14番グリッドから勝利を手に入れたドイツGPの日曜日を、ルイス・ハミルトンは「輝かしい1日」と表現した。ゴール後にサーキットを襲った豪雨さえ「聖書に出てくる嵐のよう」と感じたほど、奇跡のようなレースだった。
ハイドロ系のトラブルによって予選Q1の最後に止まってしまった時には、大きな落胆が彼の全身を覆っていた。シルバーストンの失敗の後、研究を重ねたスタートも、ほとんど役に立たなくなってしまった。ライバルのセバスチャン・ベッテルはポールポジションに歓喜し、3位で続いたキミ・ライコネンがフェラーリの強さを証明していた。
「彼らはストレートで信じられないくらい速い。バルテリ(・ボッタス)の予選は僕も見ていたし、彼は本当に最高のラップを実現したと思う。でも、フェラーリに対してはストレートでタイムを失っていた」
それでも客観的に考えれば、ハミルトンが失意のままに日曜日を迎える理由はひとつもなかった。彼自身のなかでも「信じれば叶う」思いは、日曜のレースに向かって徐々に具体性を帯び、エンジニアたちの言葉がさらにその思いを補強していったはずだ。
ホッケンハイムのコース特性を考えれば、14番手というスタート位置は決定的なハンデとはならない──。フェラーリの2台、ボッタス、そしてマックス・フェルスタッペンが順当にトップ4を構成すると考えて、ハミルトンが5番手まで挽回するのは時間の問題。課題は、そこから先の勝負を有利に進めるためにはどんな作戦が有効か、ということだった。
日曜日のスタート直前。60%という降雨確率も、ハミルトンとメルセデスに勇気を与える予報だった。予選Q3でボッタスのセクター3タイムが示したように、彼らのセットアップはフェラーリよりダウンフォースを重視したものだった。たとえ、それがタイヤを守るための選択であったとしても、レース中に雨が降れば大きなアドバンテージになる。
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スタート時の路面温度は44℃。ソフトで発進したハミルトンは前の2台をかわしつつ、ウルトラソフトで15番手からスタートしたエステバン・オコンにはいったん先行を許し、2周目のターン1でフォース・インディアからポジションを取り戻した。その後のオーバーテイクはすべてターン6のヘアピン──。14周目にケビン・マグヌッセンをパスして5番手まで浮上した時、首位ベッテルとの間隔は25.6秒だった。