ベアマンのクラッシュで“速度差”の懸念が浮き彫りに。日本GP鈴鹿で感じたこと【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第4回】
2026年4月8日
今年で11年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄代表。新規則下での3戦目は、小松代表のホームレースでもある日本GPで、今回はエステバン・オコンが及第点のレースで今季初入賞を果たした。その一方でオリバー・ベアマンは、新しい規則の導入時から指摘されていた、ストレートでの速度差が大きくなることが原因のインシデントに遭い、この規則の安全面での懸念が浮き彫りになった。
また日本GPの前には、愛知県豊田市にあるテクニカルセンター下山を小松代表とベアマン、オコンが訪問したり、東宝株式会社とのコラボレーションによる『ゴジラ(GODZILLA)』をあしらったマシンのスペシャルデザインを発表するなど、ハースにとって話題の多い1週間となった。今回のコラムでは、そんな第3戦日本GPを小松代表が振り返ります。
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■2025年F1第3戦日本GP
No.87 オリバー・ベアマン 予選18番手/決勝DNF
No.31 エステバン・オコン 予選12番手/決勝10位
今年も日本GPが終わりました。今年はグランプリの前の月曜日に日本に到着して、そこから愛知県豊田市のテクニカルセンター下山に行ったり、火曜日は東宝株式会社とのコラボレーションによる『ゴジラ(GODZILLA)』デザインのマシンの発表、水曜日は東京タワーでのイベントと、鈴鹿サーキットに行くまでにとても忙しい日々になりました。
下山には去年に引き続き行きましたが、今年はさらに多くの方々のサポートを感じることができました。アクティビティーもみんなが原点に戻って楽しむことのできるもので、やはりここでも(トヨタの会長を務める豊田)章男さんの想いが感じられました。日比谷で発表したゴジラとのコラボでは、これまでF1になかった新しいことができると思っています。このような新しい機会を通じてハースF1チームやF1のこと自体をもっと多くの方々に知っていただきたいです。

また今年の鈴鹿サーキットは木曜日から多くのファンの方々が来てくれました。最近のF1の盛り上がりが感じられて嬉しかったです。その反面、ファンの方々が唯一チームやクルマの近くに来れるピットレーンウォークが立ち止まり禁止になってしまうなど残念な面もありました。安全確保が第一なのはわかりますが、そのなかでもできるだけこの一瞬を楽しみにしているファンの方々が笑顔で一生の思い出を作れるようにしたいですね。

さて日本GPを振り返っていきたいと思いますが、今回はチームとして今までよりちょっとバタバタしていたと思います。とはいえやらなければいけないことは全部金曜日にこなせたので、またクルマの理解も進みました。でも全体的な流れとしては、FP1があまりうまくいかず、FP2では改善してベースラインもできたので、土曜日のFP3でもう1段階レベルを上げて、というふうに進めていけるかなと思ったのですが、結局FP3でうまくいかず予選に向けて修正をするということになりました。安定して週末を組み立てていくことができなかったので、それが予選でパフォーマンスを発揮しきれなかったことにも繋がったと思います。特にオリー(編注:オリバー・ベアマンの愛称)はQ2に進めなかったですからね。
そのQ1では、ウイリアムズの2台がすべてを出し切るためにソフトタイヤを3セット使ってきました。オリーはセクター1でエステバンよりも約0.2秒速かったので、問題なくQ2に進めるはずでしたが、コミュニケーション不足で「想定していたほどマージンがない」ということがきちんとオリーに伝わっていませんでした。オリーも2回目のアタックで余裕でQ2に進めると考えていたので、余力を残した“安全な走り”をしてしまったのです。

