BWTレーシングポイントの2020年型F1マシン『RP19』

“ピンク・メルセデス”はレッドブルの要素も取り入れた台風の目。マクラーレンは余裕残しの可能性/2020F1合同テスト総括(5)

3月10日

 スペイン・バルセロナで行われた2回のプレシーズンテストを終え、いよいよ開幕まで秒読み段階に入った2020年のF1。計6日間のプレシーズンテストでは各チームの勢力図もおぼろげながら見えてきた。今回はシリーズに参戦する10チームからテストで気になったチームを複数ピックアップし、テストの結果を踏まえながらシーズンの展望を予測する。連載最終回は“ピンク・メルセデス”ことBWTレーシングポイントを中心に残る6チームをまとめてふり返る。

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 今年のF1新車テスト期間中には、しきりと“ピンク・メルセデス”という言葉が飛び交った。スポンサーカラーのピンクをまとうBWTレーシングポイントの新車『RP20』が、前年型までとはノーズデザインを一新。先端が円を描くような、メルセデスF1の手法に酷似したものとなっていたからだ。

 そもそも旧フォースインディア時代から、このチームの空力処理にはメルセデスの影響を強く受けるような面がみられ、今年はとうとうクルマの“顔”となるノーズにまで踏み込んだ形だ。

BWTレーシングポイント『RP19』はフロントノーズの形状などが2019年のメルセデスF1と酷似していることから“ピンク・メルセデス”とも表現される
BWTレーシングポイント『RP19』はフロントノーズの形状などが2019年のメルセデスF1と酷似していることから“ピンク・メルセデス”とも表現される

 ただし前年途中からはサイドポンツーンの側面処理はレッドブルのような膨らみを持たせる手法を採り入れ、単なるチャンピオンチームのコピーではなく、“いいとこどり”のような形に新車は仕上げられた。

 そしてピンク・メルセデスが話題となったのは、そうした外観的なインパクトからだけではなく、新車がテスト期間を通じて好ペースを維持していたからだ。中団の“台風の目”として、マークしておくべき存在となる。

 1周の速さでは、混戦とみられる中団勢のなかで、ルノーの新車『R.S.20』が期間中の最速をマークした。最終日にダニエル・リカルドが刻んだタイムは、同日のフェラーリをも抑えるメルセデスとレッドブルに次ぐ3番手だ。

 前年は自社パワーユニット(PU)のカスタマーユーザーであるマクラーレンに選手権順位で後れをとる屈辱を味わい、今年は現行の技術規定が最後となる1年にもかかわらず、新車のデザインには大きく変化を加えてきた。

 マクラーレンは2021年からのメルセデスPU切り換えを決定済みで、カスタマーを失うという自動車メーカーとしては追い込まれた状況に、ワークスチームはどんな意地を見せるのか。

マクラーレンの2020年型F1マシン『MCL35』
マクラーレンの2020年型F1マシン『MCL35』

 そのマクラーレンは続いていた不振を前年で脱し、コンストラクターズランキングを4位まで急浮上させた。獲得ポイント的にも5位以下にはかなりの差をつけ、ひとつ突き抜けた状況となった。

 新車の『MCL35』も前年型の成功に甘んじることなく、さらに空力的な攻めを貫く。ただ、テスト期間中に際立ったタイムを残すことはなかった。これを余裕残しとみるのか、また失敗作に立ち戻ったかは、現時点では評価は下し難い。

 アルファロメオは新車『C39』が、全6日間の日程中で2度も当日のトップタイムをマークしている。タイムシートだけを見れば。ど派手な活躍ぶりだが、うち1日のトップだったリザーブドライバーのロバート・クビサは「当てにはならない」と楽観的な評価を拒否する姿勢だ。

 実際その当日に各チームがどんなテストプログラムに臨んでいたのか、これは外部からではうかがい知れないものがある。

 ハースは前年、F1参入以来最低となるコンストラクターズランキング9位に沈んだ。新車『VF-20』はもうおなじみとなった包括的技術提携を結ぶフェラーリ前年型と作風の相似がみられるが、テスト期間を通じて陣営のムードが上がることはなかった。

 初回テストの3日目にはクルマに起因するとみられる不可解なパンクからのクラッシュもあり、オーナーからは今年限りのF1撤退をほのめかすような発言も出た。

 アルファロメオもそうだが、供給を受けるフェラーリPUが今年どんなパフォーマンスレベルにあるのかにも、一抹の不安が残る。

ウイリアムズの2020年型F1マシン『FW43』
ウイリアムズの2020年型F1マシン『FW43』

 2年連続のコンストラクターズ最下位に沈む名門ウイリアムズには、今年は復活の気配だ。

 ウイリアムズの新車『FW43』は期間を通じ他の中団勢と引けをとらないペースを維持しており、過去2年のような1台だけが引き離された状態ではない。前年はルーキーシーズンを無得点で終えることになったジョージ・ラッセルも、「今年は闘える」と新車への自信をにじませる。

 いよいよ開幕の号砲を迎えるまで、時間はあとわずかだ。



(Shin Yasui)