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ホンダ『四輪モータースポーツに関する記者会見』質疑応答全文

2023年5月24日

 5月24日(木)、ホンダは『四輪モータースポーツに関する記者会見』を行い、2026年よりF1にパワーユニット(PU)サプライヤーとして復帰することを発表した。PUの供給先はアストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ1チームだ。


 発表後には質疑応答が行われ、本田技研工業株式会社の取締役・代表執行役社長の三部敏宏氏、株式会社ホンダ・レーシング代表取締役社長の渡辺康治氏、アストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズのグループ・チーフ・エグゼクティブ・オフィサーであるマーティン・ウィットマーシュ氏が応じた。以下はその全文である。


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Q:ホンダはこれまでF1に参加、撤退を行ってきたと思うのですが、前回いろんな状況があったとはいえやはり市販車とのつながりがなかったことが大きかったと思います。今回F1に復帰するにあたって市販車とのつながりは考えているのでしょうか。アストンマーティンとの協業みたいなところまでも睨んでいるのでしょうか。


三部:今回の発表はレースに限った話なので、現在量産についての話はしていません。今回のF1参戦の理由は先ほどもお話ししましたように、かつてICE(内燃機関)で頂点を極めたという自負もあり、電動化時代になっても電動化のPUは我々が頂点であるというのを示す絶好の機会であると捉えています。技術そのものも、たとえば今フラッグシップのスポーツカーとかダイレクトにF1のテクノロジーを使えるんじゃないかということで、いろんな検討をしています。今回のF1参戦は技術も含めて我々の電動時代の量産車に使っていきたいと考えています。かつてのようにレースはレース、量産は量産ということではなく、技術は量産車に使っていこうと考えています。


Q:渡辺社長自身は前回の撤退会見も出られて、今回の復帰会見も出られていますが、改めてF1ができることに対する思いを教えてください。


渡辺:非常に嬉しいです。私も新生HRCということで去年の4月に4輪と2輪のモータースポーツを統合させていただいて、しっかりと持続的に継続的にモータースポーツができて、ホンダのブランドに、事業に貢献していくということを役割としてやって参ろうと思っていました。そういう意味では今回カーボンニュートラルの方向にF1が振れていき、電動の比率が従来の2割から5割に上がるというなかで、ホンダグループの電動の動きに対してモータースポーツ側でもしっかり貢献できるということ、それからカーボンニュートラルフューエルの100%使用が義務付けられるわけでそこについても新しい燃料を使いながら内燃機関をどういうふうにしていこうかというところでもモータースポーツのところから切り開いて行って、貢献したいということで非常にわくわくしております。しっかり頑張りたいと思います。


Q:事業としてF1を見るといった時に、今まで一説にはF1の関連投資が4ケタ億円とも言われていました。近年投資の観点で重要視されているグローバルの経営の環境とか、F1参戦をメーカー化することで持続可能ということをおっしゃっているなかで、研究所を含めてF1関連投資の費用対効果の数字を決算時に公開する、ないしはKPIを提示してそれに対して達成した、しないを明確にするというようなお考えはありますでしょうか。


三部:F1関連開発に当然お金はかかるわけですけども、今回のレギュレーションのなかでコストキャップというのがあって、ある一定以上の開発費をかけられないということなので、かつてのように上限なしでということにはならないというふうに考えています。開発費もレースにしか使えないかというとそんなことはなくて、スポーツカー、今開発中のeVTOLという垂直離着陸機のモーターとかにも使えます。バッテリーも、F1のバッテリーは高出力型のバッテリーで、実はeVTOLなんかにもその技術を応用できるということで、どこまでをレースの予算のなかで計算するかというのは非常に難しいんですけども、我々としては全体のレース活動そのもの、総額として一応数字を持っています。今回はそのなかで戦うとを決めていますが、それをKPIとか数字にして表に出すかどうかというのは決めておりません。我々としては十分事業性も加味しながらやっていく。それが継続的にレース活動をやっていくキーになると思っていますので、その辺は参戦決定にあたりかなり役員のなかでも議論しましたので、しっかりやっていくという明確な決意のもとで今日を迎えております。


Q:およそ10年前にマクラーレン時代にホンダと契約されたのがウィットマーシュさんだったと記憶しておりますが、あれから10年経ってまたホンダと、という形になりました。10年前はあまりうまくいかなかったわけですが、今回それから10年見ていて今のホンダと当時は何が違うのか、そして今回契約に結びついた1番の動機になったものはなんだったのか教えてください。


