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【F1第21戦無線レビュー】「そういうことは二度と頼まないでくれ」無線に応えず、順位の返還を拒否したフェルスタッペン

2022年11月18日

 2022年F1第21戦ブラジルGP。予選ではケビン・マグヌッセンが自身、そして所属するハースF1チームにとっても初となるポールポジションを獲得し、決勝ではジョージ・ラッセルがキャリア初優勝を飾るなど、新たなヒーローが誕生した週末となった。一方ダブルタイトルを獲得したレッドブルでは、レース終盤に思わぬ問題が発生した。そんなブラジルGPを無線とともに振り返る。


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 単なる無線のやりとりから、かなり赤裸々な人間関係が窺える。今年のブラジルGPは、そんな週末だった。


 ジョージ・ラッセルとルイス・ハミルトンが最前列に並び、今季初めてメルセデスがフロントロウを独占した。


 スタート直後、ケビン・マグヌッセン(ハース)がダニエル・リカルド(マクラーレン)に接触され、2台がリタイア。1周目からセーフティカー(SC)が導入された。


L1
マグヌッセン:ごめんね。押されて、リタイアになってしまった。

ケビン・マグヌッセン(ハース)&ダニエル・リカルド(マクラーレン)
2022年F1第21戦ブラジルGP オープニングラップでダニエル・リカルド(マクラーレン)とケビン・マグヌッセン(ハース)が接触


 7周目のレース再開。3番手のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がスタート加速でハミルトンに迫り、ターン1でアウト側から抜きにかかったが、2台は接触。フェルスタッペンはフロントウイングにダメージを負って大きく後退した上に、5秒ペナルティまで科されてしまう。


ハミルトン:あれは、レーシングインシデントじゃない

2022年F1第21戦ブラジルGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)とルイス・ハミルトン(メルセデス)が接触


 いったんは8番手まで順位を落としたハミルトンだったが、先行車を次々にかわし、45周目にはセルジオ・ペレス(レッドブル)も抜き去って、2番手に復帰。再びメルセデスの1-2体制となった。


 55周目、ランド・ノリス(マクラーレン)がコース上に止まったことで、まずバーチャルセーフティカー(VSC)。続いてSCに変更される。これで優勝を争うラッセルとハミルトン、そして3位争いのペレスとサインツのギャップが、一気に縮まった。

2022年F1第21戦ブラジルGP トラブルでストップしたランド・ノリス(マクラーレン)のマシン
2022年F1第21戦ブラジルGP トラブルでストップしたランド・ノリス(マクラーレン)のマシン


L55
ラッセル:どうするの? 1-2をキープするの? それともレースするの?
リカルド・ムスコーニ:レースする。ただしお互いのリスペクトを、忘れずにね。


 ラッセルにしても、当然自分の首位が安泰だとは思っていない。それでも一応、釘を刺しておこうということなのだろう。なにしろ初優勝が、かかっているのだから。もちろんハミルトンも、アピールを忘れない。


L56
ハミルトン:背後にニュータイヤの連中がいるんだけど


 実際にはハミルトンよりタイヤ寿命が若いのは4番手のサインツだけで、それほど脅威を感じているわけではないだろう。


 背後ではメルセデス同様、チームメイト同士で並んでいるアルピーヌの2台がもめていた。8番手のエステバン・オコンが、チームからの指示に真っ向から異議申し立てをした。


L58
ジョシュ・ペケット:後ろのフェルナンドの方が、タイヤのアドバンテージがある。ベッテルの前に出ることに集中したい。2台でレースしないことを確認してくれ。
オコン:僕にレースさせてくれ! リスタートで遅れを取りたくないし。
ペケット:いいか、エステバン。フェルナンドと戦うことは認めない。わかったか。
オコン:ベッテルを抜きたい。フェルナンドと、レースするつもりはないよ。
ペケット:それは、かまわない。ただフェルナンドの邪魔をするな。


 7番手ベッテルは13周走ったミディアムタイヤ。オコンは11周のソフトタイヤ。再スタートで抜ける、抜かせてくれと懇願した。しかしオコンのすぐ後ろのアロのタイヤは、6周のソフト。チームにしてみれば、とにかくオコンがアロンソをブロックするようなことは避けたい。


 そして60周目のリスタート直後、2台は次々にベッテルをかわしていく。さらにアロンソがあっさりと、オコンを抜き去っていった。

フェルナンド・アロンソ&エステバン・オコン(アルピーヌ)
2022年F1第21戦ブラジルGP フェルナンド・アロンソ&エステバン・オコン(アルピーヌ)


