設計できた。今はレッドブルのものを、そのまま使う。開発アプローチが、まったく違うということだ」


「マシン後部でいえば、ギヤボックスおよびカーボン製のケース、サスペンションアーム、衝撃吸収構造材などが、レッドブルとの共有パーツだ。一方でフロントサス、すべてのボディワークは内製している」


「ただし我々が受け取るこれらのパーツは、1年落ちのものだ。レッドブルの開発陣は、期限ギリギリまでマシンコンセプトの煮詰め作業にこだわる。そうするとパーツ制作にしわ寄せが来て、われわれの分まで作る余裕はなくなるからね。とはいえトランスミッションなどの重要パーツは、かなり早い時期に送ってもらえる。なのでそれほどの不都合は感じないね」
(パート2に続く)



この記事は f1i.com 提供の情報をもとに作成しています



(翻訳・まとめ 柴田久仁夫 / autosport web)


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