【】F1 Topic:なぜ、ホンダパワーユニットのMGU-Hとターボは壊れるのか?
7月9日
「予想外のトラブルと言いたいところですが、いまMGU-Hは信頼性が万全と言える状況ではないので……」
オーストリアGP初日にアロンソのMGU-Hに不具合を発見し、2日目に向けて交換する決断を下した長谷川祐介ホンダF1総責任者は予選後、そう言って肩を落とした。ホンダのグランプリ期間中のMGU-HのトラブルはバーレーンGP、モナコGPに続いて3回目だ。
ホンダはバーレーンGPの後、応急処置を施した仕様でスペインGPとモナコGPを戦ったが、モナコGPでジェンソン・バトンのMGU-Hに再びトラブルが発生したため、根本的な対策を施した仕様をアゼルバイジャンGPから投入している。
したがって、今回再び起きた問題は、ホンダにとって、厳しい現実となった。なぜ、これほどまでにホンダのMGU-Hは壊れるのか。
長谷川総責任者は「対策そのものはベンチ上で、効果が出ていることは確認しています。ただ、サーキットで走らせると、いろんなことが起きてしまう」と状況を語る。
バーレーンとモナコで起きた問題は、ベアリングだった。「ベアリングのタフネスさが足りなかった」(長谷川総責任者)というホンダは、回転数と温度という状況面での耐久性を上げた仕様をアゼルバイジャンGPから投入した。
ところが、再び問題は起きた。何が起きているのか?
「はっきりわかっていることは、オイルとか水とかミストがターボの中に入ると良くない状況になるということです」と長谷川総責任者は説明する。どういうことか。
「レーシングエンジンの場合、オイルというのは入れすぎると必ず吹いてしまう。そして、そういう状況になると(ターボの中に)入ってしまう。ベンチテストでは入れすぎて吹いてしまうという状況が起きないため、壊れることはないんです。そういう意味では、どれだけ入るとダメージを受けるのかがわかっていなかったということです。ただ、その部分に関しては去年と変わっていないんですが……。とにかく、今後はこのような状況になっても耐えられるようにするよう検討しています」
今回のトラブルは問題はこれまでと同じようにメカニカルなものですが、原因に関してはあまりにも短命だったので、イレギュラーだった可能性もあると長谷川総責任者は語る。
ホンダはトラブルが起きたアロンソのMGU-Hとターボを、カナダGPのレースで使用したものに交換した。
「ペナルティを受けずに交換できるスペアのMGU-Hが、それしかなかったから」という理由だったが、ホンダはアゼルバイジャンGPでMGU-Hとターボを2基下ろしている。
そのうちの1基が今回壊れたもので、これはレースで9位入賞したもの。もう1基はアゼルバイジャンGPの金曜日に投入して、フリー走行でギヤボックストラブル時に搭載されていたものだ。しかも、このMGU-Hとターボは新型である。なぜ、このパッケージを使用しなかったのか。
じつは今年レギュレーションが変更になり、PUをストックすることができなくなってしまった。スポーティングレギュレーションの23条3項では「1イベントでストックできるPUは、その週末に最後に使用したもの」となっている。
つまり、アゼルバイジャンGPの金曜日に使用したものは、レギュレーションで再び使用することが許されていないPUとして、今シーズン初めて適合されることになったのだ。
(Masahiro Owari)
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