【】浜島裕英のF1人事査定 第十五回査定「人材発掘」

10月2日

こちらのコラムはF1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラムです。

第十五回査定 「人材発掘」
 日本GP。F1速報、鈴鹿サーキットなどなどによる、イベント満載の週末でしたね。ご来場なさった皆様は、エンジョイなさいましたでしょうか? 海外のGPでは、ここまでしっかりとしたイベントが組み込まれていることは、あまりありませんからね。鈴鹿サーキットさん、偉いです!!! また、日本のファンの皆さんの観戦態度や、チームを歓迎する姿勢から、ドライバーそしてチームもイベントにかなり協力してくれていますよね。

 さて、今回もピレリはタイヤの最低空気圧を従来よりも上げて来たようですが、その影響はシンガポールほどではなく、限定的だったようです。鈴鹿では、中高速コーナーが連続し、リズミカルにコーナーを周っていく必要性があります。つまり発生するダウンフォースが大きいため、内圧が高くてもその影響が出にくかったのだと思います。低速サーキットで18psiを1psi上げるのと、ここ鈴鹿で20psiから1psi上げるのとでは、その割合からも影響度が少なくなることがお分かり頂けると思います。

 レースではマクラーレン・ホンダに期待した方も多かったでしょうが、前回のこのコラムでもお話ししたとおり、鈴鹿サーキットで期待するのは、時期尚早です。国際映像で、他車に抜かれるシーンを多数見せられて、ショックを受けた方もいらっしゃったことでしょう。しかし、フェルナンド・アロンソやジェンソン・バトンがその運転テクニックを駆使して防戦し、少しでも上位に留まろうと必死に努力していた姿には、感動すら覚えました。ヘアピンで、目いっぱいアウト・イン・アウトのラインを採って、エイペックスを外して大回りし、エンジン回転を落とさないようにしてスプーンへと向かう辺りは、流石ワールドチャンピオンと言う走りでした。そして、ポイントは獲れませんでしたが、この世界でも最も厳しい鈴鹿サーキットで2台が完走したことは、マクラーレン・ホンダにとって大きな収穫だったに違いありません。来年へ向けてのステップと捉えたいと思います。

 一方チャンピオン争いを繰り広げているメルセデスAMGのルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグに関して言えば、今回もハミルトンは、ヘアピンでのブレーキングミスでポールポジションを逃してしまい、鈴鹿でのポールポジション“未獲得”記録を更新しました。しかしレースに関しては、事前の他のカテゴリーのレースでもイン側の列のグリップが悪くなかったところを確認すると、とにかくスタートでは真っ直ぐ1コーナーへ向かい、ロズベルグとサイド・バイ・サイドで2コーナーまで進んで、S字進入ではしっかりと首位の座を確保しました。

 ロズベルグは引くのが一瞬遅れたため、フェラーリのセバスチャン・ベッテル、ウイリアムズのバルテリ・ボッタスにも抜かれてしまい、4位にまで落ちましたが、その後果敢な攻めでボッタスを、アンダーカットを駆使した戦略でベッテルを交わして2位の座を獲得し、チャンピオンシップに望みをつなぎました。メルセデスのクルマは前方の車に近づくと、ブレーキ温度が上がったり、エンジンの温度が上がったりするマシンです。このことを考慮すると、フェラーリはせっかくの2位の座をメルセデスのアンダーカット戦略で簡単に明け渡してしまったことになり、悔やまれる戦略となってしまったのではないでしょうか。

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 さて、今回特筆すべきことは、トロロッソの若いふたりのドライバーだったような気がします。この鈴鹿の特徴は、極端な話ですが、1コーナーからスプーン出口まで、ひとつのコーナーと言っても過言ではないサーキットなのです。1コーナーの進入を失敗すれば、2コーナーでS字へ向けての姿勢が取れなくなり、これが連鎖的に進んでしまいます。したがってこのサーキットでは、経験もさることながら、その運転技量が厳しく問われることになります。こういった状況で、金曜日の雨のフリー走行時、トロロッソのマックス・フェルスタッペンとカルロス・サインツJr.は、見事にトップタイムを叩き出して見せたのでした。

 シミュレーターでトレーニングを積んでいたとはいえ、フェルスタッペンは、昨年の日本GPのフリー走行で22周しただけですし、サインツJr.に至っては全くの初体験だったのです。このような才能あるドライバーを高い確率で乗せている、スクーデリア・トロ・ロッソのフランツ・トスト氏に、五段階評価で4を進呈したいと思います。トロロッソの前身である、ミナルディ時代も含めると、このチームからは、アレッサンドロ・ナニーニ、アレックス・ザナルディ、ミケーレ・アルボレート、ジャンカルロ・フィジケラ、片山右京、ヤルノ・トゥルーリ、中野信治、フェルナンド・アロンソ、マーク・ウェーバー、セバスチャン・ベッテル、ダニエル・リカルド、そしてダニール・クビアトと言った才能あるドライバーが輩出されているのです。

(浜島裕英)