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【アストンマーティン・ホンダの現在地】ニューウェイは同じ失敗を繰り返さない。ハンガリー以降に期待される秒単位の進歩
2026年7月13日
海外有識者が現地からお届けする、アストンマーティン・ホンダのF1活動を観察し、分析する連載コラム。
2026年、アストンマーティンF1チームとホンダはワークスパートナーシップの下で参戦、新たな時代へと踏み出した。ホンダはパワーユニット(PU)マニュファクチャラーとしての活動を再開、チームは天才デザイナー、エイドリアン・ニューウェイの獲得にも成功し、F1での成功を目指す上で強力な基礎を築いた形だ。しかし、今年一新された技術規則の下で、今のところアストンマーティン・ホンダは厳しい状況に陥っている。
かつてF1チームでテクニカルディレクターの役割を担い、現在は解説者を務めるアンドリュー・ギャリソン氏が、アストンマーティン・ホンダの状況と動向を分析する。
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アストンマーティンとホンダのこの4カ月間については、いったんすべて忘れてしまおうではないか。もちろん、AMR26がなぜここまで完全な失敗作になってしまったのか、その理由はいくらでも語れる。しかし、その話はこれまで何度もしてきたし、データを見返すのも気が滅入るだけだ。要するに、緑色のマシンはどこのサーキットでも遅いのだから。

とはいえ、ごく簡単に振り返っておこう。ホンダはライバルメーカーより約2年遅れてパワーユニット開発プロジェクトをスタートさせた。つまり、最初からすでに出遅れていた。その差を着実に縮めつつあったが、エイドリアン・ニューウェイがアストンマーティン入りした後、パワーユニットのアーキテクチャーを約35%も変更しなければならなくなった。バッテリーパックの配置変更をはじめ、冷却システムにも影響が及ぶ大幅な見直しだ。
シャシー側は、トップチームがすでに取り入れていた重要な要素をいくつも見落としていた。パワーユニットとの適切な分離設計もなされておらず、その結果として振動問題を抱えることになった。そして忘れてはならないのは、ギヤボックスの完成度が基準を大きく下回っていたことである。
こうした問題がすべて重なり、我々がここまで痛ましい思いで見続けている惨状が生まれた。オーストリアGPとイギリスGPではあまりに遅く、恥ずかしいと言うほかなかったので、これについては忘れてしまうに限る。
■ニューウェイとホンダが成し遂げ得る挽回
この暑さのなかでは、湿っぽい思いに浸る気にはとてもなれない。キンキンに冷えたビールを1本、いや3本は飲みたい気分なので、明るい面に目を向けよう。アストンマーティンとホンダの状況が、大きく、しかも短期間で好転する可能性についてだ。
幻覚を見ているわけではない。前向きに考えているだけだ。そして、それが実現し得る理由もある。
まず、誰もが知るように、ニューウェイは紛れもなく天才である。しかし、天才でも時には失敗することはある。平凡な人間と違うのは、天才は同じ失敗を二度繰り返さないという点だ。

AMR26の設計でどこを誤ったのかを把握したニューウェイは、空力面でもメカニカル面でも、さらには重量面でも、当初のシャシーとはほとんど共通点がない新しいマシンを作り上げるという情報がある。確かな筋によると、その進歩はコンマ数秒ではなく秒単位に相当するものになると期待されているという。その予測をぜひ信じたいところだ。
もちろん、ホンダの方も、性能と信頼性の向上に全力で取り組んでいる。そしてニューウェイと同様に、ホンダも同じ失敗を二度繰り返す会社ではない。だから私は、パワーユニットの面でも大きな前進を期待している。
もちろん、モータースポーツの世界では「1+1」が必ずしも「2」になるとは限らない。しかし、それが「1.5」になれば、それだけでも十分な進歩といえるだろう。
そうなれば、グリーンのマシンはハンガリーGPから、順位を上げていくはずだ。ただし、それがどの程度なのかは、ハンガロリンクの予選が終わるまでは分からない。もし進歩が期待に届かなければ、2027年に向けたプレッシャーがさらに強まるだろう。優秀な人材はチームへの加入を望まなくなり、このパートナーシップが崩壊する危険すらある。
■明るい未来を思い描く
だが、目に見える進歩があった場合、何が起きても不思議ではない。フェルナンド・アロンソは残留を強く望むだろうし、カルロス・サインツも、もう1年待ってアウディへ移籍するより、アストンマーティン・ホンダにすべてを賭けようという気持ちになるかもしれない。そして……マックス・フェルスタッペンでさえ、数々の成功をともに築いたニューウェイとホンダのもとへ戻ることが、良い選択だと考える可能性すらある。
そんな未来を思い描いていたら、ますます気分が良くなってきた。もう1本ビールを手に取って庭へ出ることにしよう。皆さんも、そんな夏の一日を過ごしてみてはいかがだろうか。

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筆者アンドリュー・ギャリソンについて
パドックでアンドリュー・ギャリソン(仮名)の姿を見逃すことはまずない。身長1メートル90センチ、体重120キロという巨躯を持つアイルランド出身のギャリソンは、モータースポーツ界で広く愛されるベテランであり、あらゆる仕事を経験し、あらゆる人物と仕事をしてきた。彼は、物事を分析するやり方に、きわめて独特なスタイルを持っている。ギャリソンにとって、物事は「正しい」か「間違っている」かのどちらかであり、その中間は存在しない。
彼はレーシングカーについてあらゆることを語ることができる。なぜなら、実際にそれに関連するすべてを経験してきたからだ。10代のころからレーシングメカニックとして働き始めたギャリソンは、20歳になる前に見習いメカニックとしてF1の世界に足を踏み入れた。しかし、そのわずか2カ月後には、下位カテゴリーのレースでチーフメカニックを任され、チームトラックのドライバーも兼ねながら、地元のスーパーマーケットでサンドイッチを買い出しする係まで担当するようになった。
やがて彼はチームのナンバーワン・メカニックに就任、実践的なアイデアが次々と採用されたことでデザインチームにも加わった。これが契機となり、やがて彼は、自身でシャシーを設計して出場する下位フォーミュラで活動するようになる。
約10年間、自らのチームを運営し、他チームのエンジニアリングを手伝い、トップデザイナーたちの失敗も間近で見てきた後、ギャリソンはテクニカルディレクターとしてF1へ復帰。引退の時を迎えるまで、その職を務め続けた。
声が大きく、歯に衣着せぬ物言いのギャリソンは、今もかつての部下たちに静かな畏怖の念を抱かせる存在だ。彼らの中には、いまやテクニカルディレクターやチーム代表になっている者もいるが、誰もが今もなお、ギャリソンに一目置いている。
本人は新しいテクノロジーには少々ついていけなくなったと率直に認めているが、基礎に関する知識は深いため、今は、技術面だけでなく人間関係の問題についても語れる解説者として、高く評価されている。
(Text : Andrew Garrisson)
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