ウィットマーシュ:東京に来てわくわくしております。今日は発表できて本当に嬉しいです。ご指摘の通り私はちょうど10年前にこちらに伺ったと思います。その前に私は4年間とホンダと一緒でした。ですのでいかにホンダがパワフルなことをやっているのかをわかっていますし、レースのヘリテージを持っていること、素晴らしいビジネスをやっていること、過去においては一緒に勝利を祝ったことがあるのでよくわかっています。10年前私は契約を結んだ当事者です。残念ながら私は最後ホンダがF1にマクラーレンと参戦した時にはいませんでした。あまりうまくいかなかったとおっしゃっていましたが、確かにそういったところはあったと思います。今ホンダの成果を見て、そして彼らは2021年も去年も勝っています。私たちが負かさない限りは今年も勝つのではないかと思います。素晴らしい実績だと思います。勝つことに対する情熱はすごいものがあります。私はまたぜひホンダとやりたいと思っていました。それだけにこのようにうかがえることは本当に嬉しく、かつ光栄に思っています。私はいつもホンダへの憧れを持っていましたし、この数カ月間是が非でも一緒にやりたいと思っていたので嬉しいです。


Q:今のアストンマーティンF1の好調を支えているひとつの要因にフェルナンド・アロンソ選手がいると思いますが、当時あまりうまくいっていない時に「GP2エンジン」と言ったという話がありました。3年後なのでアロンソ選手がいるかどうかわかりませんが、この好調ぶりを見ているともしかしたらいるかもしれないくらいの勢いだと思いますが、あのドライバーは嫌だとか言うような可能性はあるのか。アロンソ選手のことだけではなくて、チーム運営は完全に任せ切るのか、それともある程度はそういうことを言えるような立場としてやっていくのか。


三部:過去の話は過去の話として捉えています。アロンソ選手は天才的なドライバーでホンダとしても尊敬しているドライバーであります。2026年はまだ少し先なので、ドライバーについてはなんとも言えませんけども、その辺の選択権はチームが持っていますので、チームにお任せしたいと思っています。今回の参戦は我々はワークス体制で臨みますので、開発は少し始まっているんですけど、車体側からの要求みたいなものも十分取り入れながら車体に合ったエンジン設計をやっていきますので、そういった意味ではかなりハイポテンシャルなクルマにしていけるかなと考えています。


渡辺:今三部が申したようなことなんですけども、非常に苦しい時期を一緒に過ごしましたけれども、結果として我々も努力してパワーユニットとして世界タイトルを獲るということができました。アロンソ選手については非常にレベルの高い天才的な選手だと思っておりますし、そこについては我々もリスペクトしています。ドライバーについても同じです。チーム運営にまったく関わらないということではありませんが、今までのスタンス通りに最終的な決定権はチーム側が持つということで、我々もインプットさせていただきながら一緒にチーム運営できればと思っております。ドライバーについては日本人ドライバーであるとか、HRSからもぜひどんどんチャレンジしていただいて、そこの候補になれるようになっていただけたら嬉しいなと思います。


Q:今回F1参戦を決めた理由としてeVTOLとかスポーツカーにも貢献があると伺ったんですけど、実際にその知見を他の事業にうまく共有していくとか、伝えていくという仕組みとか体制作りとかも今後進めていくんでしょうか。具体的なアイデアがあれば教えてください。


三部:当然HRC主体でやっていきますけど、要素技術としては非常に高出力のバッテリーを作ったり、それに合わせてモーターも高性能のものになるわけですが、そういうファンダメンタルな技術というのはを研究所側が持っています。武石(伊久雄)というセンター長がHRCを兼ねておりますので、その辺で人でうまく繋ぎながらレースの開発、モビリティの開発をバランスよく進めていきたいと思っています。


Q:アストンマーティン側がホンダを必要としている理由というのはよくわかりました。ホンダ側はアストンマーティン以外にもたとえばマクラーレンとかウイリアムズとか他にも候補があったと思うのですが、アストンマーティンが決め手となった理由はあるのでしょうか。


