【】浜島裕英のF1人事査定 第九回査定:「勝利への執念」

6月25日


第九回査定:「勝利への執念」
こちらのコラムはF1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラムです。

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 オーストリアGP。スタート直後のキミ・ライコネン(フェラーリ)とフェルナンド・アロンソ(マクラーレン・ホンダ)のクラッシュには、肝を冷やした方も多かったことだろう。クルマのダメージがマクラーレン・ホンダに与えた影響は大きいようで、開発計画をさらに遅らせてしまう事態のようだが、兎にも角にも、両ドライバーが無事であって良かった、と思おうではないか。

 アロンソの言によれば、ライコネンは2コーナーを出て、5速に入ってもホイルスピンをしていた、とのこと。このために横方向のスタビリティを失い、クルマが左右に振れて、行き場を失ったアロンソのクルマと接触し、2台が絡みながらのクラッシュに発展してしまったのであろう。

 フェラーリの代表、マウリツィオ・アリバベーネ氏によれば、カナダGPのヘアピンでのスピンとは、関連性が無いとのことだ。真相は現時点では明らかにされていないが、カナダGPではピットアウト後のヘアピンで、今回はスタート直後の2コーナーと言うことで、何となくだが個人的には、エンジンのトルクマップがライコネンのアクセルコントロールと融合していないのではないかと疑ってしまった。

 問題点をきちんと解明し、次のステップへと繋げて行って欲しいものだ。さもないと、ウイリアムズにチャンピオンシップポイントで追いつかれないとも限らない。何しろ最近のフェラーリは、ちょっとしたトラブルが多すぎる。今回もセバスチャン・ベッテルの右後輪のホイールナットが上手く嵌合せず、表彰台を逃した。また、ライコネンとの予選でのコミュニケーションが悪く、あと約20秒早く彼をコースに入れていれば、Q1敗退という事態を招かなくても良かっただろうし、極論すれば、Q3に残っていれば、スタートでスーパーソフトを使用していたわけで、この事故も起きなかったかもしれないのだから。

 さて、話をレースに戻そう。

 実は、冒頭の事故が発生したとほぼ同時期に、3コーナーで今回のレースは決着を見ていた、と言えるだろう。フォーメーションラップで、スタートの悪さを訴えたメルセデスAMGのニコ・ロズベルグだったが、エンジニアはレーススタートまでにクラッチミートの調整を実施。スタートでの蹴り出しはよかったポールポジションのルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)がその後ホイールスピンすると、フォーメーションラップの時とは違って、抜群のスタートを決めたロズベルグが1コーナーを制し、2コーナーでも先頭を行く。

 スリップに入り、3コーナーでの逆転を狙ったハミルトンがアウト側に出て並ぼうとする時、この日のロズベルグはいつもとは違った。アウトにクルマを膨らませ、ブレーキングも目いっぱい遅らせ、ハミルトンの行く手を阻み、彼のトップへ返り咲くチャンスを見事に潰したのだった。セーフティカーが導入され、事故処理が完了した後の6周目セーフティカーライン1からレースは再開されるが、この直後にコントロールラインを通過した際、ロズベルグはすでにハミルトンに対して0.673秒のマージンを築いていた。次の7周目終了時点では、1.506秒。レース再開早々、DRS使用が許される遥か以前に、ハミルトンのDRS攻撃を封じてしまった。

 今回は、メルセデスAMGの優勝ドライバー、ニコ・ロズベルグ氏に、5段階評価で4を差し上げたいと思います。久々に見せたロズベルグの見事なレース運びに、ハミルトンも表彰台で納得の表情を見せていた。今後もあの集中力でハミルトンと戦ってほしいものです。ただし、Q3での失敗は、いただけなかった。がしかし、ポールを逃した悔しさを素直に認めていたのは、ポールへの、すなわち速さへの執念の表れだったと思われるので、良い一面だったと思う。またレースでのピットイン時にタイヤロックさせた件に関しては、ハミルトンのピットインの速さへの怯え、としか言いようがない。この部分の改善は必須だろう。したがって、この2点に関して、敢えて減点させて頂いた。

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