今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。F1第13戦シンガポールGPの週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。レース結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレーを重視して採点する。(最高点は星5つ☆☆☆☆☆+)
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☆ アレクサンダー・ロッシ
急きょ決定したデビュー戦、GP2レース経験があるとはいえ、相当厳しいと思われた。FP1から果敢に攻め、一時チームメイトに先行するもクラッシュ。その後は慎重に進めてレースではウィル・スティーブンスに先着、14位。ちなみにフェラーリパワーユニット勢は3チーム6台全車完走、マノーを含めて信頼性は高い。
☆☆ フェリペ・ナッセ
ますます激化する中間チームバトル、いま「もうひとつの見どころ」だ。10位1点をめぐるロータス、パストール・マルドナドとの格闘。しっかり相手の動きを見て追い、7コーナー手前で意表を突いた。ブロックの隙を与えぬオーバーテイクだった。新空力“Bバージョン”の実戦テスト、2台の10位と11位によって収集されたデータが鈴鹿以降きっと活かされる。
☆☆ カルロス・サインツJr.
モナコGP以来ようやく7戦ぶり入賞、あまりにもトラブル不運の連続だった彼。ギヤ変調など起きかけたが、長丁場を乗り切った。「壁タッチ」ミスを予選で犯したものの終わりよければダブル入賞。トロロッソが6位ロータスを9点差、射程内にとらえた。
☆☆☆ バルテリ・ボッタス
ウイリアムズFW37はダイナミック・ダウンフォース欠如が低中速コーナー脱出時に見られた。リヤタイヤをいかにかばうか、ボッタスはアクセルワークを工夫しながら予選7位、決勝5位。目立つ場面はなかったけれども初日FP2の17位(!)から、よく巻き返した。
☆☆☆ キミ・ライコネン
ゴール後さっさとマシンを降りて控室へ。「早く涼しいところで冷えたミネラルウォーター飲みたい」と言わんばかり。表彰台ではエディ・ジョーダンさんのインタビューの合間に、ひとりシャンパンがぶ飲み(3分の1くらいは飲んでいた)。初日FP2では絶好調の2位発進だっただけに、ベッテルの“ナンバー2”役になった悔しさを飲み干した。
☆☆☆ マックス・フェルスタッペン
フェラーリ対レッドブルで進む予選、Q2で5位には驚かされた。初コースに対して最初はゆっくり起動、10周すればマスターしてアタックモードに移行する。その際ミスしても反射的なリカバー能力を見せ、ここでも何度かうまくエスケープに逃げていた。タイムを出しきるだけではない技、それが17歳とは思えない。コース上の“レーシング年齢”は25歳くらいか? スタートできず周回遅れからの8位、人生過去最長レースをまとめあげた。
☆☆☆☆ セルジオ・ペレス
最終スティントをソフトで27周、性能劣化するタイヤで後続トロロッソ2台に応戦。各コーナーでスローイン&ファストアウトに徹し、直線の利を活かして7位を守りきった。ベルギーGPから5位〜6位〜7位、フォース・インディア69点、ランキング5位固めに、また貢献。
☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン
大失速メルセデス。原因はタイヤ内圧設定とキャンバー角度のコース最適化に苦しんだ、としか考えられない。ダイナミック・ライドハイト設定を変えるなど、ファクトリー側も総動員で対策。しかしポールポジション王、まさかの予選5位。この苦境にめげることなく第2スティントで4位につけるペースをキープ、そこでパワーユニット不調に陥った。ピット側の指示に冷静に応じたポイントリーダー、以前なら感情むき出しになったところ。彼は変わったと今季初リタイアに感じた。
☆☆☆☆ フェルナンド・アロンソ
縁石をまたぎ、壁には触れず、コーナー速度を保ち、現状のパワーユニット特性をすべて引き出す。有言実行「ここでは1コーナーから入賞圏内でやってみせる」、その挑戦もギヤボックストラブルで果たせず。過去7回すべてトップ4ゴールしてきた“夜戦の帝王”は静かにガレージ奥へ。以前の彼なら怒鳴り散らして大暴れする姿がルノー時代、何度もあった。アロンソも変わった。
☆☆☆☆☆ ダニエル・リカルド
セーフティカーのせいで負けたとは言うまい。わずかなチャンスが消えたのは確かでも直接の敗因ではなかった。スタート瞬間の蹴り出しはベスト、だが2速→3速ダッシュでフェラーリに離された。1コーナーまでの“200m短距離レース”で逃げられたのが残念無念。意地の最速ラップを52周目にマーク。モナコ、ハンガリーと今季これで3回目。なおベッテルは今年まだ一度もファステストをとっていない。
☆☆☆☆☆+ セバスチャン・ベッテル
チラッと映ったスロー・リプレイ、バイザー越しにベッテルが目を大きく見開き、ひとつひとつのコーナーに2時間集中しているのが伝わった。ここが得意なのは誰もが認めること。8戦4勝目はレースの筋を読み、2回のセーフティカー導入にも自在にペース対応し、食い下がるリカルドを完封した巧さが際立った。通算42勝目、アイルトン・セナを超えても彼自身はハミルトンほどの意識はなく、それよりミハエル・シューマッハーの1996年フェラーリ移籍後3勝に並べた悦びのほうが大きかったのだろう。通算51勝、アラン・プロストの記録まで、あと9つ──。