三部:去年の11月に2026年からのパワーユニット製造者登録をさせていただきました。その後に複数のチームといろいろと将来について議論をする場があり、そのなかのひとつにアストンマーティンがあったということです。いろんな議論をさせていただくなかで、最も勝ち、チャンピオンへの情熱を強く感じたということです。私も直接新しいファクトリーに伺って中身を見せていただいたりしましたけども、いろんな人、物に対する投資をかけながら、着実にステップアップしていくというところ、また我々のパワーユニットに対しても非常に高い評価をしていただいて、ぜひ一緒にやろうとアストンマーティン側だけがそう思っているのではなく、我々も心からそう思いました。それでアストンマーティンとやらせていただくということになりました。


Q:これまでのホンダのF1活動というと、ブランディングとかマーケティングが重視されていないイメージがあったんですけど、今回のF1活動に対してどうお考えでしょうか。たとえばHRCが独立してやっていくとか、そういう可能性もあったりするんでしょうか。


渡辺:非常に痛いご指摘なんですけど、やはりしっかりとモータースポーツ活動を通じてそのブランドを高めていくという必要があると思っていまして、我々のやり方ではまだまだだと認識しております。具体的にまだどうこうということではないが、アストンマーティンのみなさんと見ながらしっかりとF1の活動をマーケティングに活かせるようにしていきたいと考えています。


三部:過去との変化点でいうと、みなさんご存知のようにアメリカ、北米においてF1の人気が急速に高まっているということで、今年もアメリカで3戦、カナダとメキシコを入れると5戦のレースがあります。今までアメリカという国はあまりF1に興味を示さなかった。(アメリカは)マーケティングとかブランディングの我々の主力市場ではありますが、あまりうまく使えなかったというのが事実です。そういう流れのなかで言うと、当然マーケティング、ブランディングに最大限使っていこうと考えています。


Q:開発体制について先ほど三部社長から「(開発は)始まっている」と伺いましたが、本格的に開発体制が整うのはいつからと言えるのか。新しい燃料の開発をやっていると思いますが、2026年からF1で使う燃料はどこから調達すると考えているのか。


三部:昨年8月に2026年のレギュレーションが決まり、何がキーとなるかをスタディして、そこの要素についてすでに研究を始めています。エンジン側の要素技術について、電動側の要素技術について、それぞれ今ばらばらに研究しているんですけれども、速やかにそれを1台分のパワーユニットとして、テストをしていくというのが次のステップになります。その次のステップの時にはもう少し開発体制を強化していく必要があると思っています。


 カーボンニュートラル燃料については、チームのスポンサーである『アラムコ』が一緒にやることになっていますので、アラムコと速やかにテクニカルワークショップを設けて、どういう段取りでやっていくかをこれから進めていきたいと思っています。


 一般的に第4期と言われる時代に、初期の段階でまったく勝てなかったという時代が数年続きました。第3期と第4期の間は7年間あり、まったく研究開発を止めていたというところで、第4期の初めに7年前の技術をベースにスタートしました。7年間のブランクは非常に大きくて、それをリカバリーするのに数年かかったという反省も踏まえて、今回撤退の後も要素技術研究というのは続けておかないとダメだと言うことで、だいぶお金もかからないというのがあって続けていました。その後製造者登録をしないとエンジンのレギュレーションに入り込めない、作れないということになるということで、登録だけはしようかと。当時は2026年に参戦するとまったく考えていないなかで、製造者登録をしました。それは情報としてオープンになるので、それ以降いろんなチームからお話が来て、2026年に本当にやるのかという話をしたんですけど、いろんないい話をいただきまして、特にアストンマーティンの絶対勝つんだという熱意、考え方、方向性がホンダと近いということで今日の発表に至っています。(研究を)続けていたのでゼロからのスタートということではないので、今回は2026年の頭から勝てるようなポテンシャルで参入していきたいと思っていますので、今の開発のメンバーを叱咤激励しながらスタートからいい結果を残していきたいと考えています。


Q:アストンマーティンとホンダの契約が正式にまとまったのはいつ頃になるのでしょうか。


渡辺:正式にまとまったのは先月(4月)です。


Q:F1の技術が高性能車の製造に活かせるという話がありましたが、アストンマーティンと組むことによって量産車でも知見を出し合って車ができるという可能性はあるのか。


三部:今回はレースに限って話をしてきたということで、今後の可能性としてはないということはない。まずは我々としてはF1の開発に集中していい結果を出すことに集中したいと思っています。量産については別のメンバー、別の席で話すのであればそういうことになると思う。今回の発表については、量産の話はまったく入っていません。


