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信頼性確保の方向性が奏功した前半戦/“諦めなかった”福住のF1初ドライブ【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第9回】

2026年8月10日

 今年で11年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄代表。新しい技術規則が導入された2026年シーズンの前半戦が終了し、ハースはコンストラクターズ選手権7位でサマーブレイクを迎えた。シーズン序盤のハースは入賞を重ねていたものの、中盤に向かうにつれて苦しい戦いが続くようになったが、小松代表はその状況を予想していたという。前半戦最後のハンガリーGP終了後には、富士スピードウェイで2度目のTPC(Testing of Previous Cars/旧型車テスト)も行われ、坪井翔とF1初走行の福住仁嶺が参加した。今回はシーズン前半戦とTPCを小松代表が振り返ります。

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 まずはシーズン前半戦を振り返っていこうと思います。チームとしてはコンストラクターズ選手権7位という成績で前半戦を終えることになりました。厳しい戦いが続いている理由としては、新しいレギュレーションの1年目だからというか、逆に言うと『出だしができすぎていた』からだと思っています。僕たちが『できすぎていた』というのは、他のチームが躓いたということです。たとえば第2戦中国GPでは、うちはスプリントと日曜日のレースで合計11ポイントを獲りましたが、上位チームではマクラーレン・マスターカード・フォーミュラ1チームは2台ともレースをスタートもできなかったし、全部で4台が走れませんでした。他が躓いていた間に、とにかく僕たちは信頼性を確保して、ポイントを獲ろうというふうにやってきたことが功を奏しましたし、予定通りだったとも言えます。


 クルマに関しては、最初からそれほど速いわけでもありませんでした。それはうちのチームの規模などを考えると、当然と言えば当然です。どうしてかというと、レギュレーションが変わる時というのは、仕事の量が恐ろしく増えるので、ハースのような一番規模の小さいチームはかなり不利になります。うちがポイントを稼ぐためには、他の人たちが躓いている間に、地道にクルマが壊れないようにして、自分たちの持っているものをすべて発揮して、常にポイントを獲れる位置にいるということをやらなければいけないというフィロソフィーで臨んだので、それがすごくよかったなと思います。

オリバー・ベアマン(ハース)&マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2026年F1第2戦中国GP ポジションを争うオリバー・ベアマン(ハース)とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)

 前半戦終了時点で21ポイントしか獲れていないですが、ハースはまだ選手権7位にいます。すでにほぼ全チームが今の段階で信頼性を確保しましたし、これからはみんなすごい勢いでクルマをアップデートをして速くなっていくわけです。オラクル・レッドブル・レーシングは第4戦マイアミGPでかなり速くなりましたし、第11戦ハンガリーGPではアストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チームもそうでした。そのように規模の大きいチームはどんどん速くなるので、そのライバル勢についていくのは大変です。あらかじめわかっていたことですけどね。


 ではどうすれば今シーズン彼らについていける可能性を見出せるかというと、それは僕たちがすべてのことを完璧にこなした場合のみです。でもやっぱりそういうことってなかなか難しいんです。たとえばうちは第5戦カナダGPでアップデートをしてクルマは速くなりましたけど、完璧ではありませんでした。低速ではよくなりましたが、高速での性能を完璧に出しきれていなかったからです。こうやってちょっとでも完璧ではない部分が出てくると、どんどん置いていかれることになります。もちろん他のチームが完璧ではない場合もありますけど、うちとはチームの規模が違います。だから驚くことでもないですし、こういう状況になることも覚悟していました。新しいレギュレーションの1年目というのはそういうものですね。

エステバン・オコン(ハース)
2026年F1第11戦ハンガリーGP エステバン・オコン(ハース)

 もちろん、なるべく早くクルマの理解を深め、1レースでも早くポイント圏内で戦える状況に戻りたいと思っています。現状ではトップ4チームが抜きん出ているので優勝から8位までは基本的には埋まっています。予選では9番手と10番手をビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チームとアウディ・レボリュートF1チームが争っていて、そこに時々BWTアルピーヌF1チームが加わるような状況です。序盤にいろいろなチームが躓いていた時はたくさんポイントを獲れましたけど、現状ではなかなかそうはいきません。もしこの前のハンガリーGPのように上位を走っていたオスカー・ピアストリ(マクラーレン・マスターカード・フォーミュラ1チーム)がリタイアするようなことがあればポイントを獲れるチャンスは広がりますけど、中団のチームが1レースで10ポイントも獲ることはなかなか難しいです。