これでオリーは18番手からレースをスタートすることになりました。レースはスプーンでのクラッシュによりリタイアとなり、右膝の打撲はあったものの、幸いなことに大きな怪我をせずにすみました。バーレーンGPとサウジアラビアGPが中止になり、4月はレースがないので、次のマイアミGPまでには完全にリカバリーできると思います。
クラッシュに関しては、あの時のオリーと前を走っていたフランコ・コラピント(BWTアルピーヌF1チーム)の速度差が大きかったことが原因です。僕たちはフェラーリ製のパワーユニット(PU)を使っていますが、アルピーヌはメルセデス製のPUを使っていて、メーカーによってストレートでの速さは異なります。今回のコラピントのエネルギーの使い方だと、ヘアピン(ターン11)からスプーン(ターン13)までの区間以外では、彼の方が僕たちよりもスピードが出ていました。
逆にスプーンの前の直線では、コラピントはあまりエネルギーを使っていなかったので、オリーの方が時速20kmくらい速かったんです。あの場所は頻繁にオーバーテイクが起きるような場所ではありませんが、スピードの違いを考えるとそこが一番チャンスがあるというのはオリーもよくわかっていたので、攻めに出ました。ところがブーストボタンを使用した際に2台の速度差が時速50kmくらいになり、そこでコラピントが少し動いて、オリーが接触を回避するために左側に避けたところ、コースオフしてしまったという状況でした。
やっぱりあの速度差というのは危ないです。以前から言われていたことですし、こういうことが起こるかもしれないと懸念されていたことでもあるので、同じようなことが起こらないように何かを変えなければいけないと思います。何を変えるかというのは現時点ではまだわかりませんが、今回のことを無視せずに対応するべきだとは思います。
それからオリーは後方からのスタートだったので、トラフィックにも苦労しました。特にセクター1は厳しかったです。今年は技術規則が変わったので、去年までのクルマよりも絶対的なダウンフォース量が少なくなりましたよね。その少ないダウンフォースがトラフィックのなかでさらに削られると、鈴鹿のようにタイヤに対する負荷が高いサーキットでは、すぐにタイヤがオーバーヒートして滑るのです。それが顕著に表れました。
■安定したパフォーマンスを発揮したオコンが今季初入賞
一方でエステバンは、安定したパフォーマンスで週末を過ごせていたと思います。先にも書いたとおり、今回は週末を通してクルマが安定しておらず、すべてを出し切る、セットアップ合わせきるというのがなかなか難しい状況でした。そのなかでも予選ではきちんとQ1を突破して、 Q2では12番手でしたけど、まあまあいいパフォーマンスだったと思います。

同じ中団勢では、アウディ・レボリュートF1チームとピエール・ガスリー(BWTアルピーヌF1チーム)がすごく速かったです。ニコ(・ヒュルケンベルグ/アウディ・レボリュートF1チーム)はミスがあったので僕たちは彼に予選で勝ちましたけど、今回はアウディとガスリーには敵わなかったですね。直線上での性能不足というのもありましたが、僕たちがアウディとガスリーに対して劣っていたところがあったので、それは見直さなければいけません。
そういう週末でもエステバンが10位に入賞できたことはポジティブな面として捉えています。セーフティカーの導入がなければ9位は見えていたので、悪くない走りでした。課題はリアム・ローソン(ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム)を抜けなかったことですね。エステバンはローソンより速かったのですが、すべてを出し切れなかったので、その点は残念ですが、全体で見たら今回は及第点のレースですね。よくまとめてくれました。

4月はレースがないので、次戦は5月のマイアミGPになります。1カ月レースがないので、ここまでにやれていなかったことを見直す時間に充てるつもりです。規則が変わって新しいことがいろいろあるわけですが、レースの準備、レース週末中のデータの解析、そしてまた次のレースの準備と、とにかくずっと突っ走ってきました。この1カ月は、何を改善すべきか、どれくらい改良できるかというのをきちんと考えられるいい機会なので、この4月を最大限に活かして、マイアミに向けてもっと高いレベルで準備をしていきたいと思います。



(Text : Ayao Komatsu)
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| 1位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 72 |
| 2位 | ジョージ・ラッセル | 63 |
| 3位 | シャルル・ルクレール | 49 |
| 4位 | ルイス・ハミルトン | 41 |
| 5位 | ランド・ノリス | 25 |
| 6位 | オスカー・ピアストリ | 21 |
| 7位 | オリバー・ベアマン | 17 |
| 8位 | ピエール・ガスリー | 15 |
| 9位 | マックス・フェルスタッペン | 12 |
| 10位 | リアム・ローソン | 10 |
| 1位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 135 |
| 2位 | スクーデリア・フェラーリHP | 90 |
| 3位 | マクラーレン・マスターカード・フォーミュラ1チーム | 46 |
| 4位 | TGRハースF1チーム | 18 |
| 5位 | BWTアルピーヌF1チーム | 16 |
| 6位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 16 |
| 7位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 14 |
| 8位 | アウディ・レボリュートF1チーム | 2 |
| 9位 | アトラシアン・ウイリアムズF1チーム | 2 |
| 10位 | キャデラックF1チーム | 0 |






