【】今季GP2に参戦して活躍の松下信治ってどんなドライバー?

7月11日

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 今年からF1直下のGP2に参戦している松下信治は、オーストリアラウンドで3位表彰台を獲得しイギリスではマシントラブルでリタイアするまで2位を快走して優勝争いを繰り広げるなど、これまでの日本人ドライバーの中でも最も華々しい走りを見せています。彼はいったいどのようなドライバーなのでしょうか?

 現在21歳の松下は、2011年にSRS-F(鈴鹿レーシングスクール・フォーミュラ)を主席で卒業し、翌年はFCJ(フォーミュラ・チャレンジ・ジャパン)のチャンピオン、2013年からは全日本F3選手権に参戦し2年目で圧倒的速さを見せてチャンピオンを獲得。その活躍が認められて今年、ホンダがマクラーレンとともに展開している育成プログラムの一員としてGP2のシートに抜擢されました。

 開幕戦バーレーンではいきなり予選2位を獲得して度肝を抜きましたが、本人は「5位以内には入れると思っていました」とケロッとした様子。
「このシリーズというかこのタイヤは“普通”に走るのが一番難しいんです。自分が日本でF3とかに乗っていた感覚でいうところの“普通”に走るのが難しくて、普通に走れさえすれば良いところにいけるだろうと自分で思っていました」

 レース1では初体験のパドルクラッチでのスタートに失敗して17位まで後退したものの、果敢な追い上げで10位まで挽回して入賞。荒っぽいバトルが繰り広げられることで有名なGP2ですが、松下はそんな中でも動じず、対等に攻めていくうえにぶつかることもないのが、これまでの日本人ドライバーと違うところです。

「やっぱり激しさはありますね。みんな躊躇せずに飛び込んでくるし、クロスラインを取ろうとしても絶対にそれを殺してきますし、情け無用な感じです。でも上に行けばハイレベルなドライバーたちはバカなことはしないですし、“場所”次第ですよ」

 ヨーロッパでレースをするのは初めてで、ほとんどのサーキットが初体験という松下ですが(経験済みはテストで走ったバーレーンとアブダビのみ)、現在はフランスのパリに住んで、所属するARTチームのファクトリーにも頻繁に通っています。

「週に1〜2回はファクトリーに行って話をしていますね。シミュレーターでサーキットを習熟したり、フォーミュラ・ルノーなどの走行会に参加して事前にサーキットを学習したり。シルバーストンは雨だったし速度域も全然違うので、ほとんど未経験のようなものでしたけどね(笑)」

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 それでもコクピットの中では自信満々の松下ですが、普段の彼は大人しくて純朴な青年で、表彰台インタビューでも予選トップ3インタビューでも「僕の英語がつたなくてすいません」と率直にマイクで言ってしまうほど。

「ホームシックは全然ないですね。まぁ、寂しさがないって言ったら嘘になりますけどね、日本食が食べたいとか、愛犬に会いたいとかっていうのはちょっとあります(笑)。食事も自炊してるんで、まぁあんまり美味しくないわけですよ(苦笑)。でもレースに来たら普通のゴハンが食べられるし良いですね」

 気になるのは松下のF1デビュー。果たしてそのチャンスはあるのでしょうか? 今年の目標とF1への思いを聞くと、松下は次のように語ってくれました。

「結果で言えば、3勝、4勝は絶対にしたいです。レースの内容としては、今週末で自分たちには勝負できる速さがあることは分かりましたし、予選では絶対に5位以内に入って常に良いレースをしたいですね。そうすれば成長率も速いだろうし、コンスタントにトップ5にはいたいと思っています。F1にも乗りたいけど、それは僕がコンスタントにストフェル(・バンドールン、チームメイトでありマクラーレンのテストドライバーでもある)を上回るような走りをしていけば自然とそうなると思うし、全ては自分次第だと思っています。自分次第でどこにでも行けると思います」

 2016年からはF1に必要なスーパーライセンス取得のポイント制度が導入され、GP2以下のカテゴリーで一定の成績を残したドライバーにしか発給されなくなりますが、今季中ならば松下も全日本F3選手権チャンピオンの実績でスーパーライセンス取得が可能なので、フリー走行出走などのチャンスを掴み取ってF1デビューを果たしてもらいたいものです。