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【ピエール・ガスリー密着コラム】強気と弱気の間を揺れ動いた、トロロッソ・ホンダ初戦の週末。アグレッシブな開発計画に期待かける

2018年3月30日

 2018年、ホンダF1はトロロッソと組んで新しいスタートを切った。新プロジェクトの成功のカギを握る期待の新人ピエール・ガスリーのグランプリウイークエンドに密着し、ガスリーとトロロッソ・ホンダの戦いの舞台裏を伝える。


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 F1の第1公用語は、圧倒的に英語である。なので言うまでもなくピエール・ガスリーも、流暢に英語を話す。とはいえフランス人ジャーナリストたちとは、当然ながらフランス語でやり取りする。


 かつての小林可夢偉選手もそうだったが、レース週末に英語漬けを強いられる中、母国語での会話はリラックス効果がある。英語の囲み取材ではちょっと緊張した面持ちだったガスリーも、フランス人に囲まれると明らかに表情が緩んでいた。緩み過ぎて、「やっぱりグリッドガール、いた方がいいよね」とか、「レッドブルの新製品、メチャクチャ美味しいよ」とか、およそ記事にならないことを話し続けるのも、可夢偉選手と同じだったが(笑)。

2018年F1オーストラリアGP 取材に応じるピエール・ガスリー(トロロッソ・ホンダ)

 しかしそれが一段落してからは、たとえフランス人相手でもすごく真面目に今後の抱負を語っていた。その顔にはフル参戦初年度の初戦というだけではない、ある種の気負いも感じられた。


 ガスリーたちレッドブルドライバーは、厳しい評価の目に絶え間なく晒されている。あれだけ将来を嘱望されたダニール・クビアトがあっという間に転落していったのを、ガスリーはすぐ間近で見ていた。そしてルノーに移籍したカルロス・サインツJr.が、いきなりの速さを発揮したことも。


 ガスリー自身、ここまでレッドブルの期待に応えて、実績を積み上げてきた自負はある。GP2でチャンピオンになり、慣れない日本で最後までタイトル争いに絡む活躍を見せた。なので「ダニエル・リカルドが来季レッドブルを去る可能性があるよね?」という微妙な質問に対しても、「もちろん意識してる。近い将来の目標は、タイトルを狙えるチームで走ることだから」と、誤解しようがないほどはっきりと答えていた。


 そして「では今季の目標は?」という問いには、「チームメイトを上回る結果を出すこと」と即答した。ドライバー人事権を一手に握るヘルムート・マルコ博士に評価され、レッドブルに昇格することしか、今のガスリーは考えてないと言ってもいい。

2018年F1第1戦オーストラリアGP ピエール・ガスリーが駆るトロロッソSTR13・ホンダ

 予選最下位に直結した痛恨のブレーキングミスは、本人は「ブレーキが温まり切れてなかった状態にもかかわらず、ほんのわずか攻め過ぎた」と冷静に振り返っていた。しかしもしかしたら上述したような気負いも、遠因だったのかもしれない。抜きにくいアルバートパークでは、予選でひとつでも上のグリッドに入る必要がある。初日フリー走行でロングランペースに不安を抱えていたことによって、「予選で何とかしなければ」といっそう力が入ってしまった可能性もある。


 そしてレースでは好スタートを決めて、3つ順位を上げたものの、MGU-Hにまさかのトラブルが発生し、リタイアに終わった。


 本人のミスとホンダのトラブル。ガスリーにとっては最悪の開幕戦となってしまった。レース後、待ち受けるわれわれの前に姿を見せたガスリーは、まだ少し動揺しているように見えた。


 ちなみに今季はフランス人ドライバーが、ガスリーの他にロマン・グロージャン、エステバン・オコンと3人になり、何と最多勢力だ。そこに同じフランス語を母国語とするモナコ人のシャルル・ルクレール、ベルギー人のストフェル・バンドーンを加えれば計5人になる(バンドーンは正確にはフラマン語とのバイリンガルだが)。

開幕戦の集合写真撮影の際に会話をかわすピエール・ガスリーとシャルル・ルクレール

 そんな中でガスリーは、最もラテン気質の血中濃度が濃いように見える。要するに感情の起伏が激しいということだ。スイスとの二重国籍のグロージャンも、「性格はスイス人になってほしい」と小松礼雄チーフレースエンジニアが苦笑するほど激しい気性だが、さすがにベテランの今は自分をかなりコントロールできるようになった。


 しかしF1デビュー間もないガスリーは、まだ自分の感情を隠すことが下手だ。そしてこの席での彼は、言うまでもなく落胆をあらわにしていた。


「トロロッソもホンダもすごくアグレッシブな開発計画を立ててるし、今後については全然心配してない」と言いつつ、「でも(パワーユニット)4基目のペナルティは、覚悟しないといけないかも」と、弱気になってみたり。しかし本人も最後に言っていたように、「シーズンはまだ始まったばかり」である。来週のバーレーンには、また明るい笑顔でフランス人ジャーナリストたちのイジリに喜んで応えていることだろう。



(取材・文 柴田久仁夫)


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