Q:カーボンニュートラル燃料について。EUでは合成燃料についてはエンジン車でも新車販売ができるような状況ができてきたり、広島サミットでも合成燃料についての取り組みが示されたりしましたけど、御社は2040年までにEVとFCVを100%にしていくという流れを表明されています。一方社会の状況がエンジン車でも車を作る可能性が広がっているなかで、ホンダとして2040年以降エンジン車の投入を改めて考えるという機会というのは今回の件も含めてあるのでしょうか。


三部:発表してきたように、我々は電動化に舵を切るということなので、内燃機関を残していくという計画は現在ありません。e-fuelについてはずっと研究を続けています。ひとつは、我々は飛行を機を持っていますので航空機の燃料として研究するということ。それからeVTOLもガスタービンの発電ユニットがついていますので、その燃料も当然サステナブルでならないということなので、e-fuelが使えるということで研究しています。現実問題として2035年とか2040年に外を走っている車がいきなり燃料がありませんとか、そういうことは現実としてあってはならないだろいうことで、保有者の観点ではe-fuelの技術は準備しておくべきだと思っています。


 ただe-fuelってかなりコストも大きな課題としてありまして、たとえば昔のスポーツカーを趣味で持っている人は燃料代が何倍でも週末乗るくらいは成り立つと思うんですけど、経済合理性の観点からはなかなかマジョリティにはならないだろいうことで、飛行機とか代替手段のないモビリティについてe-fuelが有効であろうということで研究しています。F1もそういう燃料に変わっていくということで、我々の知見、アラムコの知見を併せながら2026年に最高の燃料を作っていきたいというとことです。


Q:今年に入って御社の契約ドライバーである角田(裕毅)選手がかなり調子がよくて成績が上がってきている感じなんですけど、2026年に向けて早すぎるとは思いますが、角田選手がこの契約に絡んでくる可能性があるのでしょうか。それから角田選手をどう見ていますか。


渡辺:角田選手は我々の育成ドライバーの出身ということで、今非常にF1のなかで活躍してくれていて大変嬉しく思っています。3年くらい先の話なので今どうこう言えるタイミングではないと思いますけど、ぜひそこに絡んでくれたら嬉しいなとは思います。ただしそれはチームが最終的に決定するということであります。


ウィットマーシュ:彼は今年本当に活躍しています。若いですし、ある程度経験を持っていますのでかなり伸びていると思います。非常にエキサイティングです。ドライバーラインアップも2026年までに進化することは確かだと思います。アストンマーティンとしてはベストなふたりのドライバーを持ちたいと思っています。私たちは勝つためにやりますので、一緒に勝ちたいので素晴らしいドライバーが欲しいです。彼は候補として考えられると思いますし、ホンダエンジンを積んだクルマに乗りたいと思うと考えていますので、この先2年くらいでどのように成長するのかを真剣に検討したいと思います。


Q:今回再挑戦を決めた背景について。F1参入には多額の投資が必要になるということを撤退時の要因として挙げられていましたが、そこからの変化としては4輪の事業構造の改革などあったと思うのですが、現在の事業構造ならF1への投資を継続的にできると状況にあると判断されたということでよろしいでしょうか。


三部:結論としてそういうことです。開発費を含めてかなり議論はしました。ひとつは、先ほども言ったようにブランディングとかマーケティングみたいなものにもフルに使っていこうと。2輪は比較的うまくレースとリンクしてやってきたところもあり、4輪も今回はそういうことをやっていこうという話。それから2輪、4輪含めてトータルでレースの費用を見ながらコントロールし、決して増額するということではなく、うまくやっていくと。我々の許容範囲のなかでF1もできると判断していますので、今回F1参戦が事業にマイナスのインパクトを持つということはないとご理解いただければと思います。むしろ今回プラスにこれを使っていくぞということですね。ぜひいろんな取り組みをやっていきたいと思っています。


Q:先ほどお話のなかで、ここから得られる技術やノウハウは量産車の競争力に直結する可能性があるという発言がありましたが、F1における脱炭素技術導入が進むことで、今後参入しないことで技術開発で遅れを取ってしまうような危機感みたいなものもあるということなんでしょうか?


