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キャデラックF1が大きな節目をクリアか。シャシー初号機がFIAホモロゲ試験に合格

2025年12月17日

 複数のチームが来季2026年向け新型モデルのローンチ日程をアナウンスするなか、デビューを目指すキャデラックF1チームが「大きな節目」をクリアしたと、イギリスの新進気鋭F1専門ウェブサイトである『The Race.com』が報じている。


 この12月初旬にも、キャデラックF1は「車両後部全体とモノコック自体」について、FIA国際自動車連盟の必須ホモロゲーション試験に合格したとチーム代表のグレアム・ロードンが明かした。

 大規模な技術規定の改変を前に重要な準備期間となるこのオフだが、全チームともに年明け早々の1月には早くもサーキットデビューが控える。その新時代を前に、FIAの技術規則は17ページにわたり20以上の項目を詳細に規定しており、車体前後の衝撃構造、サバイバルセル(モノコック自体)の試験、エンジン分離計算など、あらゆるな項目のホモロゲーション、および試験要件が記載されている。


 キャデラックがクリアしたシャシー試験では、少なくとも52Gの力による前面衝突試験が含まれており、設計中のギヤボックスケーシングとリヤ衝撃構造は、地面に固定された状態で875kgの固体を毎秒11メートル以上の速度で衝突させる動的後面衝突試験に耐えなければならない。


 キャデラックF1にとってデビューイヤーの来季は、ゼネラルモーターズ(GM)の自社製ユニットでなくフェラーリ製のパワートレインを搭載する予定だが、12月初旬までにこれらのテストに合格できたことは「キャデラックF1チームの設計グループにとって本当に誇りに思えることだと思う」と、ロードンも安堵の言葉を残した。


「新しいフォーミュラ1における設計上の課題を見てみると、車両重量が大幅に軽減されているため、これらのテストは実質的にますます厳しくなっている。なぜなら、車両全体の質量を(安全性や強度を確保しながら)低く抑えることが目標だからだ」と続けたロードン。


「だから、どのチームにとっても、このオフにこれらのテストに合格することは画期的な出来事だと思う。しかし我々にとっては、これらのコンポーネントを設計するベースとなる経験をチームとして何年も積んでいないわけで、難しさはなおさらだった」


 キャデラックがいずれかのテストに不合格となった場合、大幅な再設計を余儀なくされマシン全体のプログラムに負担が掛かるだけでなく、冷却構造や重量といった特定の領域にも悪影響が出る可能性があったが、この合格によりキャデラックは1月のシェイクダウン、そして月末にスペインで行われる非公開の合同テストに向けマシンの準備を進めることができる。


 とはいえ、キャデラックF1マシンの最初のバージョンは、バルセロナの非公式テストに登場する2026年参戦全マシンの期待基準から見ても、未完成のままとなる可能性が高い。


 なぜなら、この“超複雑な”マシンはオーストラリアでのシーズン開幕までに必要なものをすべて揃えるために、約8万5000点もの部品を設計、製造、あるいは下請けに出す必要があり「もしそのうちのひとつでも納期が遅れると、テストやレースの実施能力に影響が出る可能性がある」と指摘される。

大規模な技術規定の改変を前に重要な準備期間となるこのオフだが、全チームともに年明け早々の1月には早くもサーキットデビューが控える
この12月初旬にも、キャデラックF1は「車両後部全体とモノコック自体」について、FIA国際自動車連盟の必須ホモロゲーション試験に合格した

 ロードンによれば、キャデラックは「予定どおり」に進んでいるというが、チームとしては「何よりも納期を優先」している。1月にサーキットに戻り、チームとして現場??で経験を積み始める必要があるものの、これまでのテストはフェラーリから2023年型マシンを借りてイモラで2日間走行したのみだからだ。


「つねにこうしたトレードオフに直面している」とロードン。「我々が行ったのは、何よりも納期を優先するという賢明なやり方だったと思う。なぜなら工場や製造施設、その他さまざまな施設をまだ建設中で、完全に稼働するまでには何年も掛かるからね。他のチームの中には社内の生産プロセスを極限まで……どこまで押し上げられるかを知っているところもある。しかし新チームとして参戦する我々のような組織にとっては、それは賢明なアプローチではない」


「ある程度の余裕を持たせる必要がある。F1のあらゆることと同様に、何か決定を下すとすぐに妥協が必要になり、それにはコストが掛かる。しかし同時に、これらの分野でも追いつくためのプログラムも用意している。2026年シーズンの良い点は、テストの機会が非常に豊富にあることだ。こうした機会があれば、その段階でも新しいパーツを持ち込むチャンスが得られるからね」


 この発言は、キャデラックが2月に実施予定の2回のバーレーンテストに複数のアップグレードを持ち込み、チームの生産能力が追いつく限り、マシンが年間を通して急速に進化していくことを示唆している。しかしパフォーマンスは二の次となり、まずは信頼性の高さを確保することが何よりも優先されるだろう。


「すべての焦点は2026年シーズンに当てられているので、テストの機会を得られることは非常に貴重だ。結局のところ、これ(1月のバルセロナ)は必須のテストではない。だから、チームが有益ではないと判断した場合、テストには参加しない場合もあるだろう」と予測するロードン。


「我々が直面する課題が他とは違うことは分かっている。実際にテストに行けるという事実自体が素晴らしいことだからね。今のところ(他チームの旧型車両で)テストをするのは非常に困難で、信じられないほど大変だった。他のチームなら以前のマシンを持っているので難しくはない。しかし我々はそういう状況ではないんだ」


 つまり、他陣営のようにサーキットで観測されるデータを利用できず、相関性ある風洞データを有効活用する術がないことを、肝に銘じなければならないと続ける。


「このようなプロジェクトでは、毎日が勉強の日々で常に何かを学んでいる。そして、できるだけ早くマシンをサーキットに投入できればできるほど……チームとして有意義になる。ここにいるチームは2025年型のマシンを走らせており、2026年型との相関関係を把握している」


「だから新型を同じ風洞に入れれば、それが正確かどうか、あるいはどのようなシナリオで相関関係の問題が発生するかなど、しっかりとした見当をつけることができるんだ。しかし我々にはそのようなものは一切ない。風洞やCFDで計測したデータで、サーキットで実際に走行したデータはまだないからね。だからこそ、フィードバックを早く得られるほど良いことづくめなんだ」

バルテリ・ボッタスもメルセデスとの契約が終了、晴れてチームの正式なメンバーとして仕事を始めている
「我々が行ったのは、何よりも納期を優先するという賢明なやり方だったと思う」とロードン


(autosport web)


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