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【】【F1バーレーンGPの焦点】初表彰台は悔しさとほろ苦い微かな安堵の味──。驚くほど成熟した感覚と思考を備えたルクレール

4月3日

 初優勝は目の前。ゴールまであと12周。快調に走っていたシャルル・ルクレールのフェラーリが突然、パワーを失った。

「これもレース。モータースポーツの一部だ」

 大きな落胆のなか、自らの感情に呑み込まれることなく、彼はこんなふうに“賢者の哲学”を口にした。

 機械を使うスポーツの宿命だと分かっていても、本人の他に誰が「レースでは起こり得ること」などと表現できただろう?

 それくらい、バーレーンのルクレールは完璧に仕事をこなしていた。眩しいくらい、速かった。ルイス・ハミルトンが何度も言ったように“真に勝利に値する”圧倒的なレースを戦った。

 トラブルで勝利を失ったことは、ハミルトンだって何度もある。自らの不運が誰かの幸運に働くのが当たり前のスポーツなのだ。でも、馬力を失ったフェラーリを抜くのはいい気分ではなかった。「他には何もできなかったから」と、小さく手を上げて精一杯の敬意を送りながら、ルクレールの横を通過した。

 トラブルが発生した瞬間には当然、落胆に襲われた。しかしすぐに自らの気持ちを立て直し、ダメージを抑えるための多くの操作に取りかからなくてはならなかった。勝利は失っても、レースはまだ続いているのだから。

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 そんな気持ちの集中が途絶えたのか、表彰台で英国国歌が流れると、ルクレールは感情を抑え込もうとするように下を向き、眉のあたりを抑えて表情を隠した。初めての表彰台は、悔しさと、ほろ苦い微かな安堵の味──。

「F1での初表彰台なんだから、トラブルを抱えても3位でゴールできたんだから、満足しなきゃいけないね」

 2017年、モナコGPのF2レースでトップを走りながらトラブルでリタイアした時のほうが辛かったと説明した(病床の父に、地元勝利を届けることができなかったレースだ)。