【】パワーユニットメーカーには夏休みなし?

8月9日

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 現在3週間のインターバルを挟んでいるF1では、各チームに2週間のファクトリー完全閉鎖が義務づけられています。その背景には、過密スケジュールで疲労の溜まるスタッフたちにきちんと休暇を取らせようという配慮と、コスト削減の狙いがあります。

 ハンガリーGP翌週にマシンやスタッフがファクトリーへ戻り、レース後の整備作業や後半戦に向けた開発の最終準備を行なってから、8月3日(月)から、ファクトリーでは技術スタッフの全作業が禁じられています。経理等の会社機能として必要な一部の部署は例外的に適用外となりますが、レース運営に関わるスタッフは全て出入りが禁じられ、メールや電話でのやりとりも禁止され、チームのメールサーバーも停止させられます。オフィス内外に渡って完全に休業を徹底しようというわけです。

 作業が終わったメカニックなどは、実質的には前週末の土曜日から長い休暇に入っています。F1の世界で戦う日本人スタッフたちもこの間に日本に帰省して休暇を満喫するという人たちがほとんどです。

 ところが、パワーユニットメーカーはこの対象とはなっていません。これはあくまでF1チームを対象としたものであり、マシン製造者であるコンストラクターではなくいわば外部からの部品納入業者でありいち企業であるパワーユニットメーカーにこれを義務づけることは出来ないからです。つまり、メルセデスAMGのハイパフォーマンスパワーユニット社、ルノースポール社、フェラーリのパワーユニット部門、そしてホンダのHRD Sakuraや英国ミルトンキーンズの拠点などは夏休みの間も休みなく稼働しているのです。

 この間にもパワーユニットの開発は継続され、トークンを使用したアップデートのために様々な研究開発が行なわれ、実際に部品を製造してテストも行なわれています。開発が凍結されているとはいえ、実際にそれを実戦投入しなければよいだけで、ファクトリーでの開発は無制限に行なうことができるからです。もちろん、夏休みでF1チームのファクトリーが閉鎖されている間はチームと提携した開発はできませんが。

 ホンダでも会社としての夏季休業はもうけられているものの、F1の開発に携わるスタッフの中には夏休み明けのアップデート投入のための作業に追われて休みを取る暇もないだろうと新井康久F1総責任者は示唆しています。どうやら、会社の就業規則に反して規定以上の長時間労働をすることを黙認するようです。

「これはあんまり書かないで欲しいんですが、会社としては夏休みは設定されていますけど、我々の開発陣の中にはスパに向けて仕事をしなければならない人もいますし、まだ確認しなければならない作業がたくさん残っていますから。忙しい夏になると思いますが、シーズン後半戦に向けてやるべきことをきちんとやってスパに臨みたいと思っています」
 ある意味では、最も厳しい作業を求められるのはパワーユニットメーカーのスタッフなのかもしれません。