2019年シーズンの前半戦で2勝を挙げたマックス・フェルスタッペン

【】ライバル2強に挑むレッドブル・ホンダ。勝負のカギはパワーが重要なセクター2攻略。雨がらみになれば番狂わせも【今宮純のF1日本GP鈴鹿プレビュー】

10月8日

 例年、鈴鹿戦ではメルセデスが圧倒的な強さを発揮していたものの、第13戦ベルギーGP以降のフェラーリも速さを増してきている。さらにレッドブル・ホンダは前戦ロシアGPでPU交換によるグリッドペナルティを消化し、日本GP戦に向けて準備万端。ホンダ製パワーユニットのスペック4は鈴鹿で性能を発揮できるだろうか。F1ジャーナリストの今宮純氏がF1第17戦日本GP鈴鹿の見どころを解説する。

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『鈴鹿王』メルセデス――。この5年間、ポールポジションから勝利を連続して奪い、そしてダブルタイトル制覇に向け邁進していった。日本GPプレビューのヘッドラインは毎年「絶対本命メルセデス」だった。そしてメルセデスは本命としての力強いレースをまっとうしてきた。

 すでに今年もハミルトンはドライバーズV6確定ゾーンだ。2位ボッタスを73点、3位ルクレールを107点、4位フェルスタッペンを110点リード。5位ベッテルは前戦時点で128点離され事実上、“自力V”の可能性はほぼ消滅(日本GPを含め残り5戦・満点=130点)。前戦ロシアGPで彼のリタイアにはそういう重い意味があった。

 まず『鈴鹿王』たるメルセデスからフォーカス。コンストラクターズV6決定条件は1-2フィニッシュ、第16戦ロシアGPにつづき今季9度目を達成できたら2016年と同様に鈴鹿で戴冠だ。しかしそれはかなり高い現実目標になってきた。

 昨年の日本GP予選でセクター1はボッタス、2はハミルトン最速、3だけはフェラーリのキミ・ライコネンに及ばなかったもののハミルトンPP、ボッタス2番手を確保。セクタータイムだけでなくセクタースピードも最速で、コーナーとストレートのダウンフォース&ドラッグの“最適解設定”に仕上げられていた。だから強かった。

 しかしロシアGPまでの時点で、メルセデスは低速コーナーが抜群でも中高速コーナーでライバル2強を引き離す強みが薄れた。そこがとても気になった。今週、「小規模アップデートを準備中」と言う彼らは目に見えないような細かな“スズカ・スペシャル”で新武装してくるのか……。

 おそらくそれはハミルトンがリクエストしたものだろう。昨年セクター1でボッタスに劣った彼はよりシャープな回答性を求め、ストレートでいま最速のフェラーリに対抗するより、スプーンなど中速コーナーへの合わせこみを望んだに違いない(そこで昨年フェラーリは俊敏性を示していた)。

 ハミルトン自身の鈴鹿ベストタイムは、17年の1分27秒230。今週ドライ条件であるなら<1分26秒台前半>がターゲットタイムと確信していたのだが、台風がらみの天候変化がきがかりに……。

■フェラーリは対メルセデスだけでなく、チームメイトバトルにも注目


2019年F1第16戦ロシアGP セバスチャン・ベッテルとシャルル・ルクレール(フェラーリ)
2019年F1第16戦ロシアGP セバスチャン・ベッテルとシャルル・ルクレール(フェラーリ)

 いっぽうのフェラーリとしては東西ストレート・エリアでどれだけ“セーブタイム“を見いだせるか。それはスプーンとシケイン出口のシャシー・トラクションにかかってくる。ロシアGP決勝では最終セクションで高められず、ルクレールの加速力ではメルセデス相手に逆転できず3位だった。PUアドバンテージを最大活用するにはフェラーリSF90のセットアップがポイント、それがしっかりできるかどうか……。

 ベッテル対ルクレール、信頼関係などよりふたりの鈴鹿セットアップが気になる。ここで勝ちも負けも知っているベッテルは2年目新鋭シャルルよりはるかに知見も知識が豊富。オーバードライブを戒めねばここは、モナコみたいにコース脇に刺さることになる。ザウバーで昨年健闘したルクレールだが4勝経験あるベッテルとの“対決”は、メルセデスふたりのそれよりはるかに興味がある。個人タイトルには無縁なふたり、この鈴鹿で速さ比べだ。

 おそらく日曜・決勝には久々に10万人以上が詰めかけるだろう。レッドブル・ホンダとフェルスタッペンへの期待度が、マクラーレン・ホンダとアロンソのころとは違うからだ。

■ホンダPU回生パワーが重要となる鈴鹿のセクター2


2018年F1日本GP マックス・フェルスタッペン
2018年F1日本GP マックス・フェルスタッペン

 焦点をしぼりこむなら2コーナーになるだろう。フェルスタペンはレッドブルRB15シャシーのクイック反応とホンダPUのレスポンス特性を求め、そこを起点にセクター1のS字からデグナーまで7コーナーを“一筆書き”で行きたい。このセクターでどこまで2強に挑めるかにかかっている。ヘアピン立ち上がりからのセクター2は昔からパワー勝負、ホンダPU回生パワーにかかるエリアとなる。昨年フェラーリを抑え予選3番手のフェルスタッペンは、この後半2セクターでルノーPUが応えてくれないのを知った。それをいまホンダ側に要求するのは明らか、金曜から徹底したスペック4のキャリブレーション作業が進められる。

 ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターはロシアGP後も今週明けまでイギリスに居てようやく帰国。「鈴鹿でどこまでいけるか、最善を尽くすしかありませんね」と言うくらい、すべての準備に没頭してきた。詳細なレッドブルとホンダの“鈴鹿作戦”は機密であり語らずとも、彼から最善を尽くすという文言をじかに聞いたのは長年のつきあい(F1〜インディ)で初めてのことだ。ホンダメンバー総員の健闘を祈る――。

 ここまで書いてきたら、今週の天気予報は雨がらみ確率が高まってきた。18年FP3ではハミルトン、17年FP2もハミルトンがトップ、ウエットセッションに強い彼とメルセデスチームだが分からくなってきた。

 金・土曜フリー走行が雨がらみになったあと、日曜決勝が一転して青空になったとき、「鈴鹿・日本GP伝説」はいくつも生まれている。

※編集部注:10月8日19:00時点の鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)の天気予報は、以下の通り。
 今後の台風の状況によって変わる可能性があります。

・10月11日(金)曇のち雨 降水確率:60%
・10月12日(土)曇時々雨 降水確率:70%
・10月13日(日)曇一時雨 降水確率:60%



(Jun Imamiya)