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【津川哲夫F1新車私的解説】メルセデス新車に漂う不穏な気配。全貌見えぬもレーキ角採用でコンセプト変更か

2021年3月6日

 今シーズンもチャンピオン争いの本命となるメルセデスの新車W12が登場した。これまで発表してきたチームの中では、もっとも実戦車に近い形で登場しているようだが……もちろん、開幕戦までにはさらなる変化は当然だ。発表時のW12の大きな変化はフロアだ。新フロア規則に対処したものだが、フロアエッジ処理が面白い。


 今年の新フロア規制ではエッジのスリット等が禁止され、後方へテーパーにすぼまったフロア後部エッジでは渦流処理が難しく、フロア下面でのベンチュリー効率を失う。

メルセデスの2021年型マシン『W12』
メルセデスの2021年型マシン『W12』


 そこでW12のフロアエッジにはかなりの厚みを全域に持たせている。おそらく、規則の50mm厚一杯だろう。しかしこのエッジ部、現実には単なる発表用のカバーである可能性も隠せない。事実トークンの使用箇所を明言せず、まだ全貌は見せないとチームが言っているのだから。


 それを無視して考えれば、サイドポッドのアンダーカット下部、つまり車体中心に向かって臼(うす)の曲面状に落ち込んでゆくこの曲面が興味深い。


 また、アンダーカット下部のコークパネルに向かう曲面はスムースなコークボトルラインを形成。そしてフロアフロント部、バージボード、ボーダウイング、スリット、フィン、すべてを使って後方へ向かうフロア上面流をフロアエッジから逃すまいという努力が見えるが、この処理も基本的には昨年と大きくは変わらない。

メルセデスの2021年型マシン『W12』
メルセデスの2021年型マシン『W12』


 リヤタイヤ前方のスリットやガジェットの規制から、リヤタイヤに当たる空気流によるフロア空気流への干渉を最小限に抑え、フロアエンドの空気流の絶対量と速度を確保するのは必然だ。


 まだ現車を確認できていないが、このエッジの厚みの内部がダクト化していたら面白い。フロアエッジ前端辺りにエアインテークを設け、このエッジダクトの内部を通して必要部分での排出を行えばプレッシャーコントロールは可能だ。トリックデバイスの得意なメルセデスならやりかねない。


 また、少なくとも見た目では昨年以上にレーキ角(フロアの前傾姿勢)があるように思える。もちろん写真からの判断で、実際はサーキット走行を見なければわからないが、フロアエッジとリヤブレーキダクトフィン、ディフューザースピリッター等が規制されて、これまでメルセデスが維持してきた低レーキのベンチュリー型を諦めざるを得なかったのかもしれない。

メルセデスの2021年型マシン『W12』
メルセデスの2021年型マシン『W12』


 もともと大ダウンフォースを大きめのドラッグとともに得ていたチーム、その大ダウンフォース部分を失いかけたゆえのレーキ角採用ならば、ドラッグ処理はさらに苦しいはず。となると、W12がこれまで通りのアドバンテージを維持するには彼らのメルセデス製パワーユニット(PU)に昨年以上のパワーアップが要求される。

メルセデスF1の2021年型『W12』発表会に出席したルイス・ハミルトン、トト・ウォルフ、バルテリ・ボッタス
メルセデスF1の2021年型『W12』発表会に出席したルイス・ハミルトン、トト・ウォルフ、バルテリ・ボッタス


 直近のホンダ、さらにルノーやフェラーリも今シーズンのPUのパワーアップを明言している。もちろんメルセデスが積み上げてきたアドバンテージはそう簡単に崩れはしないだろうが、もしかしたら彼らへの緊急事態宣言は既に発令されているのかもしれない。


《プロフィール》
津川哲夫(つがわてつお)

1949年生まれ。F1メカニックを志して1977年に単身渡英。トールマン、ハース、ベネトンなどのチームでメカニックを勤め、1990年シーズンでメカニックを引退。その後、F1中継でピットレポートやセッション解説、そして雑誌やwebメディアでメカニック経験を活かしたメカニカルな視点でF1の魅力を伝え続けている。



(Tetsuo Tsugawa)




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