【】連載「FACES」第6回:マックス・フェルスタッペン

3月1日

 その兆候はシーズンが始まってすぐ、事実として証明された。

「マックスは自分が何をすべきかということを、とてもよく理解していると思う。マレーシアでは非常に厳しいコンディションのなかで素晴らしいレースをした。ハンガリーの4位も見事だった。そして、スパのオーバーテイクは彼に何ができるかを示す、一番のハイライトだった」

 ベルギーGPの10周目、高速のブランシモンでアウトからフェリペ・ナッセを抜いたシーンはファンの大きな支持を得て、FIAの「アクション・オブ・ザ・イヤー」にも選ばれた。エンジン交換によるペナルティを背負い、18番グリッドからスタートして8位でゴールを果たしたレースだった。

「僕は自分にできること、できないことを理解できていると思う」と、まだ17歳だったドライバーは自信を持ってレースを振り返った。

「もし『ちょっとリスキーだな』と思ったら、自分を抑えることもできる。でも、あんなに後方からスタートした場合には、自分のコントロール下においてリスクを背負わなきゃいけない局面もあると思う。ただ後ろに留まっているだけだとポイントを獲ることもできないわけだから」

「ブランシモンのオーバーテイクは、ものすごく難しい動きだった。でも僕はスタブローの出口で、いい加速を得てスリップストリームを生かすことができたから、すべてのパワーを使って……アウト側に出るのは、とてもリスクが大きかったけど、幸いうまく切り抜けることができた」

 躊躇なくアクセルを踏み続け、安定したダウンフォースを得ることによって高いスピードでマシンの姿勢を保つ。行くと決めたときの彼のハートは強靭だ。でも……心に残ったのは、彼が自らの“武勲”を語るのと同じトーンで「それにね」と付け加えた、こんな言葉だった。

「ちゃんとスペースを残してくれたフェリペ(ナッセ)に対して、僕はすごく敬意を感じているんだ。誰かに抜かれるとき、スペースを残すのは簡単なことではないからね。とりわけ、あんな高速コーナーでは! もちろんオーバーテイクできたことは、とてもうれしかった。けれど、同じ年にデビューしたフェリペとフェアにいいバトルができたことにも僕はすごく感激していた」