2018年F1新車分析:ハースVF-18

【】【F1新車分析】ハースVF-18:昨年型フェラーリに類似点も、モノコック部分はオリジナルで勝負

2月20日

 F1iのテクニカルエキスパート、ニコラ・カルパンチエが各チームの2018年F1ニューマシンを分析。今年から導入されるコクピット保護システム『ハロ』や規制されたシャークフィンなど、気になる部分をピックアップ。

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 全10チームのトップを切って、ニューマシンVF-18を発表したハース。しかし発表された画像やイラストでは肝心なパーツが単純化されたり隠されたりしており、すべてが明らかにされたわけではないようだ。一見すると前年型にかなり近いが、一方でサイドポッドを始め、去年のフェラーリを参考にした部分も随所に見受けられる。

・濃厚な『デジャビュ』感
 第一印象で最も目を引くのが、サイドポッドの空気取り入れ口の形状だろう。明らかに昨年のフェラーリSF70のそれを、継承したものだからだ。モノコックのかなり後方に、垂直に位置しており、正面から見るとアルファベットの『C』型をしたデフレクターが前方に取り付けられている。これはカーボン製のサイドインパクトストラクチャーを、包み込む役割も果たしている。


2018年ハースVF-18


2017年フェラーリSF70


2018年ハースVF-18


2017年フェラーリSF70

 FIAの技術規約で装着が義務づけられているサイドインパクトストラクチャーは通常、空気取り入れ口の上に付くのが普通だ。しかし昨年型のフェラーリとハースのニューマシンでは、やや下方に位置している。その結果、開口部のデザインの自由度が広がり、サイドポッド下部からマシン後部への空気の流れがいっそうスムーズになっている。

・モノコックはハースオリジナル
 ハースがマラネロの風洞を使用し、さらにいくつかのパーツを購入しているのは誰もが知るところだ。しかしF1スポーツ規約別項6条に従うなら、モノコックやサバイバルセル、ノーズ、フロア、ディフューザー、カウル等は自前で開発しなければならない。ハースの場合、これらのパーツはイタリアのダラーラ社が委託製作している。

・ハロは整流より抵抗減少
 ハースVF-18は『ハロ』も特徴的だ。空気の整流効果を狙うデフレクター的な役割ではなく、できるだけ空気抵抗を減らす流線型デザインにしているのだ。

 レギュレーションでは最大幅2cmまでの空力パーツを、ハロに取り付けてもいいことになっている。乱流によるエンジンへの吸気効率低下を防ぐ措置で、昨年のアブダビテストではザウバーがこの解決法を試していた。 一方でマクラーレンとトロロッソ・ホンダは、違うやり方をトライした。
 VF-18ではハロからできるだけ遠ざけようとするかのように、ミラーの支柱がかなり長くなっている。より良好な視界確保の目的以外に、ハロによって生じる乱流を少しでも整えようという意図もありそうだ。

・シャークフィンは死なず?
 昨年までのシャークフィンは消滅するかと思われたが、かなり控えめな形で生き残っている。技術規約3条5の1は寸法を大幅に規制しただけで、シャークフィン自体を完全に禁止しているわけではないからである。その結果、エンジンカウルの曲線に沿って、マシンリヤへとなだらかに下がって行くフィンとなっている。

 これは昨年のアメリカGPで、ザウバーがテストしたものと非常に似ている。

・エアインテークはメルセデスとフェラーリ風
 VF-18のエアインテークは、3分割されている。真ん中の部分から取り入れた空気はエンジン燃焼室とインタークーラーへ。両脇の二つはERSを冷却するラジエターへと流れ込む。これはメルセデスがすでに2016年から採用し、フェラーリも昨年のマレーシアGPで投入した形状だ。
 ERSの冷却効率向上は信頼性向上と、何よりもエンジンパワーが増大した場合に欠かせない対策だ。エンジンパワーが増せば、エネルギー回生効率もいっそう増す。両者のパフォーマンス増大に、冷却性能の向上は絶対に欠かせないのである。

・Tウィングも死なず?
 注意深い読者はリヤウィングの支柱根元に、バーのような細いウィングが渡されているのに気づいたことだろう。去年のザウバーC36、WiFW40にも見られたミニTウィングを彷彿する、原始的な形状のウィング。マシン後部、特にリヤウィング下部の空気の流れを整え、ディフューザー効果の最適化を狙っている。

 昨年までのTウィング禁止は、あくまでエンジンカウル上の三角形ゾーンが対象部分だった。一方でその下部に関しては言及されておらず、Tウィングほどの効果は期待できないまでも、小さなウィングなら合法的に装着できるのである。

・肝は継続性
 マシン前部に関しては、それほどの変化は認められない。弱点をできるだけ潰しつつ、2017年マシンを発展させることが開発の肝だったからだ。

「レギュレーションに大きな変化はなく、なのでVF-18は昨年型の発展モデルと言っていい」と、ギュンター・シュタイナー代表も言っている。

「2017年マシンの素性は良かった。しかしわれわれがその性能を、いつも100%発揮し切れたとは言いがたい。今年はそこを、まず改善させたい。そうすればバラストの搭載自由度が増えることで、セッティングがやりやすくなるからね」

 チーム発足初年度から、チームはレースによって極端にパフォーマンスが上下することに苦しんできた。その点バラストをいっそう自由に積めることがレース週末のパフォーマンス向上に寄与するのは、メルセデスより軽かったフェラーリの去年の活躍が証明している。

 マシン前部ではフロントウィング外側のアーチと呼ばれる部分(黄色い矢印)の、構成パーツがより増えたことが主な変更点だろうか。垂直デフレクター(赤い矢印)も同様に、より複雑な構成になっている。

 昨年型のフェラーリとの類似点をさらに挙げれば、ノーズ下のターニングベインである。ただし2枚目のパーツ(青い部分)はより薄く、隆起部が前に突き出たような構造になっている。

この記事は f1i.com 提供の情報をもとに作成しています

(Translation:Kunio Shibata)