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【F速プレミアム】ライコネン観察日記:速さを取り戻したライコネンに足りないものは、あともう少しの運

4月25日

 長年ライコネンの「番記者」を務めるフィンランド人ジャーナリストのヘイキ・クルタ氏が見た、アイスマンの言動をお送りするF1速報web限定連載。序盤3戦で力強い走りを見せているライコネン。しかし、タイトル争いに絡むには少し運が必要か…

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 キミ・ライコネンの予選での走りに、かつてのような鋭さがないというのは、もう何年か前から言われてきたことだ。だが、そんな見方は、今季の序盤戦で見事に払拭された!

 われらがアイスマンが3戦連続でフロントロウに並んだのは、2005年以来のことだ。そして、中国ではついにフロントロウスタートの回数がミカ・ハッキネンを抜き、歴代フィンランド人ドライバーの中で1位になった。

 ハッキネンの記録39回に対して、ライコネンは40回に達したのだ。さらに、昨年のマレーシアでのフロントロウを加えると、キミの記録は41回になる。あのレースで彼は最前列グリッドを獲得しながら、レコノサンスラップ中にトラブルに見舞われて、スタートに参加できなかった。

 今季序盤3戦でのライコネンのドライビングは、たいへん力強いものだった。私はその件について、彼のフィジオであるマーク・アーナルと話し合い、実際、彼の走りは11年前にフェラーリで選手権タイトルを勝ち取った時と何ら変わらない、という結論に達した。

 ただ、例によってキミ自身は、そうした褒め言葉にも一切関心を示さない。彼にとって大事なのは、結果だけなのだ。

「まあ、いくらドライビングが良くても、ポイントにつながっていないからね。そして、ポイント以外には何の意味もない。僕はレースで勝ち、タイトルを争うためにここにいる。これまでのところ、僕の望みどおりの結果とは言えない」と、ライコネンは述べた。

 これまで彼は、運について語ることにも一切興味を示してこなかった。しかし、今回ばかりは、あと少しだけ運に恵まれれば、選手権争いでのポジションもずいぶん違っていたかもしれないと認めた。

「オーストラリアでは勝てそうな状況だったのに、バーチャルセーフティカーのタイミングで、チームメイトの方にツキがあった。逆に中国では、僕の方がセーフティカーに関する運には恵まれて、先頭集団に追いつくことができた。言うまでもなく、長いシーズンの間には、ポイントを獲れるかどうかが運に左右されてしまうことが何度かある」

 今年の彼は、身体的にもとても良い状態にあるという。フィジオのアーナルは、こう語っている。

「一昨年のオフに、キミのシーズンに向けての準備の内容を少し変えたんだ。そして、昨年はキャリアを通じて初めて、一日も体調を崩さずにシーズンを乗り切った。だから、今年も同じやり方を続けている。キミはいつもトレーニングに前向きの姿勢を保っているし、健康上の問題がなければ、ドライビングでも実力を存分に発揮できるからね」

 また、今年のフェラーリSF71Hも、ライコネンのドライビングスタイルにとても良く合っている。彼自身の説明によると、自分のスタイル合わせるために、何か特別なことをしてもらったわけではないらしい。

「クルマは年々改良されてきている。だけど、それは僕だけのために、特別な対策をしてもらったという意味ではない。プレシーズンテストの時から、僕はこのクルマのフィーリングがすごくいいと感じていた。シーズンが開幕してからも、そのおかげでずいぶん助かっている。基本的なセットアップがしっかりしていて、どうすべきか悩みながら走り始める必要がないからだ」

 序盤の3戦で2度ポディウムに上がったライコネンが、タイトル争いに加わっていくために必要なのは、とにかくまず1勝をあげることだ。彼もそれは十分に承知している。

「もちろん、いつも言うように、僕はいつだってベストを尽くし、レースで勝ちたいと考えて週末に臨んでいるよ」

(Text : Heikki Kulta / Translation:Kenji Mizugaki)