【】浜島裕英のF1人事査定
第1回:「ホンダの走行距離不足は想定内?」

3月9日


 へレス1回とバルセロナ2回、合計12日間のシーズンオフのテストが3月1日に終了し、各チーム初戦のメルボルンへ向けての最終準備に入った。

 テストのデータを分析してみると、メルセデスが一歩先行し、それをウイリアムズが追いかけるという構図は、昨シーズン後半と変わりがないようだ。しかし、バルセロナ8日間のベストタイムを見ると、ニコ・ロズベルグ、ルイス・ハミルトン、バルテリ・ボッタス、フェリペ・マッサに続いて、フェラーリのキミ・ライコネンとセバスチャン・ベッテルが入り、さらにフェラーリ製パワーユニット(PU)搭載チームであるザウバーのフェリペ・ナスルが来ているところが、昨年とは大きく異なっている点だ。
 しかも、周回数の合計では、ベッテル、ナスルのフェラーリPU搭載車、マックス・フェルスタッペン(トロロッソ)のルノー製PU搭載車がメルセデスPU搭載車のロズベルグとほぼ同じ周回数を記録しており、信頼度の向上を印象づけている。ここも、昨年の状況とは大違いだ。

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■バルセロナ合同テスト ベストタイムTOP10

1位 ロズベルグ
第1回バルセロナ:1'24.321 / 197周
第2回バルセロナ:1'22.792 / 254周
Total laps:451周
2位 ハミルトン
第1回バルセロナ:1'24.923 / 200周
第2回バルセロナ:1'23.022 / 124周
Total laps:324周
3位 ボッタス
第1回バルセロナ:1'25.345 / 178周
第2回バルセロナ:1'23.063 / 179周
Total laps:357周
4位 マッサ
第1回バルセロナ:1'24.672 / 143周
第2回バルセロナ:1'23.262 / 205周
Total laps:348周
5位 ライコネン
第1回バルセロナ:1'24.584 / 164周
第2回バルセロナ:1'23.276 / 216周
Total laps:380周
6位 ベッテル
第1回バルセロナ:1'26.312 / 181周
第2回バルセロナ:1'23.469 / 272周
Total laps:453周
7位 ナスル
第1回バルセロナ:1'24.956 / 152周
第2回バルセロナ:1'24.023 / 300周
Total laps:452周
8位 グロージャン
第1回バルセロナ:1'24.067 / 111周
第2回バルセロナ:1'24.200 / 191周
Total laps:302周
9位 サインツ
第1回バルセロナ:1'25.604 / 188周
第2回バルセロナ:1'24.191 / 218周
Total laps:406周
10位 エリクソン
第1回バルセロナ:1'26.340 / 166周
第2回バルセロナ:1'24.276 / 245周
Total laps:411周

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■バルセロナ合同テスト 総周回数TOP10

1位 ベッテル 453周
2位 ナスル 452周
3位 ロズベルグ 451周
4位 フェルスタッペン 447周
5位 エリクソン 411周
6位 サインツ 406周
7位 リカルド 402周
8位 ライコネン 380周
9位 クビアト 375周
10位 ボッタス 357周



 さて、我々が期待している、ホンダ製PU搭載のマクラーレンだが、昨年11月のアブダビテストでは、メインストレートを一度も通過することなく、数周しか走れないといった状況で、年が明けた第1回テストのへレスでもトラブル続き、そしてバルセロナの2回目のテストの2日目にやっと、1日で100周を超えることが出来たのだった。

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バルセロナ合同テスト 総周回数
ザウバー
第1回バルセロナテスト:318周
第2回バルセロナテスト:545周
Total laps:863
トロ・ロッソ
第1回バルセロナテスト:411周
第2回バルセロナテスト:442周
Total laps:853
フェラーリ
第1回バルセロナテスト:345周
第2回バルセロナテスト:488周
Total laps:833
メルセデス
第1回バルセロナテスト:446周
第2回バルセロナテスト:378周
Total laps:824
ウィリアムズ
第1回バルセロナテスト:407周
第2回バルセロナテスト:384周
Total laps:791
レッドブル
第1回バルセロナテスト:418周
第2回バルセロナテスト:359周
Total laps:777
ロータス
第1回バルセロナテスト:361周
第2回バルセロナテスト:367周
Total laps:728
フォース・インディア
第1回バルセロナテスト:223周
第2回バルセロナテスト:365周
Total laps:588
マクラーレン
第1回バルセロナテスト:124周
第2回バルセロナテスト:177周
Total laps:301


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 マクラーレンのような比較的資金が潤沢なチームの場合、冬のテスト、そして初戦のメルボルンへ向けて、テストでの周回数をある程度見込んで、テスト項目の量(空力パーツ数、各パーツの空力特性把握のためのセットアップ数、サスペンションのパーツ数、そのセットアップ数、そして2015年シーズンのタイヤ特性の把握などなど)を決め、周回数を割り当てて、いつその評価をして、その結果をファクトリーにフィードバックし、次のテスト用の改良パーツに繋げていくかといったプログラムが設定されているはず。
 それらは、レース前までに相当のボリュームがあったと容易に推測できる。

 ところが、である。バルセロナ8日間の上位4チームの走行量と比べると、マクラーレンのそれは、ざっくり言って1/3である。
 これは、チームにとってはクルマの開発遅れに繋がるわけで、大きな誤算だったと考えるのが妥当だろう(それでも、マクラーレンの中には、一連のホンダのトラブルは、“想定内”だった、とうそぶいている人がいるとか……)。

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 こういった車両開発の全体計画があることを把握し、テストを遅滞なく遂行させるのがサプライヤーとしての義務だと私は考えてきた。
 ところが、ホンダ陣営の責任者である新井康久氏は、“想定内”という言葉を繰り返し発し、パートナーであるマクラーレンに十分な走行距離を与えられなかったことへの言及がない。果たして、このことを理解することが出来ないのは、私だけだろうか。

 ということで、新井氏に対する現時点での評価は、五段階での1と考えます。

 しかし、このような状況でも、第1戦までに何とかして、レースウイークにはクルマを何事もなかったかのように走らせてしまうのがF1チームの凄いところ。したがって、ホンダに伝わる強烈な開発精神とマクラーレンのメルボルンに関する膨大な蓄積データを持ってすれば、この遅れを挽回してくれるものと信じてやみません。