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PU規則改正案を「理解、尊重している」ハードウェアの信頼性、供給の懸念もクリア/ホンダHRC渡辺社長インタビュー(1)

2026年6月14日

 ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長が、バルセロナ-カタロニア・サーキットを訪れた。インタビューに応じた渡辺社長は、アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チームと協力して振動の問題を解決したことを振り返って「有意義な時間だった」と表現。また2027年より導入されるパワーユニット(PU)の規則の改正案についても、ホンダが当初から反対していたという噂を否定し、理解を示していると主張した。

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──鈴鹿での第3戦日本GPから2カ月以上が経ちました。この2カ月間は、 ホンダ・レーシング(HRC)にとって、どんな時間でしたか?


渡辺康治社長(以下、渡辺社長):「鈴鹿の後に、アストンマーティンのクルマをサクラ(HRC Sakura)に持ち込んで、サクラにいるアストンマーティンと我々のメンバー、そしてイギリスにいるアストンマーティンのメンバーが合同で振動の解析を行って、その対策にあたりました。対策としてはハードウェアによる一部変更とソフトウェアの改良を行いました。その結果、振動については基本的には解決し、第4戦マイアミGPから第6戦モナコGPまでのドライバーからの評価でも問題はなく、概ね解決しました。それがこの2カ月で一番大きな収穫でした」


──HRC Sakuraに持ち込まれたアストンマーティンのマシンに折原(伸太郎/HRCトラックサイドゼネラルマネージャー兼チーフエンジニア)さんが実際に座ったと聞いています。


渡辺社長:「彼らがやっているところに私も顔を出しました。アストンマーティンのエンジニアも来ていて、折原たちが実際に座っている様子を見ていました。やっぱりホンダには本田宗一郎さんが創業当初から唱えてきた三現主義(現場に足を運び、現物を手に取り、現実をを自分の目で確認するという3つの『現』を大事にする考え方)がいまも息づいています。ドライバーが訴えている振動をデータ上だけでなく、現物に座ってみて、自分たちで体感し、現実を見つめなければ、問題は解決しません。アストンマーティンもそのことを理解し、協力してくれたことに感謝したいです」

マイク・クラック&折原伸太郎
2026年F1第7戦バルセロナ・カタルーニャGP木曜日 アストンマーティンのチーフトラックサイドオフィサーを務めるマイク・クラック(写真左)と、HRC(ホンダ・レーシング)の折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャー兼チーフエンジニア

──ホンダが三現主義を大切にしていることは知っていましたが、今回のようにホンダのエンジニアが実際にレーシングカーに座って確認するというのは、よくやっていることでなのでしょうか?


渡辺社長:「基本的にはレーシングカーはそんなに簡単に座る機会はありません。スーパーフォーミュラでもなかなかないですし、F1となればなおさらです。量産車のテストでも座る機会があるのは基本的にはテストドライバーです。今回のようにエンジニアが実際に座るというのは極めて稀です。だから、今回このような機会を与えてくれたアストンマーティンには感謝しています。今回、振動という問題に対して、サクラだけでなく、イギリスのHRCのメンバーと、アストンマーティンが一体感を持って解決できたことは、今後の開発に向けても有意義な時間だったと思います」


──そういう意味では、日本GP後に予定されていたバーレーンGPとサウジアラビアGPの2連戦が中止なったのは、アストンマーティン・ホンダにとっては有意義な時間となりましたね。


渡辺社長:「そうですね。鈴鹿の後にさまざまな振動対策を行ったわけですが、緩衝材によって振動を軽減しただけでなく、エンジン単体でも振動を減らす施策を行いました。ただ、レギュレーション上でパフォーマンス向上につながる変更はできないので、レギュレーションに許される範囲で信頼性の向上を目的としたハードウェアの変更も、F1が休止していた期間に行うことができました。この改良したエンジンをマイアミGPで2基目として投入しました。マイアミGPに投入する振動を改善させた2基目のエンジンに合わせてソフトウェアの変更も行い、その3つが組み合わせて振動対策は基本的に完成したということです」

ホンダHRC渡辺康治社長インタビュー(1)
2026年F1第7戦バルセロナ・カタルーニャGP フェルナンド・アロンソのマシンに作業を行うアストンマーティンとHRCのクルー

──6月10日、2027年および2028年に向けたF1パワーユニット(PU)規則の改正案について、合意に達したことが国際自動車連盟(FIA)から発表されました。この決定を渡辺さんはどのように受け止めていますか?


渡辺社長:「今回、レギュレーションを改善することになった理由のひとつは、鈴鹿で問題になった安全性の課題に対しての対策を取るということでした。もうひとつは、F1そのものがさらに魅力的になることを目的に対策を練るということでした。このふたつに関して、オープンにディスカッションすることは、我々ホンダのスタンスとして賛同しています。もちろん、議論の過程では様々な意見が出てきました。 最初から2027年と2028年で2段階に分けた議論となっていたわけではありませんし、ホンダが最初から2027年からの60対40への変更に反対していたかのような噂が出ていましたが、決してそんなことはありません。それはタイミングと手法の話で、いろんな考えがあるということだけです。むしろ、ホンダとしては今回の変更に関して反対ではなくて、方向性としては賛同していました。そこはご理解していただきたいなという感じです」


──様々な議論の結果、2027年はエンジンと電気モーターの出力比をまずは58:42にし、2028年から60:40にすることが決定しました。この結果をホンダはどのように評価していますか。


渡辺社長:「FIAが下した最終的な決断を我々は理解していますし、尊重しています。これで開発を進めていけます。というのも、全体の方向性については大きな問題はなかったですが、レギュレーション変更にあわせてハードウェア面で何かを変更することになれば、変更したパーツの信頼性を確認しなければならないという課題が出てきます。信頼性を確認した部品を期限までに安定して調達できるか。燃料流量を上げたら、エンジンのハードウェアに大きな変更が出てきます。来年までの短い間のなかで、それらの部品の調達をし、安定した供給をできるのかをしっかりと話し合う必要がありました」


──議論の場にはアストンマーティンとホンダは誰が出席されたのでしょうか。


渡辺社長:「私とエイドリアン(・ニューウェイ)です」


──こうした話し合いの結果が、2027年にいきなり60:40に変更する前に、58:42を採用するという決定だったんですね? つまり、来年のエンジンは今年の設計の改良版で行き、2028年からは新設計という認識でいいですか?


渡辺社長:「まあ、そういうことですね。 ただ2027年から燃料流量を5%増加させるにしても、開発工数として大きく上がります。どんな変更でもレギュレーションが新しくなれば、信頼性を確保するために、やらなければならないことは増えます。その点に関して、ホンダとしてしっかりと意見は言っただけで、変更することに対して、頭ごなしに反対していたわけではありません」

フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)
2026年F1第7戦バルセロナ・カタルーニャGP フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)


(Text : Masahiro Owari)


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