三部:電動化技術について劣っているという感覚はまったくありません。我々は十分技術を持っているということで、先ほども言ったようにそれを証明する最高の場であるというような判断をしています。量産というのは非常にコストの制約があってその技術を極めるというと非常に難しい部分もあります。F1の電動化はモーターバッテリーのマネージメントシステムを含めてかなり新しい技術が入ってきますので、その技術は何としても量産車にフィードバックしたいです。電動化技術が遅れるからということを考えてF1に参戦したわけではなくて、むしろ逆ですね。エンジンのホンダとは言われていましたけども、電動の時代になってもそのPUの優位性を十分示せると思っていますので、そういった意味では2026年に期待していただけたらと思います。


Q:F1の再挑戦では、当然技術的な面、人の面、カーボンニュートラルでいろいろあると思うんですけれども、ホンダがよく言っている「やりたいからやる」というパッションの部分について三部社長どのようにお考えなのか教えていただければと思います。


三部:レースであっても量産の技術であってもエンジニアたる者は与えられた場で最大限の能力を発揮すべしということでやってきたので、特にレースを特別扱いしてるわけではないです。今回要素技術は続けていたとお話しましたけども、レギュレーションが固まってくるにしたがって「やっている要素技術をもう活かせるじゃないか」、技術開発のうえでも「もう参戦する意味はある」とエンジニアたちから熱い声が出てきたというのも事実で、正直私としてはそういう声が出てくると嬉しいんですね。それがあったから見たわけじゃなくて、もっと冷静にいろいろ分析して決めてますけども、ひとつの理由になっていることは事実ですね。やはりその現場の熱意、意思、そういうものが最終的には勝利に繋がると思ってますので、今回また一生懸命やって、ぜひ頂点を目指したいと思っています。


Q:今回の発表は2026年にアストンマーティンへのパワーユニットサプライヤーとしての復帰という発表でしたけども、ホンダ側としてそれ以外の可能性、選択肢というものを何か視野に入れてることはあるのか。他のチームのサプライヤーであるとか、フルワークスとしての参戦といったことなど。それからマーティンさんには、アストンマーティンとしてホンダに求めていること、もしくはこれからいろいろと求めていきたいことっていうのは何かお考えがあるのかまずお聞かせください。


渡辺:アストンマーティンに対しては唯一のワークス供給ということで、1チームになります。ユーザー供給について別に否定するものではまったくありませんけれども、現時点ではまったく計画はないという感じです。


ウィットマーシュ:アストンマーティンからホンダに求めるものは、私たちは小さいチームでありますし、まだ学んでいる立場でありますので、本当に謙虚な気持ちで組ませていただくということです。学びたいと思ってますし、ぜひ私たちと一緒になっていろいろと教えてください。学びを助けてください。私たちは情熱を持っています。15カ月間本当にモーメンタムであることを示したと思いますけれども、ただ勝つ準備はまだ万全ではありません。今年も頑張ります。私たちはずいぶんやって来ましたけれども、でもまだ道のりは長いと思います。ですからホンダの言うことを聞いてもっとよくなるということで、素晴らしいパートナーシップを楽しみにしております。もちろん私たちはパワフルなPUが2026年に出てくることを期待しています。そして1年目から勝つことを考えていますけれども、いろんなことを学びたいと思いますので、それができることを楽しみにしています。


Q:アストンマーティンとの提携関係、マシンの開発、PUの開発、供給の体制とかを含めて、現在はHRCとしてレッドブル・パワートレインズに供給していてそれが2025年まで続くわけですが、それと並行して、アストンマーティンとの間でどのようにこの提携関係を構築していくのか。タイムラインのようなものがあれば、教えていただければと思います。


渡辺:それぞれの役割分担は、供給体制も含めてこれからの協議になるので今の時点でははっきりと申し上げられることはないです。大きく言うとレッドブルとHRCの関係と大きくは変わらないと思いますけど、これからの詰めていくということになります。


