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群を抜く快適性が特徴。サーキットにも街中にも適したマクラーレン750S【F1参戦メーカーのフラッグシップモデル】
2026年4月10日
2026年シーズンのFIA F1世界選手権には、11チームが参戦しており、技術規則が大きく変わった新時代のF1を戦っている。この11チームのなかには7つの自動車メーカーがおり、さらにパワーユニット(PU)の共同開発や供給を行うフォードとホンダ、タイトルパートナーを務めるトヨタを含めると、F1に携わる自動車メーカーは10にものぼる。
そこで今回は、国内外で様々な自動車の試乗会に参加した豊富な経験を持つ自動車ジャーナリストの大谷達也氏が、F1に関係する自動車メーカーのなかからひとつを選び、そのメーカーのフラッグシップモデルの解説やエピソードを紹介する。連載の第1回目は、2025年のドライバーズ選手権とコンストラクターズ選手権を制したマクラーレンだ。
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個人的に好きな量産モデルをひとつ選び、そのクルマにまつわるエピソードを通じて自動車メーカー/ブランドについて紹介する連載の第1回目は、昨年、実に27年振りにドライバーズ選手権とコンストラクターズ選手権のダブルタイトルを勝ち取ったマクラーレンを取り上げる。


マクラーレンの創設者であるブルース・マクラーレンがブルース・マクラーレン・モーターレーシングを設立したのは1963年のこと。1966年からはオリジナルシャシーでF1とスポーツカーレースのCan-Amに参戦するなど、レーシングカーコンストラクターとしての印象が強いマクラーレンだが、ブルース・マクラーレン自身は早くから公道を走れるロードカーの開発に興味を示しており、1970年にはCan-Am用マシンのM6Bをベースにした『M6GT』という試作車を作成すると、ブルース自身が普段の足として活用していたという。
ところが、その数カ月後にブルースはCan-Am用マシンのテスト走行中に事故死。250台を生産する計画だったM6GTのプロジェクトもここで頓挫してしまう。
ブルースの夢が実現したのは、その22年後。ゴードン・マーレイが指揮するマクラーレン・カーズが初のロードカー『F1』を発表したときのことだった。その名のとおり、F1マシン譲りのカーボンモノコックにBMW製V12エンジンをミッドシップし、コンパクトでありながらの高度なエアロダイナミクスと3人が乗車できるスペースユーティリティを実現したマクラーレン初の“量産型”ロードカーは、1995年のル・マン24時間に初参戦すると並みいるプロトタイプカーを押し退けて優勝。マーレイ自身が「F1で10回タイトルを勝ち取るより、ル・マンで1回勝つほうが難しい」と語るほどの偉業を成し遂げたのである。ただし、F1は価格が約1億円と高く、しかも当時の人々はまだその本当の価値に気づいていなかったため、たった106台を生産しただけでその生涯を閉じることになる。
その後、マクラーレン・カーズはメルセデスベンツと提携して『メルセデス・ベンツ・SLRマクラーレン』を世に送り出すが、メルセデスとマーレイの思惑が一致しなかったこともあり、こちらも5年間ほど生産されたところでプロジェクトにピリオドが打たれた。そして、このときマーレイもマクラーレンを離れることとなる。
現在につながるマクラーレンのロードカーが登場したのは、SLRプロジェクトが終了した2009年の翌年、まったく新しい『MP4/12C』が発表されたときのこと。これはカーボンモノコックに自社デザインのV8ツインターボ・エンジンをミッドシップ。高度なエアロダイナミクスや独創的なアクティブサスペンションなどを採用したモデルで、優れた日常性とレーシングカー並みのハンドリングを備えたスーパースポーツカーとして世界中の注目を集めることとなった。
また、MP4/12Cを発表した2010年、マクラーレン・カーズはマクラーレン・オートモーティブに社名変更していまに至っている。
現在、マクラーレン・オートモーティブが生産しているスーパースポーツカーは『750S』、『GTS』、『アルトゥーラ』の3台。いずれもカーボンモノコックとレーシングカー譲りのエアロダイナミクスを採用しているが、このなかでフラッグシップと呼ぶに相応しいモデルが750Sである。技術的に見ると、750SはMP4/12Cをベースに650S、720Sと発展してきたスーパースポーツカーの最新モデルで、マクラーレンのエッセンスがすべて盛り込まれているといっていい。

その印象は、まさに軽快そのもの。4.0リッターV8ツインターボエンジンの最高出力は750psで、これがモデル名の由来となったことはお気づきのとおり。にもかかわらず、乾燥重量は1277kgとコンパクトカー並みに軽いのだから、機敏に走らないわけがない。0-100km/h加速が2.8秒で、最高速度が332km/hと聞けば、その規格外の速さをご理解いただけることだろう。
しかし、750Sはただ軽いだけでなく、ロードカーの常識を越えたダウンフォースとアクティブサスペンションが生み出すロードホールディング(タイヤが路面を捉える性能のこと)が傑出して高いことも特徴のひとつ。また、その車体は単に軽いだけでなく、低重心化やマスの集中といったことにも意が払われているために慣性モーメントが小さく、たとえアンダーステアやオーバーステアが発生しても、それらを直ちに収束できるコントロール性の高さも備えている。

そう聞けば、いかにもレーシングカー的なガチガチのサスペンションを想像されるかもしれないが、実はスーパースポーツカーのなかでは快適性が異例に高いのもマクラーレンの特長のひとつで、1日1000km程度のロングクルージングも楽々こなせるほど乗り心地は良好。しかも視界が広々としているため、多くのスーパースポーツカーが苦手とする“狭い路地での取り回し”も驚くほど優れている。
つまり、サーキット走行も楽々こなす卓越したパフォーマンスと市街地走行も苦にならない実用性の両面を備えているのが750Sなのだ。仕事柄、私は様々なスーパースポーツカーに試乗してきたが、750Sはそのなかでも特に欲しい1台。もっとも、私の懐事情では、およそ4000万円の車両価格は到底支払えそうにない。
そうでなくとも、750SとGTSは衝突被害軽減ブレーキの義務化に伴い、2026年7月以降は販売できなくなることが決まっている。あれほどの名車が法規制の影響で姿を消すとは残念だが、ほどなく登場すると見られる次期型に期待を寄せたい。




(Text:Tatsuya Otani)
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| 2位 | ジョージ・ラッセル | 63 |
| 3位 | シャルル・ルクレール | 49 |
| 4位 | ルイス・ハミルトン | 41 |
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| 6位 | オスカー・ピアストリ | 21 |
| 7位 | オリバー・ベアマン | 17 |
| 8位 | ピエール・ガスリー | 15 |
| 9位 | マックス・フェルスタッペン | 12 |
| 10位 | リアム・ローソン | 10 |
| 1位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 135 |
| 2位 | スクーデリア・フェラーリHP | 90 |
| 3位 | マクラーレン・マスターカード・フォーミュラ1チーム | 46 |
| 4位 | TGRハースF1チーム | 18 |
| 5位 | BWTアルピーヌF1チーム | 16 |
| 6位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 16 |
| 7位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 14 |
| 8位 | アウディ・レボリュートF1チーム | 2 |
| 9位 | アトラシアン・ウイリアムズF1チーム | 2 |
| 10位 | キャデラックF1チーム | 0 |