 一方使い古したミディアムで走り続けるペレスは3番手からズルズルと順位を落とし、終盤65周目にはアロンソにも抜かれて6番手に。背後にはフェルスタッペンがつけた。


L67
ジャンピエロ・ランビアーゼ(→フェルスタッペン):ルクレールとアロンソをやっつけてくれ


 これでペレスはフェルスタッペンに順位を譲った。しかしそこからのフェルスタッペンのペースが、思ったほど伸びない。

マックス・フェルスタッペン&セルジオ・ペレス(レッドブル)
2022年F1第21戦ブラジルGP 順位を入れ替えたマックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレス(レッドブル)


 一方、4番手のルクレールは、チームにこんな要求をした。


L68
ルクレール:順位がこのままだったら、チャンピオンシップのことを考えてくれ!
マルコス・パドロス:了解した。


 この時点でルクレールは、ドライバーズ選手権2位のペレスを5ポイント差で追っていた。ペレスが苦戦している今、選手権2位を奪い返す絶好のチャンスだ。3番手サインツと、順位を入れ替えさせてくれという婉曲な依頼だった。とはいえサインツが、せっかくの表彰台を簡単に譲るはずもない。しかしルクレールにしてみれば、これまで何度も散々な目に遭ってきたのだから、という思いだっただろう。


ルクレール:ポイントのことを考えてくれ
マルコス・パドロス:それはリスクが大きすぎる
ルクレール:すごいジョークだね


 最終的に、ルクレールの願いは拒否された。

シャルル・ルクレール(フェラーリ)
2022年F1第21戦ブラジルGP シャルル・ルクレール(フェラーリ)


 そしてレッドブルの2台は、フェラーリ以上におかしなことになっていた。


L71
ランビアーゼ(→フェルスタッペン):もしアロンソを抜けないなら、取り決め通りチェコを前に行かせてくれ


 フェルスタッペンからの返事はない。


ランビアーゼ:マックス、チェコを先に行かせてくれ。マックス、お願いだから
フェルスタッペン:(無言)
ランビアーゼ:マックス、どうしたんだ。
フェルスタッペン:前にも言っただろう。僕にそういうことは、二度と頼まないでくれ。わかったか? 前に理由は言ったし、それが正しいと僕は思ってる。


 こうしてフェルスタッペンは最後までペレスを先行させず、6位チェッカー。ペレスは7位完走。ルクレールも順位を譲ってもらえなかったが、4位に入ったことでペレスから選手権2位を奪うことに成功した。


チェッカー後
マルコス・パドロス:チャールズ、4位だ。素晴らしい仕事だ。
ルクレール:なんだって?
マルコス・パドロス:素晴らしい仕事だ、と言ったんだ。
ルクレール:素晴らしい。確かにね。
メキーズ:よくやった、チャールズ。順位のことは、理由がある。あとで話そう。
ルクレール:なんの理由なんだろう……。僕にはわからない。でも、もういいよ。


ヒュー・バード:マックスは譲ってくれなかった。
ペレス:そうか、それは本当にありがとう。
クリスチャン・ホーナー代表:チェコ、本当に申し訳ない。


ペレス:彼が本当はどんな人間か、ということだね


 レース後のインタビューでもフェルスタッペンは、譲らなかった理由を語ることを避け続けた。一方でペレスは、「彼がふたつのタイトルを得られたことは、僕に感謝してくれないとね」と、吐き捨てた。


 ここまで完璧なシーズンを送ってきたように見えるレッドブルだが、この一件はしばらく尾を引きそうだ。



(取材・まとめ 柴田久仁夫)


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ドライバーズランキング

※アブダビGP終了時点
1位マックス・フェルスタッペン437
2位ランド・ノリス374
3位シャルル・ルクレール356
4位オスカー・ピアストリ292
5位カルロス・サインツ290
6位ジョージ・ラッセル245
7位ルイス・ハミルトン223
8位セルジオ・ペレス152
9位フェルナンド・アロンソ70
10位ピエール・ガスリー42

チームランキング

※アブダビGP終了時点
1位マクラーレン・フォーミュラ1チーム666
2位スクーデリア・フェラーリ652
3位オラクル・レッドブル・レーシング589
4位メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム468
5位アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム94
6位BWTアルピーヌF1チーム65
7位マネーグラム・ハースF1チーム58
8位ビザ・キャッシュアップRB F1チーム46
9位ウイリアムズ・レーシング17
10位ステークF1チーム・キック・ザウバー4

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