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研究開発のための新施設も。長期計画でF1参戦を目指すGM/キャデラック【大谷達也のモータースポーツ時評】

2023年4月19日

「アンドレッティとGM/キャデラックが手を組んでF1グランプリ参戦を目指す」


 今年1月に発表されたこのニュースを、現実的に受け止められなかった日本人ファンは少なくないだろう。しかし、彼らは本気だ。そのことを裏付ける証言を、私はGMに近い消息筋から手に入れることに成功した。


 そもそもGMとモータースポーツ活動を結びつけて考えることが、多くの日本人にとっては難しいかもしれない。しかし、彼らが擁するシボレーというブランド名を聞けば、そのモータースポーツにおける活躍がおぼろげながらもイメージできることだろう。


 たとえばアメリカのNASCARでいえば、シボレーのタイトル獲得回数は41回で、フォード(17回)やトヨタ(3回)を大きく引き離している(最高峰クラスのみで集計)。同じくアメリカのインディカー・シリーズでは、2012年にシリーズに復帰して以来、昨年までに通算7回タイトルを勝ち取っている。これはホンダが同じ期間にタイトルを獲得した5回を上回る記録だ。


 さらにはコルヴェットやキャデラックのブランドで、WEC世界耐久選手権やIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権などの耐久レースに参戦してきた歴史をご存知のファンも少なくないはず。たしかに世界最高峰カテゴリーで勝ちまくった実績はないものの、GMが長年にわたりモータースポーツを戦ってきたことは紛れもない事実なのである。

ウィル・パワー(チーム・ペンスキー/シボレー)
2023年NTTインディカー・シリーズ第3戦ロングビーチGP ウィル・パワー(チーム・ペンスキー/シボレー)

第1戦セブリングでWECデビューを飾ったキャデラックVシリーズ.R
第1戦セブリングでWECデビューを飾ったキャデラックVシリーズ.R


 企業としての規模も申し分ない。昨年はグローバルな販売台数で583万台を記録。トヨタ、フォルクスワーゲン、ヒュンダイ・キア、ルノー・日産、ステランティスに続く第6位につけた。かつてトヨタやフォルクスワーゲンとともに1000万台近くを販売していたことを考えれば縮小傾向にあるものの、それでもグローバルな自動車メーカーとして確固たる地位を守り続けていることは間違いない。ちなみに、7位のホンダは370万台で、少なくとも販売台数では明確に差をつけていることになる。


 では、そんなGMがなぜF1参戦を目指すことになったのか? 「GMは世界最高峰のモータースポーツで歴史的に数多くの成功を収めてきた。F1は、我々のモータースポーツ活動におけるポートフォリオを完全なものにする役割を果たす」とある関係者は、私にそう打ち明けた。


 もちろん、GMは技術面でもF1に参戦するメリットを認めている。ここで、彼らが特に注目しているのがバッテリー・テクノロジーであり、内燃機関の燃焼技術であり、ターボチャージャーによる過給技術であるという。ちなみに、そうした研究開発は、ミシガン州デトロイトのGM本社、そしてノースカロライナ州シャーロットに新設されるテクニカルセンターで実施される見通し。ちなみにシャーロットの施設は2022年前半に完成する予定であることが2021年6月に発表されている。


 こうした研究開発を通じて得たノウハウを量産車に還元すると同時に、技術者の育成に役立てることを、F1参戦の目的として掲げているようだ。


 北米における空前のF1人気もGMの判断を後押ししたことは間違いないだろう。アメリカといえば長らく『F1不毛の国』と評されてきたが、NETFLIXのドキュメンタリー番組『Drive to Survive(邦題:栄光のグランプリ)』などをきっかけとして人気が沸騰。今年はアメリカ国内だけで3戦、カナダを含めれば計4戦ものF1グランプリが開催される。こうした人気にあやかりたいとの思いがGMにないといえば、ウソになるだろう。

F1ラスベガスGP、少なくとも2032年まで開催へ。郡委員会が今後10年間の開催を承認
2023年にF1を開催するラスベガス


 しかし、GMは単なるブームに便乗してF1にエントリーするのではなく、長期計画でF1に挑むつもりという。そのために、既存のパワーユニットサプライヤーと共同で設計や生産の手法を学ぶことも視野に入れている模様。では、そのときGMのパートナーとなるのは、どのパワーユニットサプライヤーなのか?


 ここですぐに思いつくのが、ホンダだ。GMとホンダは燃料電池の開発で長年、協力してきたほか、昨年は共同開発した次世代EVを2027年以降に市場に投入すると発表するなど、緊密な関係にあることで知られる。ただし、これらはいずれも量産車に関することであり、いまのところモータースポーツ活動について具体的な計画は発表されていない。また、ホンダ自身が2026年以降のF1復帰に関して検討中であることを踏まえれば、現時点でGMとの共同開発に着手するとは考えにくい。したがって、ここではGMがF1パワーユニットの開発でホンダと提携する可能性は低いと予想しておこう。


 GMの提携先としてもうひとつ考えられるのがアルピーヌだ。今年2月、アルピーヌのローラン・ロッシCEOは、もしもアンドレッティのF1参戦が認められた場合、アルピーヌがパワーユニットを提供するとコメントしている。GMが、新レギュレーションの発効される2026年以降を見据えてF1パワーユニットを開発しようとしていることは、火を見るよりも明らか。アルピーヌがアンドレッティにパワーユニットを提供するのは、したがってそれ以前にアンドレッティのF1参戦が決まったケースを想定していることになる。であれば、開発段階でもアルピーヌとGMが提携すると考えるほうが、より現実的ではないだろうか?


 いずれにせよ、GMのF1計画が実現するには、アンドレッティのF1参戦が認められることが大前提となる。ちなみに、F1に新規参戦するチームの選定作業は6月30日までに結論が下される見通しだ。



(Text:Tatsuya Otani)




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