 今9位や10位に入賞するのはとても大変で、そういう意味ではレーシングブルズはよくやっていると思います。マイアミとカナダでのアップデートと、第7戦バルセロナ・カタルーニャGPでのアップデートは両方ともすごかったです。アウディはもうずっと速いですよね。速いんですけど、彼らには信頼性の問題があります。だから選手権の順位ではハースより後ろの8位にいますけど、最近のレースではコンスタントにポイントを獲っています。うちは信頼性はあるけど速さがないので、とにかく速さを改善しないと選手権で追い抜かれてしまうという状況です。


 クルマのパフォーマンスはともかく、第8戦オーストリアGP以降はオペレーションがすごくよくなりました。第9戦イギリスGP、第10戦ベルギーGPもよかったです。ベルギーはその反面レースはあまりよくなかったですが、やっとハンガリーではレースもピットストップも全部うまくいきました。僕がとにかく言っているのは、クルマが速くない時でもとにかくいいオペレーションをしてクルマのすべてを出し切らないといけない、ということです。それをやっていないと、いざクルマが速くなった時にボロが出てしまうので、現場では、『今、自分たちには何ができるのかを考えて各々の担当分野でベストを尽くしてくれ』と常にチームのみんなに伝えています。そういう風にやらないと、今は結果が出るクルマではないので、モチベーションを保つのだって大変ですからね。

■目的意識を持ってF1テストに望んだ福住仁嶺&坪井翔

 さて、2回目のTPCが終わりました。今年は観客のみなさんに『近く』でF1を感じてもらうことを目標に準備をしてきました。マーチャンダイズスタンド(公式グッズショップ)などのお客さんの様子や、ファンゾーン、ハースのガレージの後ろにたくさんのファンの方々がいたのを見ても、レースウィークエンドではなかなか難しい『近くでF1を感じる』ことができたのではないでしょうか。

 ドライバーに関しては事前に告知した通り、初めてF1をドライブする福住仁嶺と、昨年も参加した坪井翔を起用しました。福住はヨーロッパで3年戦って、成績が出なかった時期やつらいこともいろいろ経験していると思います。モチベーションを保つのが難しい時期もあったと思います。しかし彼は諦めずに自分に挑戦し続けました。そんな人にチャンスを与えられるというのは、こちらも嬉しく思います。


 残念ながら僕がふたりの走りをじっくりと見る機会はとれなかったのですが、ふたりとも高い意識を持ってこの2日間走ってくれました。坪井はもうすでに何度かTPCに乗っていて、去年の富士では「楽しむ」ということが一番でしたが、今回はどうやって限界に近い状態から走り始められるか(F1のレースウィークエンドでは必要です)ということや、初日の刻々と変わる路面状況にどう対処していくのかなど、僕が彼と話した感じでは去年とはまったく違うレベルで本人が課題を持って臨んでいました。


 福住はこの機会をこれから先の第一歩にするためには何をしなければいけないのかという貪欲さを持っていました。もちろん、彼らの年齢も関係しているのでしょうが、ふたりとも「この機会を最大限に活かすためには自分が何をしなければいけないのか」というしっかりとした目的意識を持って臨んでいたことは、評価されるべきだと思います。この様な彼らの姿勢を見て、今カートをやっている子供たちも感じるものがあったと思います。これこそが、(トヨタ自動車会長の豊田)章男さんと常々言っている『人を育てる』ということです。場を与えるのが僕らの役割だと思っていて、そこで自分のすべてを出し切ることができる人材を育てるのです。これからも僕らにできることは何かを常に問いながらいい『場』を作っていきたいと思います。



(Text : Ayao Komatsu)


レース

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5位ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム75
6位BWTアルピーヌF1チーム62
7位TGRハースF1チーム21
8位アウディ・レボリュートF1チーム16
9位アトラシアン・ウイリアムズF1チーム11
10位アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム3

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