【】浜島裕英のF1人事査定 第十回査定「トラックポジション」

7月10日


第十回査定「トラックポジション」
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 イギリスGP。終わってみれば、メルセデスAMGのルイス・ハミルトンが優勝し、ニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)が2位、そしてセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が3位という、極めて平凡な結果となりましたが、久々に緊張の糸が途切れないレース展開でした。

 目を見張るようなウイリアムズのフェリペ・マッサとバルテリ・ボッタスの2台、そしてニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)のロケットスタートには、皆さんも驚いたことでしょう。後方の混乱で、1周目にセーフティカーが出動。マッサ、ハミルトン、ボッタス、ロズベルグの順で周回を重ねていましたが、3周目にそのセーフティカーが解除されると、2番手のハミルトンは、セーフティカーライン1を越えたところで、トップのマッサを果敢に攻めます。

 しかし、これは失敗。その代償として、3周目の最終コーナーで、ボッタスに2番手のポジションを奪われてしまいました。これで4周目の1コーナーは、マッサ、ボッタス、ハミルトンそしてロズベルグの順となったのでした。この時、メルセデスAMG陣営は、うろたえたことでしょうが、それ以上にウイリアムズのチーム内には、緊迫した空気が張りつめたことでしょうね。そしてこの4台は、ヒュルケンベルグが蓋をする形となった5番手以下を、1周約1秒弱のペースで引き離し始めたのでした。

 これが意味するところは、上位4台は、4台だけの戦略を基本的には考え、ピットイン後にトップ集団の後ろに付けるようにトラックポジションを考えればいい、ということ。ここシルバーストンは、縦列になってしまうと空力の影響を受けやすく、抜きにくいサーキットと化してしまいます。

 そのため、遅いクルマの後ろに戻らないようにする……この点に注意することは非常に重要になります。そういったこともあって、中団グループでは、14周目に5番手のヒュルケンベルグを抜きあぐねていたキミ・ライコネン(フェラーリ)がアンダーカットを狙ってピットインし、見事に成功します。

 これは、ピレリが最初のピットストップのタイミングとして想定していたラップ数23周よりも早い段階での行動ですが、前述した通り、膠着した状態からの脱却を積極的に狙ったものです。しかも、レースの終盤に雨が降る確率があったことから、タイヤのデグラデーションのリスクは多少負うが、妥当な戦略だったと言えます。

 さて、先頭集団では、ハミルトンがウイリアムズの2台を攻略するのに手こずっていたこともあって、20周目にピットイン。マッサに対してアンダーカットを仕掛けました。そして21周目、マッサは、カバーのためにピットインしますが、時すでに遅し、となったのです。

 3位ハミルトンがピットインする前の18周目の首位マッサとの差が1.294秒だったのに、両者のピットインが終わった21周目には、ハミルトンは逆転に成功した上、マッサに対して2.935秒差もつけたのでした。

 ピットインに掛かった時間は、ハミルトンが28.471秒、マッサが29.369秒と記録されていて、その差は0.952秒差。つまりハミルトンは、ピットアウト後に、ピットインせずに走っていたセルジオ・ペレス(フォース・インディア)の前に出ることができたため、十分な空間を得ることができたために猛ダッシュし、アンダーカットを成功させたということがお分かり頂けるでしょう。

 ウイリアムズ陣営は、レース終盤のタイヤの持ちに不安があったために、積極的なピットインの作戦を立てなかったものと思われますが、ハミルトンがピットインしたのを見て、結局翌周にはマッサをピットインさせています。ハミルトンのピットインは、チーム無線でバレバレでありましたし、アンダーカットを許してトラック上のポジションを失うことは、優勝できなくなることに直結していたわけですから……チームは警戒していたはずです。

 もちろん、今回のレースは終盤が雨絡みとなり、結果的にはウイリアムズの弱点が露呈してしまいました。前述した対策ができていたとしても、優勝は出来なかったでしょう。しかし、ハミルトンにアンダーカットされるのを、結局、指をくわえて見ている形になってしまいました。「それはないでしょう」、と思ってしまいます。

 したがって今回は、ウイリアムズの戦略担当に、五段階評価で2を進呈したいと思います。積極的な戦略で、メルセデスに一泡食わせてもらいたいものです。

以上

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