【】スペインGP編:前代未聞!?F1とGP2のねじれ現象

5月15日

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 最新アップデートされたマシン・パフォーマンスの実力がはっきり結果に表れたスペインGP。メルセデス/フェラーリ/ウイリアムズがトップ6を占め、現有戦力すべてを出しきった。7位レッドブルから16位マクラーレンまでは1周遅れ、17位マノーは3周遅れに。最速メルセデスの“5秒落ち”ペースで序盤17周目に早くもラップダウン。ほとんどTVに映らないマノーは悲しくなるほど遅かった……。

 GP2ポールシッターのストフェル・バンド―ンが金曜予選で1分29秒273をマーク。プラクティス1回の後に即予選という短時間走行ながら、19位マノーのウィル・スティーブンス1分31秒200を約2秒上回った。18位セルジオ・ペレスが1分28秒442、GP2マシンはフォースインディア・メルセデスに0.8秒差まで肉薄した。

 さらに衝撃的だったのはGP2予選25位ゾエル・アンバーグが1分31秒751、これは20位ロベルト・メリより速い(!)。つまりマノー勢はGP2スターティンググリッドの最下位、前代未聞というべき「F1/GP2ねじれ現象(?)」が起きたのだ。

 PUパワーもトルクも数値上圧倒的に優り、ダイナミックダウンフォースも格段にあるF1。この第5戦にはマノー以外すべてのチームが最新アップデート・アイテムを競って投入、それが注目されたスペインGPだったが……。

 マノーとGP2だけでなく最速を誇るメルセデスと比べてみよう。ニコ・ロズベルグのPPタイムは1分24秒681、バンド―ンとのギャップは“4.592秒”。これを大差とみるか僅差とみるか、いかがだろう。コストパフォーマンスから判断すれば明らかに僅差、F1メルセデスW06・PU106BにはGP2の10倍いや100倍も金がかかっているのだから。

 昨年に続き“1-2フィニッシュ”メルセデスの優勝タイムがちょっと気になった。14年ルイス・ハミルトンは1時間41分05秒155、今年ロズベルグは1時間41分12秒555。7秒4わずかに遅い。セーフティーカーが出なかったレースペースは直接比較でき、2年目PUスペインGPではその速さに“進化”はなかったと言える。

 さらに検証すると最速ラップは昨年セバスチャン・ベッテルが1分28秒918、今年ハミルトンは1分28秒270。予選PPタイム同様に速くなっている。1周単位で比べれば明確に15年F1パフォーマンス向上が分かるが、レースペースは僅かに遅かった。

 バルセロナに来ていたアラン・プロストが今のF1印象をこう語る。
「タイヤマネージメントは重要な要素でも、スタートしてすぐそればかりに集中しなければならないのは“レーシング”ではない。燃費管理も昔から大切なことだが(私はうまくやってきた)、今のレースはあまりに複雑でドライバーはそれにも集中しなければならない。頻繁にピットから指示される無線連絡もドライバーの自主性をスポイルするように聞こえてしまう……」

 頭脳派プロフェッサー・プロストの意見に同感だ。GP2マシンに5秒以内に肉薄されたF1、最高峰フォーミュラ・レースの威厳を保つにはどうすべきか。14日(木曜)に未来レギュレーションを検討する「F1ストラテジー・グループ会議」が開かれた。そこに参加できるのはFIA、FOMと6チーム、ドライバー出身者はいない。この構成メンバーでは政治面、経済面の論議が中心となり、互いの利害関係もそこに絡まる。どういった方向性が示されるのか、スポーツ性をより高める具体案がまとまればいいのだが……。

 なによりもまず求められることはF1らしい速さ、スタートからゴールまでそれがアピールされなくては醍醐味に欠ける。タイヤをセーブ、燃費もセーブ、バトルもセーブでは走るドライバーも楽しくないだろう。見ている方にもそれは伝わる。今年25回目のバルセロナ・スペインGPはあまり歓声も上がらず、今まででいちばん静かに感じた。