【】【F1アブダビGPの焦点】レッドブル、トロロッソとの信頼関係、感情の共有こそが技術とともにホンダが成し遂げた2019年シーズンの功績

12月4日

 チームもドライバーも、しばしば「ホンダは約束を守る」と表現する。浅木COOは「ホンダは嘘をつかないって言われるんだよなぁ」と笑う。浅木も田辺も、第2期F1を経験したベテラン。実直な技術者たちは派手な言動を好まず、技術に対してあくまで正直だ。そんな姿勢こそが、F1の歴史にその名を刻んできたHONDAのイメージと一致する。

 ガスリーは「ホンダはスーパーフォーミュラ時代からずっと僕をサポートしてくれている」と強調する。「ホンダのドライバーであることがどれだけ大きな誇りか、日本に来るとものすごく実感できる」と母国のプレスにもアピールする。慌ただしいスケジュールで組まれた工場訪問も、彼にとっては大きく誇れる大切な仕事だ。

「今シーズンのホンダは、驚くほど進化した。メルセデスやフェラーリに追いついていない部分もあるけれど、彼らを追い越すため大きな力を注ぎ込み、誰もがハードワークをこなしている。僕らはその、急激な進歩の過程を体感し共有できる。こんなに素晴らしいことはないよ!」

XPB Images

「F1の歴史には興味がない」「ホンダが過去に素晴らしい成績を残したことは知っているけれど」「僕が知ってるのは父が車体プロジェクトに協力していたことくらい」と話していたフェルスタッペンが、サンパウロの表彰台ではブラジルのファンからフェルスタッペン・コールを受け、涙を浮かべた。2位で隣に並んだガスリーは「最後はホンダ・エンジンにすべてを託した」と、ハミルトンとの攻防を振り返った。

 ともにレッドブルの育成ドライバー、シーズン前半にはチームメイトだったふたりが、力強いハグを交わす。シャンパンファイトではフェルスタッペンが真っ先にボトルを取り、ガスリーに大量のシャンパンを浴びせた──シーズンを象徴するシーンを表彰台の下から見守って、田辺TDの目にも涙が浮かんだ。

 忘れてならないのは、18年からホンダの情報をトロロッソと共有しつつも、レッドブルが今シーズン唯一、新しいパワーユニットを搭載したマシンを走らせたチームであること。新スペックが投入されたレースより、1戦後、2戦後とマシン全体のパフォーマンスが向上していくところに、ポテンシャルが見てとれた。レース現場の共同作業によってパワーユニットプログラムが向上し、マシン全体の性能を引き上げているのだ。

 若いドライバーたちの表情から、これまでより素直に感情が溢れるようになった。レッドブルもトロロッソも、初めてのワークス体制で挑むなか、ホンダというパートナーを心強く感じ、大きなファミリーを形成してきたのだと思う。その信頼関係、感情の共有こそが、技術とともにホンダが成し遂げた19年の功績──王者メルセデスに挑戦するフォーメーションが整った。

(Masako Imamiya)