2020年F1第4戦イギリスGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

【】レッドブル・ホンダ分析:最後まで走りきる確信を持てずピットイン。5.8秒及ばずも、狙い通りのファステスト記録

8月3日

 レッドブル・ホンダにとって、2週間前の第3戦ハンガリーGPではスタート前にドラマがあったが、今回の第4戦イギリスGPではレース終盤にドラマが待っていた。

 残り3周、2番手を走行していたバルテリ・ボッタス(メルセデス)が左フロントタイヤをパンクさせたのである。すると、レッドブル・ホンダ陣営は、3番手を走行していたマックス・フェルスタッペンをピットインさせる決断を下した。

 その1周前の段階での上位陣の位置関係を整理しよう。

49周目終了時点
首位 ハミルトン
(8.3秒差)
2番手 ボッタス
(5.7秒差)
3番手 フェルスタッペン
(28.9秒差)
4番手 ルクレール

 残り4周の段階で、フェルスタッペンとトップを走るルイス・ハミルトン(メルセデス)との差は14秒あり、後続のシャルル・ルクレール(フェラーリ)との差が約29秒もあったので、レッドブル・ホンダ陣営はボッタスのパンクによって得た2番手の座をキープしつつ、ファステストラップを狙いにいったわけだ。

 フェルスタッペンがピットインして、ソフトタイヤに履き替えてピットアウトしたのが残り2周の51周目。フェルスタッペンはこのアウトラップでしっかりとタイヤを温めていた。この時点での上位陣の位置関係はこうだった。

51周目終了時点
首位 ハミルトン
(34.2秒差)
2番手 フェルスタッペン
(7.1秒差)
3番手 ルクレール

 そして、レースはいよいよファイナルラップ(52周目)へ突入する。ここで、もうひとつのドラマが待っていた。トップを走行していたハミルトンがボッタスと同様、左フロントタイヤをパンクさせたのである。

ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2020年F1第4戦イギリスGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

 ハミルトンがタイヤトラブルに見舞われたのは、セクター2の途中にある9コーナー。シルバーストンには全部で18のコーナーがあることからもわかるように、コースの約半分の地点だ。パンクが発生した時点で、ハミルトンとフェルスタッペンの差は、約32秒。しかし、フェルスタッペンは1分27秒097というファステストラップを叩き出して猛追。ふたりの差はコーナーごとに秒単位で縮まっていったが、チェッカーフラッグまでにフェルスタッペンはハミルトンを仕留めることはできなかった。

 その差は5.856秒だった。

 レース後、チーム代表のクリスチャン・ホーナーにも、最後のピットストップについての質問が相次いだ。なぜなら、ファステストラップを狙わずにあのまま走行していれば、逆転優勝は確実だったからだ。

 確かに、49周目終了時点でトップのハミルトンと3番手のフェルスタッペンの差は約14秒。3輪走行を強いられたハミルトンの52周目(最終周)のラップタイムは1分55秒484。もし、フェルスタッペンがピットインする前のペースである1分29秒台で走り続けていれば、フェルスタッペンのほうが約12秒早くフィニッシュラインを通過していた計算となる。

 しかし、ホーナーは「チームが下した戦略に後悔はしていない」と断言し、その理由をこう続けた。

「レース終盤にかけて、マックスのタイヤはあまり良い状態ではなくなっていた。そこに、ボッタスのパンクというアクシデントが起きた。われわれはマックスのタイヤがチェッカーフラッグまで走りきれる保証はないと判断し、ピットインさせることにした」

 フェルスタッペンもこの日のレースを「幸運と不運のレースだった」と振り返った。幸運とはメルセデス勢がパンクして2位が転がり込み、不運がピットストップしたために逆転優勝できなかったという意味ではない。フェルスタッペンが言う不運とは「メルセデス勢がパンクに見舞われたこと」で、幸運とは「最後のピットストップでパンクに見舞われなかったこと」だった。

2020年F1第4戦イギリスGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が2位獲得
2020年F1第4戦イギリスGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が2位獲得

2020年F1第4戦イギリスGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が2位獲得
2020年F1第4戦イギリスGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が2位獲得



(Masahiro Owari)