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アストンマーティン側の体制、車体、空力の課題を自ら認めたニューウェイのふたつの目的【代表のコメント裏事情】

2026年7月3日

 2026年F1第7戦バルセロナ・カタルーニャGPのレース2日後、アストンマーティンが自チームのホームページに、チーム代表を務めるエイドリアン・ニューウェイのインタビューをアップした。その内容は7月1日付けのautosport web『ニューウェイが明かすアストンマーティンの失敗要因。急造開発、大胆な空力方針、旧式ツールで苦戦。アップデートはハンガリーで』にも掲載されているので、ぜひご覧いただきたい。


 このインタビューで注目すべき点は、ニューウェイが公式に自らが推し進めたエアロダイナミクスのコンセプトが機能しなかった責任を認めたことだった。

 開幕戦のオーストラリアGPでは、ホンダ批判とも思える発言を行っていたニューウェイ。木曜日にチームが開いた会見では「フェルナンド(・アロンソ)は連続して25周以上走ると、手の神経に永久的な損傷を負うのではないかと心配しており、ランス(・ストロール)に至っては15周以上走ると、その限界に達すると考えている」と語ったり、翌日に行われた国際自動車連盟(FIA)の会見でも「(2026年に復帰するために)再編成されたチームの多くはF1未経験者で、過去の経験を持ち合わせていなかった」などと語っていた。

【代表のコメント裏事情】
2026年F1第1戦オーストラリアGP木曜日 アストンマーティンの開いた会見に出席したエイドリアン・ニューウェイ代表
【代表のコメント裏事情】
2026年F1第1戦オーストラリアGP金曜日 FIAの会見に出席したエイドリアン・ニューウェイ代表

 しかし、今回20分間に渡って行われたチーム内でのインタビューでは、ホンダ批判はいっさい聞かれなかった。そればかりか、自らの過ちを認めるようなコメントが掲載されていた。


 たとえば、インタビュアーから「前回、2月にインタビューした際には、チームには楽観的なムードが漂っていたように思います。それから数カ月が経ったいまの状況は明らかに厳しく、謙虚にならざるを得ません。その状況をあなたはどのように見ていますか?」と問われると、ニューウェイは素直にそれを認めた。


「極めて厳しい。シャシー側もパワーユニット側も、最初から後手に回っていた。いま思えば、おそらく私たちは自分たちに過度な期待を寄せすぎていたのかもしれない。シャシーに関しては、重量が規定をかなり上回っている。その一因は、パワーユニットの統合や、ホンダと協力して解決しなければならなかった振動問題への対応にあります。しかし、我々自身も軽量化において本来あるべき成果を上げられなかった」


 開幕戦では「振動によってミラーが脱落するなどの問題が発生してしまい、対処を迫られている。より深刻なのは、振動が最終的にドライバーの指へ伝わることだ。フェルナンドは、25周以上連続して走行すると手に永久的な神経損傷を負うリスクがあると感じている。ランスは、その限界が15周だと考えている」と、振動問題はホンダのパワーユニットに主な原因があるかのような表現を行っていた。だが、今回のインタビューでは「ホンダと協力して解決しなければならなかった振動問題」と表現し、問題の原因がホンダのICEだけでなく、そのICEを搭載するチーム側にあったことを認めた。それ以外にも、「組織としてまだ理想通りの連携が取れていなかった」とアストンマーティンの体制面に問題があったことも認め、「シャシーに関しては、重量が規定をかなり上回っている」と車体面に深刻な課題があることを明らかにした。


 さらにインタビューでは空力面にも課題があったと明言した。


「空力面では、我々は大胆な方向性を選んだ──主に私が主導した決断だ。しかし時間的な制約から、複数のコンセプトを深く検証する余裕がなかった。我々が選んだ方向性が根本的に間違っていたとは言わないが、予想していなかった課題がいくつも浮上した」


 F1では失敗作が世に出ることは、決して珍しくない。しかし、その失敗を自ら認め、チームが公表することは珍しい。しかも、ニューウェイは空力の鬼才と称されるF1界でも最高のデザイナーのひとり。そのニューウェイがインタビューで自らの過ちを認めたことは、筆者の記憶にない。


 それでは、なぜアストンマーティンは今回、このようなインタビューを掲載したのか? そこにはふたつの目的が見え隠れする。ひとつは、パートナーへの謝罪と説明責任だ。F1というプロジェクトには多額の資金が投入されている。アストンマーティンにはその説明責任があったのだろう。とりわけ、最大のパートナーであるパワーユニットマニュファクチャラーへの批判とも受け取れるコメントをメディアの前で公然と発していたことは、この世界では御法度。低迷の原因はアストンマーティンにあることを公にすることで、ホンダをはじめパートナーへ謝罪の意を表したかったのではないか。


 もうひとつは、このインタビューでアストンマーティンはニューウェイが事実上、代表の座から退くことを認めたかったのではないか。というのも、開幕戦でのニューウェイの言動は、F1チームの代表としてはやや冷静さに欠いていたからだ。インタビューの中盤でチームのインタビュアーがこんな質問をしている。


「ドライバーとの連携はチーム代表としての重要な役割のひとつですが、ここでのあなたの役割は他の多くのチームとは構造が異なります。それをどのように定義していますか?」


 これに対して、ニューウェイはこう答えている。


「『チーム代表』という役職は、一部は形式的なものだ。というのもFIAの規則により、その役割を担う人物を指名しなければならないからだ。チーム代表は役職名であって、職務内容の説明ではない。重要な戦略的決定に関しては、最終的な責任は私に帰属するが、もちろん、(エグゼクティブ・チェアマンの)ローレンス・ストロールも、そうした大きな決断に深く関わっている」


 するとインタビュアーはあえてこんな質問を続けた。


「テレビ中継では、チームの顔としてインタビューに応じているのは、しばしばチーフ・トラックサイド・オフィサーのマイク・クラックです。彼との役割分担はどのようになっているのでしょうか?

【代表のコメント裏事情】
アストンマーティンのチーフトラックサイドオフィサーを務めるマイク・クラック

 ニューウェイの答えはこうだ。


「サーキットにおいて、チームを公の場で代表し、メディア対応を行うという点では、それはまさにマイクの役割。彼はその仕事を極めて巧みにこなしている。この体制のおかげで、私は最も付加価値を生み出せる分野──シルバーストーンにあるファクトリーでチームと共にエンジニアリング、長期戦略、全体的な方向性を練ること──に時間を集中させることができ、一方でマイクが週末ごとのサーキットでの責任を担っている」


 つまり、ニューウェイに付いている『代表』という名前は、あくまでFIAに提出する書類上のもので、一般的に私たちが想像しているF1チームの代表職をサーキットで行っているアストンマーティンのスタッフはクラックだということを、アストンマーティンはこのインタビューで伝えたかったのではないだろうか。



(Text : Masahiro Owari)


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