ウィットマーシュ:現在のPUパートナーには理解してもらっており、我々の勝利への情熱も理解してくれていますので、それに基づきホンダと素晴らしいパートナーシップを締結する決意に至りました。既存のパートナーとは2年半もうすでに手を組んでいますので、この2年半の間ホンダとも同じように取り組んでいきたいと思います。様々なプロジェクトチームを設置しホンダとも話を進めております。ホンダの知見や指導を最大限活用し、2026年に向けて取り組んでいきたいと思います。新しいレギュレーションは非常に高度なPUと車体との統合を要求していますので、それもこのパートナーシップを組んだひとつの理由です。2026年に勝つということは、完全に統合されたパートナーシップ関係がなければ非常に難しいと思います。このパートナーシップは非常に素晴らしいものです。我々はただ単にそのPUの1カスタマーにすぎません。将来に向けてホンダと手を取り合って最適化を図り、パッケージングの最大化を図っていけることを楽しみにしております。エネルギーをすべて活用し、レースに臨むということが非常に重要です。そのためにはチーム一丸となって取り組むことが大切であると考えます。


Q:F1復帰を大歓迎しております。アストンマーティンとの交渉はいつ頃からどのような形で進んでいったのでしょうか?


渡辺:具体的には年明けから本格的ないろいろ議論になりました。1月ぐらいからです。先ほど申し上げたように、4月に基本骨格のところが合意できたというような経緯があります。


Q:アメリカ市場のF1人気は、F1復帰の決断にどのくらい影響しましたでしょうか?


三部:どれくらい? 難しいな。決断の要因のひとつになったことは先ほど言った通りであると思うんですけど、今回の決断の主な部分は、我々の目指す方向とF1のレギュレーションの方向が合致したというのが一番の理由です。これは必ず電動化時代においては非常に有意義な参戦になるというふうに考えたということです。アメリカの話はそのなかの一部でありますけども、我々は他のレース活動もアメリカでやっていますので、うまくバランスを取りながら、モータースポーツの発展、それから最終的には自動車産業の発展というものにも繋げていければなと思っております。


Q:初年度からチャンピオン獲得を目指しているとは思いますが、そこに向けた具体的な取り組みにおける本気の度合いを過去と比べて可能な範囲で教えてください。


ウィットマーシュ:アストンマーティンの過去18カ月間の経緯をご理解している方はわかったと思いますが、非常にアグレッシブに最大のタレントを追求してきました。そして施設への投資を本格的に進め、トップレベルを目指して取り組んできました。そして必要なプロセスを構築中です。まだまだそのプロセスの初めの方にいますが、これまでのパフォーマンスの進捗状況は順調です。まだまだ謙虚にホンダから学習し、独自に開発することは山ほどあります。このスポーツでは本格的な情熱とやる気とハングリー精神がなければ最高峰のレースで成功を収めることはできません。我々は確固たる決心があります・ローレンス、そして他のチームがここにいるのは勝つためですので、非常にわくわくしております。そしてホンダも非常に大きな情熱を持ち、絶え間ない努力を続けて勝利に向けて取り組んでいるので大変嬉しく思います。ですから勝つという目標を2026年に掲げています。そして、その後も一貫して勝利していく所存です。非常に熾烈な厳しいバトルですが、協力を保ったまま続けていきたいと考えています。


渡辺:新しく2026年から始まるレギュレーションは、カーボンニュートラルに向けて大幅に変わっていくので、非常に厳しい調整になりますし、チャンピオンというのがそんなに甘いことでないというのも十分に認識しておりますけれども、とにかく勝ちにこだわってやっていきたいと思っております。それからHRCだけではできない部分について必要に応じてオールホンダのノウハウを活用しながら、トップを目指してやっていきたいというふうに思います。


Q:ホンダはかつてF1エンジンプロジェクトに多大な資金を投入していました。今回はもっと財務的に持続可能なプロジェクトになるのでしょうか。そして、その点は決定において重要な要素でしたか。以前と同じだけの金額になるというような、そういった発表はありますか。


三部:研究開発費についてはお伝えすることはできませんが、先ほども言ったように、レギュレーションで開発費がキャップされているので、過去我々が投じてきた開発費に膨らむということはまずないということですね。今回そういう開発費がキャップされてるなかでの戦いとなるので、勝敗を分けるのはその開発の効率みたいなものだと考えています。かつては試作品を山ほど作ってそれを高速で回すというような開発の仕方をやっていたわけですけども、今回は非常に効率を上げた開発手法を使って、コストをできるだけかけずに、勝てるパワーユニットを作るというふうにも思ってます。先ほど言いましたけど、開発については十分全体のレースのなかで吸収していけると考えていますので、そういった意味ではかつての開発費の……言えないな(笑)。かなり少ない、当時使っていた額よりもかなり少ない数字にはなります。



(autosport web)


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