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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第11回前編】限られたデータ量で勝負。適切なタイヤ戦略で戦いきったケビン

2022年9月8日

 2022年シーズンで7年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。シーズン後半戦の初戦は恒例のベルギーGPで、このレースを皮切りにトリプルヘッダーを迎える。コース改修の行われたスパ・フランコルシャンでは金曜に雨が降ったこともあり、十分なデータがないまま望んだレースでは最適なタイヤ選択こそ行えたものの、ハードタイヤのグリップ不足に悩まされた。


 コラム第11回は前編・後編の2本立てでお届け。前編となる今回は、ベルギーGPの現場の事情を小松エンジニアが振り返ります。


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2022年F1第14戦ベルギーGP
#47 ミック・シューマッハー 予選15番手/決勝17位
#20 ケビン・マグヌッセン 予選18番手/決勝16位


 シーズン後半戦は3連戦の初戦、ベルギーGPからスタートです。スパ・フランコルシャンでは冬の間にコースの改修が行われました。以前に比べてかなりグラベルが多く使われていましたが、個人的にはなるべく「自然な」トラックリミットがある方がいいと思っている(もしコースオフすれば自然とタイムが遅くなる)ので、グラベルが増えたことは良いと思っています。実際にレースでも今までは多くのドライバーが1周目のターン1で縁石の外に大きく膨らんでいましたが、今回はグラベルがあるのでみんなきちんとコース内にとどまって走っていました。こちらの方が本来の姿だと思います。


 コースオフしてタイムがよくなるようなサーキット設計で、トラックリミットを常に監視して、違反がある度に該当ラップのラップタイム自体を抹消するというのはどうしても正しい選択だとは思えません。オーストリアGP予選でのセルジオ・ペレス(レッドブル)の件などはレースコントロールもちゃんと対応できておらず、予選の結果に大きな影響が出ました。これではファンにとってもわかりにくいですし、僕はなるべくシンプルにした方がいいと思います。ウチのドライバーふたりも基本的に変更点を歓迎しているようでした。コース上のところどころ再舗装されていた箇所もいいコンディションで、ウエットでも問題ありませんでした。

2022年F1第14戦ベルギーGP スパ・フランコルシャン
2022年F1第14戦ベルギーGP スパ・フランコルシャン


 今回はミックが4機目のパワーユニット(PU)を投入し、それに付随してターボなども新しく入れたため、グリッド降格ペナルティを受けることが決まっていました。ですので予選では、実際にミックが戦っている唯一の相手は周冠宇(アルファロメオ)でした。Q1は新タイヤを2セット使ってまずはQ2進出を目指しました。FP3でクルマの問題がありほとんど走れず厳しいかなと思っていたのですが、2回目のランにシケインでミスをしたもののなんとか15番手のタイムを出してQ2に進出してくれました。これは評価していいと思います。


 周もQ2に進出していたので、Q2ではまず中古タイヤで走った後に新タイヤでアタックをしました。残念ながらターン1進入でフロントをロックアップさせ、これでゲームオーバーとなりました。


 一方ケビンはFP3でいい手応えがあったので、Q2には問題なく進めると踏んでいました。実際、1ラン目は大きな問題もなく、ほぼ想定されたタイムを出しました。しかし残念ながら2ラン目でフロントタイヤの感触がよくなくて、ターン5や8などでタイムをロスし、最後はシケインでアンダーステアを出してさらにタイムロス。18番手という予想外の結果になってしまいました。

ミック・シューマッハー(ハース)
2022年F1第14戦ベルギーGP ミック・シューマッハー(ハース)

■ハードタイヤのグリップ不足に苦しむも、適切なタイヤ戦略を遂行

 金曜は雨の影響もあり、いいロングランのデータがほとんど採れませんでした。それに加えて、FP3ではミックがミディアムタイヤでロングランをする予定だったのですが、上述の通りクルマの問題でこれもできず。非常に限られたデータのみでレースに望むことになりました。


 しかし金曜日にコンディションが悪くてデータがいいデータが採れなかったのはどこのチームも同じです。とにかくあまりにも不確定要素が多かったので、2台とも最も確実に使えるタイヤであるミディアムでスタートすることにしました。その後、ミディアムの具合をみて、次のスティントをミディアムにするかハードにするか決める予定でした。

ケビン・マグヌッセン(ハース)
2022年F1第14戦ベルギーGP ケビン・マグヌッセン(ハース)


 実際レースが始まると、路面温度が上がった影響でタイヤ温度も結構上がってきていたので、第2スティントはハードで行くことにしました。もしハードが上手く機能すれば、1ストップ戦略で走りきれる可能性もあったからです。しかし予想していた通りハードは全体的なグリップ不足で、タイヤ温度的にもレースを最後まで走りきることはできないような状況でした。ですから、残り17周(ケビンの場合)で2度目のピットストップを行い、再びミディアムを履きました。残りの周回数と路面温度を考えるとミディアムが最適だったと考えています。


 前回のハンガリーではケビンのクルマだけアップデートしましたが、今回はミックのクルマにもアップデートを行いました。アップデート自体は想定どおり機能していたのですが、今年は低ドラッグ仕様のクルマにほとんどお金をかけていなかったので直線でスピードが伸びず、大きくラップタイムに影響が出ました。それでも予選では12番手辺りにいけるポテンシャルはありましたが、レースではやはり最高速不足で厳しかったですね。次戦のオランダは最もダウンフォースをつけるサーキットのひとつなので、もっとレースで戦えると思っています。(第11回後編・オランダGPに続く)

ミック・シューマッハー(ハース)
2022年F1第14戦ベルギーGP ミック・シューマッハー(ハース)

ケビン・マグヌッセン&ミック・シューマッハー(ハース)
2022年F1第14戦ベルギーGP ケビン・マグヌッセン&ミック・シューマッハー(ハース)



(Ayao Komatsu)




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