2024年F1第2戦サウジアラビアGP 角田裕毅(RB)

【】【角田裕毅を海外F1ライターが斬る:第1/2戦】首脳陣の思惑が交錯する重要なシーズン。まずは上々のスタートを切った

3月18日

 F1での4年目を迎えた角田裕毅がどう成長し、あるいはどこに課題があるのかを、F1ライター、エディ・エディントン氏が忌憚なく指摘していく。今回は、第1戦バーレーンGPと第2戦サウジアラビアGPに焦点を当てた。

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 最初の2戦で0ポイント。確かに素晴らしい結果には見えないが、特に驚くようなことではない。優勝経験のあるバルテリ・ボッタスや角田のチームメイトのダニエル・リカルドを含む9人がまだノーポイントだ。サウジアラビアの入賞の仕方で注目を浴びたニコ・ヒュルケンベルグを除けば、上位5チームのメンバーしかまだポイント獲得を果たしていない。

 そんななかで裕毅はバーレーンでもサウジアラビアでも一時ポイントを争う位置を走った。そして、厳しいドクター・マルコですら裕毅の予選での速さを認めている。

 確かに無線での問題はあった。今のF1では走行中の無線でのやりとりが自由に放送されるため、バーレーン終盤に不必要なチームオーダーを受けた際の怒りに満ちた反応も広く報道され、角田は生真面目なファンの一部から嫌われてしまった。だが無線について言えば、今から20年か30年前に今のテクノロジーが存在したなら、最も愛されているF1レジェンドの何人かは人気を得ていなかったはずだ。

 モーターレーシングにおいて重要なのはパフォーマンスだけだ。角田はそれをシーズン序盤から示し、リカルドとのチームメイト対決を2勝0敗でリードしている。クリスチャン・ホーナーは、リカルドを使ってセルジオ・ペレスにプレッシャーをかけて、来年はマックス・フェルスタッペンのチームメイトにリカルドを起用するというプランを立てているが、今のところうまくいっていないように見える。マルコはそもそもリカルドの復帰に賛成していなかったので、今頃、喜んでいるかもしれない。

2024年F1バーレーンテスト 角田裕毅とダニエル・リカルド(RB)

 ペレスは2戦連続で2位に入ったため、今のところレッドブルとしては今季末に彼を外さなければならない理由はないはずだ。確かにマックスとペレスは親しい間柄にはないし、マックスは今でも2022年のモナコGPと2023年のオーストリアの件について恨みを持っている。それでもふたりのパフォーマンス差が非常に大きいため、内部抗争はない。そうであれば、安定しているボートをわざわざ揺らす必要があるだろうか。

 一方で、今のレッドブル内には別の部分で大騒動が巻き起こっている。マックスがそれに飽き飽きしてメルセデスに移籍しても私は驚かない。そうなると、レッドブルはタイトルを獲得できるドライバーを探さなければならない。ペレスにはそれは無理だろう。フェラーリにルイス・ハミルトンとシャルル・ルクレール、メルセデスにマックスとジョージ・ラッセルがいるとすれば、レッドブルにも本物の才能を持つドライバーが必要だ。マルコとホーナーは、ジュニアプログラムの誰かをシーズン途中でRBに乗せて、力を試すという手段を取るかもしれない。

 さまざまな状況を考えると、裕毅がチームメイトより速さを発揮していることは、彼の将来にとって非常に重要なことだ。リアム・ローソンはグランプリウイークエンドには必ずレッドブルのガレージに来ている。マルコが常に代わりのドライバーを用意しているということであり、角田とリカルドのどちらかがローソンに取って代わられる可能性がある。マルコはそうして、誰が一番速いのか、レッドブルに昇格させるべきかどうかを評価するかもしれない。

 チームメイトを打ち負かすことは、すべてのドライバーにとって最優先事項である。角田が目指すべきはまさにそれだ。今のところ彼はやるべきことをやっている、ジェッダの予選Q2では、メルセデスのハミルトンやアストンマーティンのランス・ストロールよりも上位に入り、リカルドより0.5秒近く速かった。つまりプレッシャーにさらされているのはリカルドの方だろう。角田は、この調子で素晴らしい仕事を続けていくだけでいい。

角田裕毅(RB)
2024年F1第1戦バーレーンGP 角田裕毅(RB)

角田裕毅(RB)
2024年F1第2戦サウジアラビアGP 角田裕毅(RB)

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筆者エディ・エディントンについて

 エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。

 ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。

 しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。

 ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちがあるのはバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。



(Eddie Eddington)